水 盤 の 研 究


 ここでは、実際の水盤を用いて、足の良し悪し等について説明してみます。ただし、あまりに良くないものは、それほど持っていませんので、良くない例についての説明は上手にできないと思いますが、ある程度のイメージは持って頂けるかと思います


 最初は、足を付ける位置に関しての考察です。楕円水盤では足の位置と全体のバランスが写真では見難い為、長方水盤で、足の付け位置やバランスを見てみたいと思います
○間口32cm
○比率1:7.1

最初の写真は、一弘の小品用水盤です。足と間口の比は約7対1になっています。薄手の小品用水盤でしたら、これくらい小さな足だと洒落た石を飾るには良く似合いそうです
○間口40cm 足6cm
○比率1:6.7

2枚目も同じく一弘の中型水盤で、1枚目の物よりちょっと深めになっています。深めで中型・切り足にしては、ちょっと足が小さすぎるような感じもしますが、十分許容範囲内の小ささで、これも洒落た石には似合いそうな水盤です
○間口47cm 足9cm
○比率1:5.2

この水盤も一弘の中型水盤で、浅手になっています。全体の感じとしては、1枚目の物と同じ感じなのですが、足の幅が広めの比率で作られています。全体の大きさもそこそこあるので、これくらいの比率でちょうど良いくらいです
○間口35cm 足4cm
○比率1:8.8

これは信楽の浅手小品用水盤です。掲載した水盤の中では足の比率が一番小さなものになっています。このように小さめな水盤に小さめな角度を付けた足を付ける場合、この水盤では、ちょっと角度を付けすぎたようです。これくらい小さな足の場合でしたら、角度を付けずに直角にした方が、足の踏ん張り感がでて、バランスが良くなります
○間口45cm 足9.5
○比率1:4.7

これも信楽の中型水盤で、ちょっと深めになっています。切り足ではありますが、幅・高さともちょうど良いバランスになっていると思います
○間口33cm 足5.5cm
○比率1:6.1

これは九輪の浅手小品水盤です。胴が外反り・外縁になっていて、ちょっと強めのボディになっていますが、1対6程度の足に仕上げています。ちょっと足が弱めにも見えますが、まあまあ許容範囲内というところでしょう
○間口36cm 足5.5cm
○比率1:6.5

これは九輪の中型水盤です。入り足で足がそれほど目立つわけではありませんが、もう少し大きくしても良いかなと言う感じです
○間口42cm 足8.5cm
○比率1:4.9

これは九輪の中型水盤で、どうも若干膨らみがあり帯縁がついている、かなりゴツイ水盤ではありますが、ちょっと高めの切り足にして全体のバランスがとれています
○間口55cm 足8.5cm
○比率1:6.5

これは九輪の大型水盤です。大きめの水盤ではありますが、浅手になっていますので、これくらいの大きさでも十分バランスが取れているようです
○間口59cm 足10cm
○比率1:5.9

これは九輪の大型水盤です。胴も張りがあり外縁になっている強めの水盤ですので、やはり少し大きめの足が付けられ、バランスがとられています
○間口59cm 足15cm
○比率1:3.9

これは九輪の大型水盤です。九輪にしては珍しく大きめの足が付けられています。恐らく一陽の写しかなとも想像できるのですが、強めの外縁・隅入りの強いボディを支えるのには、これくらいのバランスでも十分なのですが、私的には、もう少し小さくしても良いかなという感じです
○間口45cm 足15.5cm
○比率1:2.9

現陶翠の中型水盤です。陶翠の特徴ある3分の1足です。見てのとおりこれくらい足が強いと、あまりにもボテってしまいます。私の嫌いなバランスの悪い水盤で、欲しくなかったのですが、訳ありで手元にあります(笑)
○間口47cm 足17.5cm
○比率1:3,8

これは緑寿庵陶翠の中型水盤です。型物ですがちょっと足幅が広く(もしくは高く)、バランス的には若干足が強い感じになっています
○間口39cm 足5.5cm
○比率1:7.1

