水盤・卓の次に良く使う道具は地板です。地板は、添え草をはじめとする添配類を飾るだけでなく、水盤に据えた石や台座石をも飾る道具としても使いますので、大きさも小さなものから大きなものまでありますし、材質や形もバラエティーに富んだものです。ただ、板であればなんでも地板となるわけではなく、最低限地板として使うことができる為には、いくつかの条件も必要になってきます。この項では、実用できる地板とは、どのようなものかについてを中心に書いてみたいと思っています


●地板の種類、材質と仕上げ

 地板に使われる材は、紫檀・花梨・黒檀・鉄刀木・紅紫檀・ローズなどの硬木や、花梨・樺・欅などの瘤材(玉杢)、桑・杉・檜・桐などの柔木で作られているものが多く、竹などの素材を編み込んだものもあります。水石盆栽界で多く使われているのは、紫檀・花梨・花梨瘤材(玉杢)・斑竹製のものが主として使われています
 仕上げ方法もさまざまで、木地そのままのものから、オイルを薄く染みこませたもの、オイルステインなどの塗料で仕上げたもの、拭き漆仕上げのもの、真塗りや朱漆で仕上げたものなどさまざまです
 どのような素材で作られていても、どのような仕上げがなされていても、基本的には使うことができますが、使用方法が限定されてしまうものもでてきますので、注意することが必要でしょう

 たまに、材をそのまま輪切りにされただけのものも見かけますが、厚いものならともかく、薄い物はとても使いようがありませんので、ここにも注意することが必要でしょう。やはり材を細工した物については、板目で使いたいもので、輪切りにしたものについては、厚いものでなければ使いようがありません
 また、瘤材で作られたものには、時として穴の空いているものもあったりします。穴が空いている箇所が、地板の中央部などの場合は、上に物を乗せれば隠れてしまうので問題はありませんが、周辺部に穴があり、上に物を乗せても、その穴が見えてしまうようなものについては、やはり少々うるさく感じてしまいますので、このような物は注意すべきでしょう

●地板の形・1

 地板の形には、長方・正方・丸・楕円・波形・六角八角などの多角形、変わったものでは輪花・筏形等さまざまな形があります。波形以外の形については、決まった形ですので特別問題はなく、注意しなければならないのは、波形です。波形といっても板を波形に加工したものだけでなく、花梨の瘤材などを薄く切り作ったものも含めています。この形のものについては、販売しているものの90%くらいは使いもにならない形をしていますので、特に注意することが必要です
 次に、どのようなことに注意しなければならないのか、ということになりますが、一番重要なことは、『形がうるさくない』ということにつきます。このことについては、全体の形のうるささもありますが、波形の出入りについても同様で、形や出入りがうるさくなってしまうと、地板ばかりが目立ってしまうことになり、上に乗せる草物や添配を引き立たせるとか調和することになどなり得ません。また、添えに使う場合が多いので、主石に使う卓との調和を図る意味でも、あまりにゴチャゴチャとした形では、全体のバランスをも崩すことになってしまいます
 ですから、全体の形も落ち着いて品の良い形でなければならず、出入りについても上品さが必要になってきます。こうして、文章にすると簡単なのですが、あまりに抽象的過ぎる表現なので、理解されることは難しいと思いますので、別項で実例を示しながら、具体的に解説をしたいと思います

●地板の形・2

 上記では、地板の形状について書きましたが、ここでは、形における他の要素について書いてみます。一番最初に触れなければならないのは、形のバランスとして重要なのは縦横比でしょう。長方鉢に添え草を作る人もいないと思いますので、ここでは丸鉢の添え草を乗せることを前提として考えたいと思います。縦横比の同じ丸鉢だからといって、地板の縦横比率まで同じにすることはありません。同じにしてもかまわないのですが、鉢と地板の比率が同じですと、動きを感じさせることができませんので、できれば縦横比は微妙に変え、飾りに流れを作りたいところです。かといって、あまりに極端に比率を変えてしまいますと、調和やバランスという点ではマイナスに働いてしまいますので、間口対奥行きの比率が10:7〜10:9程度のものが、流れと調和にバランスが優れていると思います。それ以上の比率になってしまいますと、やはり調和という点でイマイチになってしまいます。このことは、添えに使う場合のバランスで、主役を乗せる場合は、この限りではなく、どのような比率のものでも、大概使うことができます

