水石を鑑賞するのには、水盤に砂を敷き、卓等に据えて鑑賞する場合と、石に台座を付けて、卓等に据え鑑賞する場合があります。特に、水盤と台座での使い分けに決まりはありませんが、紋様石・姿石・茅舎石などは台座で鑑賞し、山水景状石のように、自然界の風景を彷彿とさせるものについては、水盤で飾る事が多いです

 山水景状石だからといって、絶対に水盤飾りをしなければならないわけではなく、大型の石などは台座石としたり、小型の石などは、台座を付けて盆栽等の添えとして飾って楽しむ場合もあります。なかには、山水景状や紋様石・姿石・茅舎などとは違うジャンルで、石のみを鑑賞するために台座を付ける場合もあります。また、関西では、純粋な山水景状石であり、大きさも適度でありながらも台座石として楽しむ方が結構いるように感じます。山水景状石だからといって水盤飾りを楽しむだけでなく、良い台座を付けてやると台座石としても十分鑑賞価値は高く、特に問題があるわけではなく、出品数が多い展示会などでは、場所がとられなかったり、列席飾りなどを行う場合には、水盤石と台座石を上手に配置することにより、画一的でではなく弾みのある飾りができ、重宝する場合もしばしばあります

 その他には、神居古潭石や那智真黒石の緻密で硬度が高く、水を弾いてしまうような石は、台座で鑑賞される場合が多いです(水盤で飾ってもなんら問題はありません)。小品水石を使って棚飾りをするような場合も、台座を付けて飾るのが一般的であり、家の中の棚などで飾って楽しむ場合や、保管のために台座を付ける場合などがあります

 このように、石と台座は切り離せないものであり、自分で楽しむ場合であっても、他人の石を鑑賞する場合であっても、台座の善し悪しを見極める目を養うことにより、審美眼は高くなり、センスも磨かれていくと思いますので、この項では、台座に関するさまざまな研究を行い、できるだけわかりやすく良い台座について解説し、調和のとれた飾りに役立つようになれば・・・と考えています


●石との調和

 台座で石を鑑賞する場合、一番大切なものは、なんといっても『石との調和』です。石がいくら素晴らしい石であっても、台座と調和がとれていないのでは、鑑賞価値を低下させてしまうだけでなく、ひどい時には、鑑賞に堪えられないような場合も出てきてしまいます。そのため、台座を付ける場合は、石と一体感があり流麗に調和されていることが一番大事であり、一番求められる要素でもあります
 また、水石を鑑賞するために水盤に据えたり台座を付けるのは、ただ単純に石を置いているわけではなく、ただの「石ころ」を「水石」として昇華させなければならないわけですから、石と調和させるだけでなく、水石を引き立たせることも台座の大きな役割となっています。この「水石を引き立たせる」ということは、言葉で表すのは簡単なのですが、いざ実践するとなるとなかなか難しく、理論や技術的なものではない「感性」の良し悪しがモノを言う世界でもあります

 水石と台座との一体感については、文章で表現する事は非常に難しいのですが、できるだけ簡潔に書いてみると、次のような感じになります

・石の成りに合わせ台座の形を決める事
・台座は末広がりにしない事(下膨れにしない事)
・台座の飛び出している縁部分に足を付けること
・足は台座からはみ出さない事


 この4点が大きなポイントとなり、なによりも難しくて大事な事は、一番最初の「石の成り(形)に合わせて台座を作る」ということになります。せり出しが効いているような洒落た石とか、変化の多い岩型石、屹立した滝石などにふんばった台座では、いかにもバランスが悪すぎます

 裾が広がっている山型だからといって、台座までも下膨れにしては、まったく似合いません。台座の足は外に出れば出るほど台座だけがえばってしまい、石を活かすどころか殺してしまい、一体感どころではなくなってしまいますので、この点も特に気をつけたい点でもあります


●足の位置について

 台座を作る場合、何をおいても守らなければならないのが、足を付ける位置です。「あるべき場所に足がついていない」・「足があってはならない場所に足がついている」などでは、まったく鑑賞価値が下がってしまいます。そのため、足を付ける場所にも細心の注意を払う必要があります
 かといって、足を付ける位置を決めることは、それほど難しいものではなく、次の2点さえ守っていれば、誰にも簡単にできることですので、確実にマスターしてください

1.見付け線の両側に足があること 

 台座に付けて石を鑑賞するわけですから、瞬間的にパッと見た時に安定感がなくてはなりません。特に石は硬質で重量感のあるものですから、安定感が必要であり、この安定感というのは、台座石を正面から見た場合に、見付けの線(つまり左右両端になります)に足がキチンとついている事から感じることができるのです。食器の深鉢や深皿のように、左右の両端が宙に浮いているのでは、真正面から鑑賞する水石の場合、どうしても不安定になってしまいます。ですから、台座の左右両端には必ず足を付けることが必要になるのです

2.縁の突端に足を付けるこ

 円形を除く三角形・四角形・五画形等の多角形には、必ず角(隅)が存在します。そして多角形においてはその角度を問わず角に一番力が働いていることになります。そのため、足を付ける多角形のもの(水盤・鉢類等)は、その角の力を受け止め調和させるために、角に足を付けるというのが大原則になります。足を付けることにより角の持つ力を相殺し調和させるということです