これは緑寿庵陶翠の中型水盤です。中型水盤にしてはちょっと小さめな足なのですが、若干高さを持たせてバランス的には十分取れていると思います
○間口61cm 足14.5cm
○比率1:4.2

これは緑寿庵陶翠の大型水盤です。大きめのボディを支える為に少し広めの足が付けられています。私の好みとしては、もう少し小さめの方が好きなのですが、これくらいでも十分です
○間口25cm 足7.5cm
○比率1:3.3

これは志茄埜庵の小品水盤です。小品にしてはやや大きめの足がついていますが、その分高さが抑えてあり、バランスを取るようになっていますが、作陶初期の作品なので、バランス的には、後期の物よりも落ちるように思います
○間口45cm 足10.5cm
○比率1:4.3

これは志茄埜庵の中型水盤です。中期の作品だと思われ、ボディと足のバランスもかなり良くなってきたようで、ボディと切り足のバランスは良いと思います
○間口30cm 足8.5cm
○比率1:3.5

これは無落款ですが、春松が志茄埜庵の胎土と釉薬を使って焼成した小品水盤で、3分の1足に近いバランスの足が付けられています。胴が少し深めなので、これくらい大きな足でもバランス的には、それほど悪いとは思えないのですが、ボテッとした感じにはなってしまいます
○間口cm 足cm
○比率1:

これは丸善の小品用磁器水盤です、切り足に角度を付けた足が付けられています。磁器水盤ではありますが、形のバランスはなかなか良いですね
○間口38cm 足8.5cm
○比率1:4.5

これは春松の中型磁器水盤です。かなり浅手になっていますので、足の幅は良いのですが、もう少し足の高さを抑えたい感じです
○間口33cm 足5cm
○比率1:6.6

これは瀬戸産の中型磁器水盤です。かなり深めのボディに小さいながらも高さのある段足が付けられています。本来なら、このように高さのある胴には入り足にしたいところなのですが、これでもバランスは十分取れています
○間口27cm 足4cm
○比率1:6.75
※参考
これは緑寿庵陶翠の小品水盤です。外反りが強く深めのボディに雲足が付けられています。外反り・腰紐・雲足と形態的な取り合わせも良く、ちょっと足が弱めかなとも思うのですが、バランス的にはまあまあといったところでしょうか
○間口57cm 足11.5cm
○比率1:5

これは白交趾の大型水盤です。外縁・隅入りのボディを入り足で支えています。バランス的にはちょうど良いです
○間口62cm 足13.5cm
○比率1:4.6

荒紫泥の大型水盤です。大きめの外反り・外縁になっていて、かなり強めのボディなのですが、高さを抑えた広めの足を付け、瀟洒な感じを残しながらもバランスが取れています
○間口57cm 足12cm
○比率1:4.75

外縁の大型銅盤です。比較的シンプルな作りの銅盤なので、単純な切り足になっていますが、バランスも良くスッキリとした仕上がりとマッチした足になっています
○間口55cm 足12cm
○比率1:4.6

外縁・変わり胴の大型銅盤です。末広がりのボディを支えるのにちょうど良い大きさの足ですが、入り足にすることで、足の幅もそれほど目立たず、良いバランスだと思います
○間口60cm 足13.5cm
○比率1:4.4

外縁・地紋の大型銅盤です。大きめのボディを支えるのにふさわしい大きさの足で、幅・高さともバランス良く、足を目立たせることなく、地紋の胴が綺麗に見えるようになっていて、バランス的には非常に優れています
 以上、実物を示しながらボディと足のバランスについて例示してみました。すべて写真ですから、小さな水盤と大きな水盤による足の付け方の違いは、上手に説明しきれていませんが、なんとなくイメージはわかっていただけかと思います。このバランスについては、数少ない写真だけでの説明で理解することは、大きさの感覚が実物と写真では違いすぎるので、とても難しく、やはり実物を見ながらその感覚に触れていただきたいと思います。また、展示会等でたくさんの水盤を見る機会がありましたら、じっくりと観察してみてください。バランス感覚が磨かれてきますので、展示会では石だけを見るのではなく、水盤についても良く見るようにする事で、美意識(美的感覚)も上がってくることと思います