 形という範疇から少し外れるかもしれませんが、厚みも重要な要素の一つです。一般的には薄手の地板が高級で良いように思われていますが、実際には、薄い地板では似合わない添え草や添配もあったり、また、展示会や飾りを行う場合でも、同じような薄い地板ばかりでは、変化がなく、まったくつまらないもになってしまいますので、厚めの地板もある程度は用意しておきたいものです。とはいっても、厚い地板というのも数が少なく、なかなか簡単に見つかるものではありませんけど・・・

●縁の仕上げ

 地板を考える上で、形の次に重要なのは、縁の仕上げといえるでしょう。縁の仕上げについては、一般的に多いのは、両面取り仕上げか、片降りの仕上げでしょう。他には、蛤・片蛤・矢筈・縦降りなどの仕上げもあり、面取り処理が施されているのが一般的で、未処理のものはほとんど使いものになりません。また、花梨の瘤材等については、瘤の形状を活かした仕上げになっているのがほとんどです
 どの仕上げ処理でも基本的にはかまわないのですが、なかには処理方法が技術的に未熟なものもあり、このようなものには注意をしなければなりません。特に注意を要すものとしては、片降り仕上げのものと、瘤材の周辺部の仕上げです。この2点については特に注意し、実用できる物を見る目を養う必要があります
 片降り仕上げについて気をつけなければならないのは、その降り方で、天破から縁に降りる時に急角度で降りているものは、上に置く物ばかりが目立つようになってしまい、地板との一体感がどうしても薄れがちになってしまいます。ですから、なだらかな角度でゆったりと降りている方が、地板との一体感(調和)が図られ、品の良い物になります。もちろん、使い方によっては、上に乗せる物を目立たせたい場合もありますので、そのような場合には、他の縁仕上げの物を選ぶか、片降りでもかなり急角度で降りているものにします。中途半端な片降りものは、まず乗せる物が見つかりませんので注意した方が良いと思います
 瘤材の縁仕上げについてですが、瘤材の縁の仕上げについては、瘤材を輪切りにした時の状態にもよりますが、凹凸をそのまま活かした物から、細工等を施して仕上げたものまであり、一概にどうこうと決めつけるのは難しいのですが、基本的な注意事項を述べますと、凹凸を残しながら仕上げた物については、鋭利な部分が残っていないか注意します。鋭利な部分が残っていると、どうしてもうるさくなってしまい、使い物になりませんので、尖った部分も丸く仕上げられている事が必要です。また、周囲の凹凸部分が細工されている物については、キチンと面がとられているのかに注意が必要でしょう

●地板の使用方法

 地板については、添えの地板として使われるのがほとんどで、大きな物は水石・盆栽・主役草物などが乗せられています。主役に用いる場合については、特に注意する点はありませんが、添えに使う場合には、いつくか注意する点があり、特に形には注意しなければなりません
 一般的な使い方として、主役に水盤石を使い、添えに添え草を使用する場合が良くあります。添え草については、丸鉢が使われることが多いので、道具の重複を避ける為に、地板も丸以外の物を使わなければなりません。長方や正方も卓と重複しますので、おのずと波形か多角形のものを使用することになり、柔らかさを考えると、ほとんどの場合、波形が使われるといっても過言ではありません。ですから、この波形の地板は一番使用頻度が高いことになり、選択するのにも重要になってきます
 また、主役の水石飾りについては、ほとんどの場合、紫檀や花梨の卓を使っていますので、脇役の地板との主従関係について考えてみると、主役よりも材質を落とすことも考えられ、主役の卓が唐木(硬木)の場合、脇役の地板には柔木が多く用いられます。もちろん、主役・脇役とも同格の同じ材質を使っても間違いではありませんが、できれば、主従関係をはっきりとさせておいた方が良いと思います。そうしますと、おのずと波形地板の材質は、唐木(硬木)よりも柔木でできている物の方が使用頻度が高いことになり、柔木の波形地板が一番使う地板になります
 ですから、良い波形の形を理解することの重要性は高く、実際に飾りを行う場合でも、同手の地板をサイズ毎に揃えておく必要もあります。石・水盤・卓・軸・添え草ともバランス良くマッチした飾りでも、地板がその飾りに合っていない物を使っただけで、全体の調和を崩す場合が、時としてありますので、たかが地板とたかをくくっておろそかにせず、細かい配慮を見せたいものです


 実際の地板を見ての実例紹介は    こちら    からどうぞ




戻 る


TOP




SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送