卓(花台)については、その種類が豊富でとてもバラエティーに富むものであり、道具類の中で評価・鑑定するのに一番難しいものでもあります。それゆえに、従来から 【水石飾りにはスッキリとした卓が似合う】 くらいしか解説・評価されていないだけで、その本質には誰も触れる事ができませんでした。水石飾り(盆栽も同じですが)における卓の役割とは環境(場所)や、品格を表現する重要な道具であり、また、水石を飾った時に一番目立つ道具でもありますので、本来ならば一番研究されていなければならない道具なのですが、私の知る限り、現在まで低次元の幼稚な解説しかなされていないのが現状だと思っています。これは、卓の評価だけに留まらず、卓の用い方についても、まったく同じことで、頓珍漢な使われかたもかなり見られ、せっかくの良石や立派な盆栽を活かす事ができていないように思われます。理由は簡単で、指導者がほとんど理解していないだけに他ならないからです。ゆえに、論理的な説明がなされずに、冒頭の 【水石飾りにはスッキリとした卓が似合う】 というあまりにも抽象的な表現でしか卓を捉える事しかできずに、今日まできているのではないのでしょうか
 そのため、この項では、卓に関するさまざまな研究を行ない、できるだけ論理的に美(芸術性)の本質を探り、飾りに役立たせたいと考えています

●卓の種類

 卓は大きく分けると、高卓・中卓・平卓の3つに分けられますが、水石に用いるのは中卓と平卓で、高卓を用いる事はありません。理由は単純明快で、高卓に乗せる石がないからです。実際の卓の使い方に関する研究については別項で詳しく説明する予定ですので、詳細は省きますが、中卓には山型・滝石・岩型、平卓には島型・溜まり・土破という感じで使い分けます
 また、中卓と平卓の区分けについてですが、基本的には、正座した時に膝が入る高さのものを中卓と呼び、それより低いものを平卓と呼びます。ただし、これは、あくまでも「机」に近い大きさの卓の基準でして、最終的には、間口の幅(広さ)と高さとのバランスで判断する事になります。まあ、大切な事は、その呼称ではなく使用方法ですから、それほど呼び名に固執する必要はないと思います

●卓の材質と仕上げ

 卓に用いられている材質は、紫檀製をメインにして、桑・ケヤキ・カリン・スギ・サクラ・キリ・アカマツ・紅紫檀・黒檀などがあります。鉄刀木や縞黒檀のものもよく見かけることができますが、木目が少々うるさく感じられますので、時代(味)が付き、しっとりと落ち着いた色合いになれば水石に使えますが、新しいものではちょっと煩いかもしれません。時には、数種類の材料を組み合わせた寄木細工のものがあったり、天板だけを葡萄杢などの違った材質で組み合わせた寄木ものも比較的目にします。また、班竹・紅班竹・烏竹などの竹を装飾や象眼で用いたり、総竹製のものまでもありますが、このような卓は、軽やかな物が多いので、涼しさを演出したい夏飾り用に重宝するものでもあります
 卓の仕上げについては、透き漆塗りで仕上げてあるものが一般的ですが、時には、黒漆や朱漆、籃胎(ランタイ)のように竹で編んだ素材に漆仕上げのものまでもあり、比較的大人し目(落ち着いている)のものであれば、水石に用いることができますが、堆朱や螺鈿(らでん)、蒔絵仕上げのように、紋様がうるさく目に付くものについては、それほど水石向きではありません

●卓の装飾

 装飾については、さまざまな装飾が見られます。装飾のメインは彫刻になり、幕や鰭の部分、足、窓(横部分)、時には天板部分に、伝統的な意匠の彫刻が施されていたり、天板に筆返しが施されているものもあります。彫刻の他には、銀象眼・黄楊象眼・竹象眼・螺鈿・銀覆輪などの象眼による装飾、蒔絵による漆芸装飾、足の多彩な意匠などが見られ、なかには、天板が銀覆輪されたものもあります。特に竹製のものは木製品よりも細工が容易なために、凝った飾りになっているものも見られます
 最終的に、卓の良し悪しを決める一番重要な要素ですので、良い装飾とはどのようなものなのか?・・・ということを、冷静に判断したいものです。知らないうちは、木製品のものでも、豪華な飾りがあるものほど、良いものと思われがちですが、水石用の卓として使用する場合については、飾りが多すぎると、装飾ばかりが目立ちすぎて水石に向いていない卓もたくさんありますで、この点には注意が必要です。装飾については、華美ではなく、水盤と水石を据えた時に、卓だけがえばることなく、自然と調和しながら水石を引き立てるものが良い卓といえるでしょう
 また、銀象眼や青貝象眼の卓もよく見かけますが、上品でうるさくない程度の象眼ものだったら、水石に用いることができますが、青貝象眼などのように少しケバケバしく見えるものについては、その程度によりますが、それほど水石向きではありません