 次に、縁の厚みについて見てみたいと思います。縁の厚い水盤の持ち合わせも少なく、上手に説明する事ができまないのですが、とりあえず試してみます
最初に比較したのが、この2枚で、次のようになっています

大=現陶翠 間口50cm 縁の太さ1.3cm 
  比率 38:1
小=春松 間口30cm 縁の太さ0.9cm
  比率 33:1
小さな春松水盤の方が、単純に比率から考えてみると、縁が厚いのですが、やはり上記の写真と同じように見た目では、圧倒的に現陶翠の方が厚ぼったく見えてしまいます

これに石を据えるとどうなるのでしょうか?
次に比較したのが、この2枚で、次のようになっています

大=現陶翠 間口50cm 縁の太さ1.3cm 
  比率 38:1
小=九輪 間口33cm 縁の太さ1.2cm
  比率 27.5:1
こちらも、単純比較ですと九輪の方が、上記の組み合わせよりも縁が厚いのですが・・・・・

それでも、見た目でも現陶翠の方が厚ぼったく見えてしまいます
こちらが、現陶翠に石を据えた物ですが、写真で見る限りそれほど厚みを感じませんが、実物を目の当たりすると、やはり縁の厚みが気になってしまいます
こちらが、春松に石を据えた物です。こちらも特に違和感は感じることなく見えます
こちらが、九輪に石を据えた物です(この水盤に平石を据える事にちょっと無理はあるのですが、現陶翠と比べるためにあえてこの石を据えてみました)。こちらは、写真で見ても縁の厚さが、ちょっと感じられますが、実際に目で見てみると、それほど違和感は感じません
 この企画には、少し無理があったようで、写真で見る限りにおいては、縁の厚みと間口の大きさとの関係(バランス)を検証するには到りませんでした。縁の厚みと間口とのバランスについては、やはり実物を見る事で理解してもらうしかないようです(笑)



●水盤に関する私感

 水盤は水石を飾るための大切な道具で、色々な作家の方や窯元で作っています。また、水石の歴史上でも色々な評価がなされ、水盤に対する知見もだいぶ増えてきたり、世間では作家に対する評価もある程度決まってきているようです。その評価にイチャモンを付けるわけではありませんが、今の評価は、どうしても「作家」や「希少性」を中心にしか評価されているようにしか思えず、作品自体の良し悪しが問われない事に不思議に思っていました。水盤や銅盤といういわゆる道具類であっても、その作品自体は芸術品でありますので、やはり、水盤1枚1枚がそれぞれ評価されるべきだろうと思っていますので、このような項を書くに到りました
 上記の水盤のバランスに関する評価については、極力客観的に書いたつもりですが、ゴツイ水盤よりも洒落た水盤が好きな『私の好み』は加味されています。加味されているというか、そのことが私の評価基準であるかもしれません。納得いかない方もいるでしょうが、少なくとも、美に対する基準というものが、「作家」や「希少性」だけというよりは、はるかに良いとも思っています。総合芸術と言われている水石ですから、水石家は、それぞれの美意識を持たなければならないでしょう。そのために、少しでも参考になれば幸いだと思っています
 上記の数少ない例を見てもわかるように、同じ作家さんでも大きな水盤小さな水盤では、足の付け方のバランスがまったく違っていますし、自身の経験の練達度によって微妙に変えている事もわかると思います。たかが足ですが、されど足という感じで、足の付け方一つで水盤のバランスが決まってくる事はおわかりいただけたでしょうか。もちろん、水盤の良し悪しは、足だけで決まるほど簡単なものではないのですが、水盤全体のバランスを取る上では大きな要素であることがわかると思います

●飾りに使える水盤について

 養石用や自分で練習する場合は、流し込みの水盤でもまったく問題はないのですが、やはり展示会などで人に見てもらう場合は、少しでも良い水盤で鑑賞してもらいたいもので、流し込みの普及品ではなく、最低限、手作り水盤を用いたいものです

