●地板に関する私感 地板については、所詮脇役だからといって、あまり注意を払わない人が多いような気がします。もしくは、地板本来の使い方をしらないか・・・でしょうが、あまりにぞんざいに扱われてきたように思えます。かなり飾りに詳しいと思えそうな人でも、良くない形のものを平気で使っていたり、単純に大きさのバランスが揃えてあるくらいでしょう。かなりハイレベルと言われている展示会等を見ても、ほとんど同じで、草物に対して大きさだけ合わせてある紫檀か瘤材の地板を使っているだけの感じしか受けません 少しでも高度な飾りを目指すのなら、やはり地板にも充分すぎるほど注意を払いたい物です。ただし、注意を払って少しでも高度な飾りをしたからといって、それに気が付いてくれる人は、ほとんどいないのが今の現状でしょうが、高度な飾りを目指すのなら、たかが地板となれど、妥協することなく使うことが必要でしょう。いつかはわかってくれる人がでてくるかもしれません(笑) ●変わり地板について 添えとして主に使うだろうと思われる地板は、やはり柔木のものが主力になるだろうと思うのですが、もちろん、唐木の物についても使用用途はたくさんありますので、揃えておくのにも、バランス良く揃えておく必要はあります 地板というと、唐木と瘤材の地板が真っ先に頭に浮かびますが、そればかりでなく、他にも変わった素材でできた物や、変わった形の物もいくつかあります。これらの変わり地板についても、使い方によっては、充分働かせる事ができますので、創意工夫しながら使い道を考え楽しむことも飾りにおける楽しみの一つだと考えています 変わり地板としては、竹製の物・竹を編んだ物・木材と竹の組み合わせた物・蔓類で作られた物などがあります。竹製の物では、斑竹をスノコ状にアケビ蔓で編んだ物が多く見かけられ、時に烏竹・紅斑竹・寒竹・スズ竹などのものもあり、このようなスノコ状のものについては、小さいものは少なく、ほとんどがある程度大きさのある(30cm以上)が多いので、主な使い方は、水盤石かざりになってくると思います。唐木や柔木で形を作り、その縁部分に竹が象眼されているものもあり、このタイプの物についても、比較的大型の物が多く、やはり、大型の物は水盤石飾りで、小型の物は添えに使うと良いでしょう。この手の物は上作の物が多く、品の良い飾りをしたい時などには特に有効です。竹を割り、薄く削いだものを編み込んだ地板もあり、この手の物は数が少なく、時には驚くほどの上作の物すらありますので、出会ったら、ぜひ入手したい物です。蔓類で編んだものについては、元々地板として作られた物はほとんどなく、そのほとんどが、茶托やいわゆるランチョンマットからの転用(流用)されたものです いずれにせよ、竹類や蔓類で作られた物は、清涼感を演出する夏使いです。使用時期は限られてしまいますが、夏には重宝する物ですので、主役用・脇役用といくつか揃えたいところです また、平根卓と呼ばれている根卓についても、定まった足がないことから、基本的には地板の一種と考えて良さそうです。これについては、素晴らしい出来の名品から、中国製の普及品まで意外と数も多いのですが、そのボリュームと厚さから考えると、添えを置く物ではなく、主役専門に地板と考えて差し支えないでしょう この根卓については、あまり好きな地板ではなく、持ち合わせもありませんでしたので、写真入りで紹介する事ができませんでしたが、ご容赦下さい ●地板の補修 今まで書いたこれらのことに共感できる方は、本当に使える地板の数の少なさに驚かれたことと思います。私もまったく同じでして、水石盆栽業界や指導者の底の浅さと、地板作りのメーカーや作家さんにあきれていました。波形紋様の地板にいたっては、そのまま使えそうな物は、ほとんど無いのが現状ですから、ただ探しているだけでは、揃えるのに途方もない時間がかかってしまいますので、地板に関しては、おのずと補修して使わざるを得ません。ですから、そこそこ形の良い物を入手したら、形状上邪魔をしている部分(不要部分)を削り取ったり、縁処理の手直しをしながら、使えるもの変えることが必要になってきます 適当な木工用具と、サンドペーパー・オイル・オイルステイン・漆などがあれば、誰でも簡単に補修することができますので、やる気のある方は、チャレンジしてみてください。