●卓の使い分け

 通常、水石については水盤に据え鑑賞することになりますが、大きな石などは、それに応じた水盤や卓の道具立てが必要になりますが、展示会などにおいては展示スペースの関係で、大型の卓や水盤を据えるスペースが取れない場合があります。また、自宅の床の間の大きさによっても同様なことが生じます。このような場合は、水盤飾りではなく、台座によって台座石飾りをすることになり、凝ってくると水盤飾りと台座石飾りと微妙な卓の使い分けも必要になってきます
 水盤石飾りに使える卓については、そのまま台座石飾りにも使うことはできますが、反対に、台座石飾りに似合う卓については、それをそのまま水石飾りに用いても、あまり似合うものではありませんので、このあたりにも注意を払う必要があります

 では、どのような卓が水盤石飾りに向くのかということになるのですが、それを書く前に、卓に載せる水石と盆栽の違いについて考えてみると、一番の違いは 【石と樹の強さの違い】 です。どんなにごつく迫力を持った石でも、ちょっとした雑木にすら負けてしまいます。石そのものだけを見ていると、力強い石からは、ある種の迫力すら感じるのですが、現実は細身の雑木どころか、ちょっとした草物にすら負けてしまうほど、石は弱いものなのです。水盤飾りは、その弱い石を水盤に据えてから、卓に載せますので、卓と石の関係は、おのずとそのボリューム差がでてきますので、卓が強くなってしまうと、石の弱さが余計に目立ってしまう事になり、バランスを崩すことになってしまいます。ですから、【水盤石飾りにはスッキリとした卓が似合う】ということは、このことに起因しているからです。具体的にどのような卓がスッキリとしているかということについてですが、それは、ズバリ 『水石を据えた水盤を置いた時に、石の下に余計な飾りが無い』 事です。正面中央に幕飾り等があるような卓については、この幕飾りが石の邪魔をしてしまうとともに、どうしても卓ばかりが強くなってしまい、バランスを失ってしまいます(石が卓に負ける)。しかし、幕部分に飾りがないようなものだと、石との強弱のバランスも取れるし、なによりも、石を引き立たせる事ができるからです。甲玉透しの机卓が水石飾りには無難で、一番使いやすいのも、この条件を備えているからなのです
 水石飾りを行なう上で一番重要なのは、なによりもバランスです。バランスが取れるようにするには、どのような卓を使えば良いのかと言う事を考えれば、自ずと水石飾りに向く卓がみえてきます
 では、台座石飾りに向く卓とは、どのようなものでしょうか?・・・・水盤石飾りでは、石を据えた水盤ごと卓に置きますが、台座石飾りは台座に据えたまま石を置きますので、間口が同じ卓であれば、卓の上に載せる石の大きさは、自ずと違ってきて、台座石の方が大きな石を載せる事になります。そうなると、石と卓の強弱の関係は、水盤飾りを行なう場合よりも強い石が卓に載るわけですから、卓もその石に見合った強さの卓が要求される事は言うまでもありません。ですから、一口で言ってしまうと 【台座石を受け止める事のできる少々ごつく、踏ん張りの効いた卓】 ということになります。具体的に言うと 【箱卓】 と呼ばれているような、正面から見ると箱形になっている卓がこれにあてはまります。だるま卓のような平卓は台座石に一番似合う卓と言えるでしょう。もちろん、水盤飾りに向く卓でも、少々力強い卓ならば、台座石飾りをすることもできます

●卓の仕上げ

 ここで言う「仕上げ」とは、塗装等による仕上げ方ではなく、辺や角(隅)の処理の仕方についてです。辺や角(隅)の処理(仕上げ)方法については、基本的に面取り処理がなされているのですが、パッと見た目では、直角に近い印象を受けるほどのものもあります。この面取り処理が不十分な卓は、どうしても『鋭角さ』を感じさせたり、『硬さ』をも感じさせてしまいます。前段でも書きましたが、水石は盆栽や草物よりも基本的には弱いもので、弱い水石を載せる物ですから、やはり硬さを感じさせるような卓では、バランスを取るのに難しく、三位一体(石・水盤・卓)の調和を図る事にも困難さを生じてしまいます。ですから、この辺や角(隅)の処理についても、適度な面取りがなされている事も重要な要素の一つと言えるでしょう。この面取り処理については、卓の大きさが小さなものほど目立たず、大きなものほど目立ちますので、このあたりも注意を要することです


  実際の卓を見ての実例紹介は  こちら  からどうぞ







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