●日本の水盤作家について

 春松・緑寿庵陶翠・一陽・東福寺・香山といった評価が固まっている作家から、その下のクラスには、たくさんの作家や窯元があり、評価は前記の作家さんよりもかなり低くなっていますが、実際には、それらの作家さんの中にも、良質の水盤を作っている人もいます。高名だからすべての水盤が良い物とは限らず、著名でないからといってそのすべての水盤が悪いわけではなく、高い評価をつけても良い水盤を作っている人も現実にいます。あくまでも陶芸作品として評価していけば、良い水盤を入手することができますので、そのように努めたいものです

 私が個人的に評価している作家を少しだけ紹介してみると次のようになります
呑平 
2枚しか見た事がありませんが、スッキリとしながらも品の良さと渋さが加味された良い水盤でした
水野春松 
4枚ほどしか見た事がありませんが、手作りの良さと加齢の味が良かったです
緑寿庵陶翠 
大きなサイズのものになると、足がゴツクなる傾向はあるものの、総じて使い頃という感じを持っています。釉薬では瑠璃と均釉が良いように思います。また、楕円水盤は、他の作家のものよりも奥行きのある小判型に近いもので、非常に使い易く便利なのが特徴です
神谷一陽 
薄手で上品なのが特徴でしょうか。緑釉と油揚げ手のような蕎麦釉が魅力です。焼きが甘いのが難点か
水野東福寺 
小さな水盤が多いので、大きなもの(とは言っても30cm前後)はあまり見る機会に恵まれず、少数しか見ていない上での評価になりますが、釉薬のたっぷりと掛かっているものは、魅力があります
平安香山 
小品や中品では魅力あるものが多く、やはり均釉が良いのですが、大きな水盤が少ないのが難点で、大型水盤は磁器物が多く、味にかけてしまう傾向にあるように思います
加藤九輪 
当初高額で取引されていたのですが、流通経路が変わることにより、世間の評価も価格も下がったようです。元々茶道具を作っていた作家さんでもあり、形のバランス的にはかなり優れていて、私の好みなのですが、使用している陶土が半陶半磁なのと使っている釉薬の発色がイマイチかなという感じです。ただし、黄瀬戸・緑釉・青磁はお薦めです
相羽鴻陽 
やはり陶土が半陶半磁ということと、釉薬がイマイチという感じがしてます。最近はよく知りませんが、一時期不透明釉のものをたくさん見かけ、ちょっと心配になりました。ただし、作りはかなりしっかりしていますので、形のバランスと釉薬が合えば良い物ができそうです
志茄埜庵 
上記の写真では、初期のものと中期のものが載せてあり、釉薬はかなり良く、陶土も鉄分を多く含んだものを使っていますので、鉄分が溶けた釉薬の発色に魅力を感じます。初期の頃は形のバランスが良くありませんでしたが、だんだん良くなってきて、後期のものはかなり魅力的な作品を作り出していました
渡辺一弘
比較的若い作家さんであるのにもかかわらず、水盤の形・バランスともかなり優れていると思っています。これくらいセンスに富んだ作家さんなのに、世間の評価がそれほどではないのは、かなり不思議ですね。瑠璃・均釉・黄釉などがお薦めかな
禄味斉春松
作りはかなりしっかりしていて、形もそれほど悪くなく、ちょっと厚めな作りが鈍重な感じも受けますが、平均的には可もなく不可もなくという感じでしょうか。まれに洒落たものも見る事がありますので、このようなものはゲットしておきたいです。志茄埜庵の釉薬を使っているものも、比較的出来は良いです
秘色窯
時代だから仕方がないのですが、長方のほとんどは玉縁であまり魅力がなく、薄手の楕円が良いように思います
寿悦窯
磁器ですから、作りは問題なく、あとは形のバランスと釉薬でしょうか。浅手の楕円で蕎麦がお薦め
大正常滑
秘色と同じように、長方のほとんどは玉縁になっていて、ちょっと鈍重気味ですが、石によってはこの水盤が似合うものもありますので、サイズを変えて何枚かは持っていたいです。釉薬は窯元によってかなり違いますので、どれが良いかは一概に言えません
磁器水盤
丸善・丸寅・ヒダ彦から無落款のものまでかなりの数とサイズがありますが、型物ですから形のバランスはほとんど変わりません。磁器なので時代が付くのが非常に遅く、白磁の味が付いているものか、釉薬物がお薦めです。天覧釉や織部などは数も少なく、中には良い品もあります。まれに奥行きのある釉薬物もありますが、これは置く卓とのバランスもあり、注意が必要かもしれません
染め付け水盤
染め付け水盤については、別項で書いたように、まったく水石には使い物にならないと思いますので、鑑賞用に求めるのなら問題ないという感じでしょうか
錦窯・春日・角山・黎鳳等
錦窯については、雷紋のものを今までに2枚しか見た事がなく、春日・角山・黎鳳なども同じような感じで、評価不能です(笑)
小品水盤
小品水盤といっても、小鉢作家さんが作っている水盤の事ですが、床の間飾りと席飾りをメインの私には、まったく不用なものなので、あまり興味を持って見た事がなく、これも評価不能です(笑)