地板が一格上がることは間違いありません ●積極的な地板の使用 地板は、ほとんどの場合、主役を乗せる役割として使われることは少なく、主役を乗せる場合でも、せいぜい大きめの斑竹地板が使われるくらいで、盆栽にしても、文人木を飾る時と、大型の寄せ植えを乗せる時くらいしか見られず、大部分は添えの地板としての利用しているに過ぎません。もちろん、足が付いている卓の方が、地板よりも一格上ですから、それはそれで結構なのですが、だからといって、主役に卓ばかり使っていても、まったく面白味に欠けてしまいますし、バリエーションある飾りを楽しむ事もできなくなってしまいます。地板は、平卓と同じ働きをしますので、いつも平卓にばかり飾るのではなく、時には地板に飾って鑑賞する事も、道具使いのを楽しむ飾りの一つの方法です 特に展示会などの場合は、ほとんどの人が卓を使って出品する傾向にありますので、卓ばかりですと、席全体のバランスもあまり良くなく、中卓・平卓・地板とバランス良く飾られている方が、変化があって調和した展示になります また、自宅で飾りを楽しむのなら、平卓と地板と使い分け飾りのバリエーションを楽しむのにも最適です。水石の場合は、島型・溜まり・茅舎・舟形などは、地板で飾れますし、主役にする添配についても、ほとんどが地板で飾れますから、これらのために、さまざまな地板を用意しておきたいものです 水石だけでなく盆栽をもやっている人も多いと思いますが、盆栽についても、地板を使うのは文人だけでなく、寄せ植え・斜幹・模様木などは、平卓よりも地板の方が映える場合も多々あります。また、主役に草物を使う場合も同じで、多くの場合、平卓よりも地板の方が似合いますので、水石だけでなく、さまざまな飾りを楽しみたい人は、より多くの地板を持つことをお勧めします ●竹の呼称について さまざまな物には、一般的に通じる正式な呼び名がありますが、時には、その世界だけにしか通じない呼び名というのも多々あります。盆栽の神(ジン)や舎利(シャリ)などというのは、世間一般的に通じる正式な呼び名ではなく、あくまでも栽界の専門用語ですが、鉢や水盤の釉薬などについては、栽界独自の呼称があるように思えます。『天覧釉』などという事は、その際たるもので、均釉を掛けた焼いた物で、極めて濃く発色し、瑠璃に近い物を天覧釉などと称したりしています。もちろん、陶芸界でもそんな釉薬は存在せず、一般的(世間)には通じる言葉ではありません。瑠璃釉にしても、実際の釉薬は呉須であったりコバルトであったり、藍色に近く発色する物を総称して瑠璃釉と呼んでいます。蕎麦釉などといものは、その本歌は非常に少なく、正式には、褐色味がかかった釉薬に蕎麦粒状の黄色い結晶ができるのが、正式な蕎麦釉なのですが、色がくすんだ黄色や黄土色に発色しているものを『蕎麦釉』と称しています。このように、盆栽水石会だけで通じる用語は、陶芸としての専門用語を用いるよりは風情もあるし、別に間違っているわけでもありませんので、とても良い事だと思っているのですが、竹の呼称については、あまりに間違って呼称されるものを散見させられるので、キチンと整理しておいた方が良いかと思っています その代表的なものが、『寒竹』と『烏竹』でしょうか。寒竹とは紫黒色をした竹で、昔から数の少ない高級品でした。道具として残っているのも、恐らく煎茶の席で使われていた物が、ほとんどではないでしょうか。似たものに『黒竹』がありますが、これは和風家屋の庭などに植えられている黒い竹でして、寒竹とは、まったくの別物です。黒竹で作られた物はゴマンとありますが、寒竹とはまったく違いますので、一見するとすぐに見分けはつきます また、『烏竹』と呼ばれている竹もありますが、実は烏竹という竹は存在せず、寒竹と黒竹を総称して烏竹と言っているに過ぎません。ですから、寒竹や黒竹の事を烏竹と呼ぶのは合っているのですが、寒竹というのを見た事がある業者さんが少ないらしく、いろんな竹が寒竹に化けてしまっている事例が目立ちますので、ついついこのような事を書いてしまいました。班竹で拭き漆がかけられた物などは、古い時代のものなどは濃色の飴色を呈したものがあり、これが寒竹に化けてしまったり、スズタケも寒竹に良く化けてしまいます これでは、この盆栽・水石界だけで通じる専門用語とは、とても言えませんので、正式な呼称で呼んだ方が対外的にも良いのではないかと思っているところです |
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