 次は、銅盤についてですが、ご存じのとおり銅盤については、流通している数自体も圧倒的に少なく、よく見かけるのは、高岡か京都の流し込みのものが圧倒的に多く、手作り物はあまり見かけることができません。そのようなこともあり、作者毎による評価は難しいのが現状だろうと思います。ですから、出会った一品一品を冷静に評価することができる目を養うことが大事だと思っています。このことは、卓を見るのもまったく同じです
 世間の評価では、峰雲が最上とされていることは、既に広く知られているところであり、その作品のほとんどはどれもハイレベルの良い物ではあります。しかし、峰雲作だからといってすべてが良いというわけでもありません。私が見た中でも、ボディの出来は素晴らしいのですが、足が強すぎて水石向けではない物、無飾り単縁のもので、スッキリとしているところは良いのですが、ボディの大きさに比べ縁が薄すぎの物等を何枚か見たことがあり、いくら峰雲であっても、このようにバランスの悪い物では水石飾りに用いるには、ちょっと無理がありそうです。無名の作家(それほど知られていない作家:恐らく明治頃の作家だと思われる)の作であろうと、良い物を見かける事もしばしばあります。そのような事も、作家の名に囚われる事なく一品一品を見極める目を持つ事の必要性を感じさせることでもあると考えています
 特に、現代作家では、見渡しても初代路石を筆頭に数える程度しか見あたらない事もその一因で、良品のほとんどは、明治維新で職を失った鍔作りの職人達が、明治期に作っていた物が現存し流通しているのが現状ではないでしょうか。そのため、数も少なく、作家(職人達)もあまり知られていず、銅盤の研究もほとんど進んでいないように思えます
 ここでは、銅盤の歴史等の研究が主目的でなく、あくまでも飾りに使うにはどのような物が良いかという事を主目的にしていますので、歴史云々よりも、やはりバランス良い銅盤とはどのようものかに注目したいところです
 ちなみに、私が見たことのある銅盤の中で最高の物は、路石の地紋水盤でした。故高橋貞助氏が所有していた物で、峰雲の最上手の物でも相手にならないくらい、素晴らしい物でした。それでも、価格は峰雲の4分の1くらいですから、いかに世間の評価とズレがあるかと思わざるを得ません。この銅盤については、知人の所有するものですので、機会があれば紹介したいと考えています
 いずれにせよ、銅盤については、良品が安価で入手しやすい分野かなと思っていますので、自身の目を肥やしてバランスの取れた良品を入手したいものです。私にも好きな作家があるのですが、競争相手が少しでも増えると困りますので、作家名は伏せさせていただきます。陶磁器の水盤についても、客観的に評価はしていますが、やはり私好みでコストパフォーマンスが高いと思われる作家さんもいるのですが、同様の理由で名は伏せさせてもらいます(笑)

●中国水盤について

 古渡り・中渡り・新渡・・・・・さまざまな時代の中国製水盤が、日本にもたらされてきました。その中には、青磁の浮き牡丹水盤のように芸術性の優れたものを筆頭として平成渡物まで、まさにピンからキリまであり、古渡りや中渡り物が、やはり珍重されていて、珍しい落款の物は、ただそれだけでもてはやされています。それはそれで、私には直接関係がないからまったくかまわないのですが、芸術的美意識と違うところで、水盤の評価が決まってしまうのも、不思議な感じがします
 特に中国の古い水盤では、玉縁でボテッとしたものが多く、このような水盤には、よほどボッテリとした石しか似合わず、このような水盤がもてはやされる事自体、水石界の美意識が問われても不思議ではない事のようにも思えます。珠珮や留珮が中国水盤の名器とされましたが、これとて、その数の少ない希少さだけでなく、中国水盤には珍しく切立のものが多く、洒落た品の良い水盤であったことで識者には評価されたのですが、今となっては遠い昔の話のようです。玉縁の珠珮や留珮などは、裏を見ない限り葛明祥等の白交趾と変わりないし、仮に珠珮や留珮の玉縁水盤に飾っても、葛明祥の玉縁水盤に飾ったものとで、飾りの評価はまったく同じなのです。特に中国水盤は落款(窯)の違いにより、金額も大きく左右されますので、求める時には、注意が必要でしょう
 私のお薦めの中国水盤は、やはり玉縁ではない水盤でしょうか。日本の水盤作家で、玉縁を作っている人などはほとんど皆無で、このことは、需要が無いからです。やはり、スッキリとした水盤の方が石には似合いますので、玉縁以外の水盤の方が使い道が広そうです。そうは言っても、玉縁の水盤でなければ飾れない強い石もありますので、適当な大きさの物も必要な場合もあります
 釉薬については、海鼠と白交趾がメインになり、あとは均釉と呂均釉といったところですが、安くなったとはいえ均釉と呂均釉については、まだまだ高価ですので、相場よりも安く購入できるのならば、考えても良いかもしれません
 磁器水盤については、古渡りの浮き牡丹青磁などは絶対に見る機会もありませんので、おいておくとして、白磁については、時に瀟洒な物もありますので、使い道は限定されますが、足つきならば考えても良いかもしれません。なかには、台付きの白磁水盤もありますが、芸術品としての鑑賞価値は高くても実用性はかなり低くなってしまいます。また、まれに珊瑚釉・黄交趾・黄南京・紫南京などという色物もありますが、これらは季節的な使い道も限定されてしまいますので、余裕がある方は手に入れても良いかもしれません
 短冊形の水盤も中国には多く、この水盤は使い方が難しいのですが、ピタッと据えると洒落た飾りができる道具の一つでもあります。使い方や卓との取り合わせを考えると上級者向けかもしれません

●最後に

 長々と項を費やして、いろいろと書いてしまいました。なかには水石界や盆栽界での評価とまったく違う事を書いてあるものもありますが、これらは、あくまでも私の美意識に則って書いたものであり、美的感覚が違う方とは、まったく違う評価になっていることと思います。私としては、あくまでも芸術性を持った水石飾りの道を志す事の意義と、「作家」や「希少性」のみが評価されている現実に対してのアンチテーゼという意味を含めて書いたつもりです
 今まで水石や盆栽の雑誌などでは、論理的な根拠のない美辞麗句を並べては、「作家」や「希少性」を誇示しては、とんでもない道具や飾りを褒め称えていたようにしか思えず、このままでは水石飾りという趣味が、とんでもない方向に行ってしまうという危機感もあり、書いてみました(かなり押えていますが・・・)
 ここでこのような事を書いても、何が変わるとも思ってもいませんが、たとえ少数でも勉強してみようかなと思う人が出てくる事を願い、その一助になれば幸いと思っています
 
 ここに書いた事は、私の飾り理論のまだ第一歩であり、水盤に関する事でも、釉薬や焼成のことにはまったく触れずに、思っている事の半分くらいを書いたかなという感じです。これから、道具の研究と飾りの研究を徐々に進めていきたいと考えていて、次回は、ちょっと難しい卓(花台)の研究でもと考えています





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