 このことは、台座にも当てはまることであり、台座を上面あるいは下面から見たときに、角になる場所というのは、一番力が働く場所であるので、その力を相殺するために、足を付ける位置は台座の角になるのです

 足を付ける位置は、至って簡単で、この2点さえ守っていれば、間違えることはありません。いかがでしょうか、簡単でしょう。ここは一度読んでいただくだけでご理解いただけるのではないかと思います

 上の写真は、台座の裏面を写真に撮ったものです。見てのとおり、台座の角(縁の突端部)に足がついているのがわかると思います

 また、正面から見たときの左右両端に足がついているし、想像以上に足が小さいのもおわかりになるかと思います(一番下のは、大きい石ですので大きめですが・・・)。ですから、「足は端に小さく」という感じで覚えておいても良いと思います


●足の大きさ・高さ

 最初の項目で少し触れましたが、「水石を引き立たせる」事が重要な感性であるというようなことを書きました。時に水石以上にえばっている台座を見かけることがありますが、それでは、水石を引き立たせることができません。水石を引き立たせるのには、いくつもの方法があるのですが、一つのポイントして挙げられるのが「足の大きさや高さ」であります。足というのは、台座の中でも非常に目立つ部分でもありますから、その大きさや高さには十分配慮する必要があります

 足の大きさが大きすぎたり、あるいは大きさはちょうど良いが高すぎるなどというのでは、バランスが悪く、引き立たせるどころか石とも調和することができません。そのため、足の大きさや高さには、十分配慮していくことが必要となってきます。基本的には大きすぎる足が多いので、小さく小さくと心がけると、台も洒落てきます


●石の景状と台座の形

 これも、最初の項目である「石との調和」とダブってしまう項目ではありますが、「水石を引き立たせる」ための調和方法について、具体的に触れてみたいと思います
 水石を水盤で飾る場合には、その石により、時に2〜3の正面が考えられ、違う方向から2〜3回飾って楽しむことができる場合があります。ところが、台座を作る場合は、通常、一カ所を正面に決めて台座を作りますので、最初に行う作業は、『正面の検討・決定』という作業になります。正面が1カ所しかないものなら問題はないのですが、1つの石で2〜3箇所も正面候補があるようなものが、どこを正面にきめようか迷うような場合もでてきます。台座で鑑賞する場合は、一カ所しか決めることができませんので、「最高の正面」を正確に吟味して、正面を決めることが大事です
 次には、台座全体の深さや形状を決めます。「この石ならこれくらいの深さまで台座を埋めよう」・「石の形が逆三角形気味だから、おおまかな台座の形も逆三角形にしよう」・「せり出しが効いている石だから、台座に余分な余白を作ろう」等々です。この段階で、台座の良し悪しがすべて決してしまうと考えても過言ではないでしょう。それくらい、石の形状に合わせて台座の形を調和させるということは難しいことになります
 石の形状・景状・ボリューム感・石の強さ・川擦れ程度等々の具合を勘案しながら、台座の形(形状や厚さ等)を決定するのです。特に、姿石・茅舎石・紋様石などは必ず台座で鑑賞しますので、石の風情に合ったものにすることが一番重要ですので、特に注意することが必要です


●台座の材質と仕上げ

 台座には、さまざまな材質の木が用いられ作られていますが、大きくは柔木(ホウノキ・カツラ・タモ・サクラ・モミジ等)と堅木(カリン・黒檀・鉄刀木・紫檀等)です。自作する場合は、最初は柔木で練習しておき、慣れてきたら堅木で作ることをお勧めします
 基本的には、紫檀が最高の材料になり、その落ち着いた色彩はどのような色合いの石にも合い、石の良さを損ねることがありません。次がカリンでしょうか。鉄刀木は目に落ち着きが無いし(黒檀・縞黒檀も部材によっては同様)、黒檀は黒石にはまったく合いません。ですから、最終的には紫檀かカリンで作られると良いと思います。また、細かい仕上げも柔木よりも綺麗に仕上がり、台座としての持ちも長く使えますので、良いと思います
 台座の仕上げについてですが、ペーパーを掛けた後に最終仕上げをしますが、柔木の場合は、塗料を塗る事になります。若干紫がかかった濃い茶色くらいがベストだと感じているのですが、なかなかそのような色合いの塗料はないので、赤の塗料を塗った後、黒の塗料を塗ると、それに近い色合いが出てきますので、柔木の場合は、自身で工夫しながら色合いを研究していくと良いのではないかと思います
 紫檀やカリンなどの場合は、オイル(荏油やオリーブオイル等)や漆での仕上げのみで、塗料は一切使いません。あとは磨く事と時間の経過が台を育ててくれるようになります


●台座の装飾について

 古谷石などには、手の込んだ彫刻が施された独特の台座がしつらえてあるのを良く見かけます。ここまでの項目を理解された人ならわかると思いますが、ゴチャゴチャした石ならばある程度の装飾が台に施されていても、合う場合もありますが、台座への装飾については、基本的には施さない方が良いと考えています。よほど強い石なら合う場合もありますが、台に装飾を施しても、合うどころか台座の方が強くなってしまうのがほとんどです。ですから、台座は無装飾にするのが原則と考えてください
 かといって無装飾のものが最高の台座というわけではなく、あくまでも原則というだけであって、良い石には台座の上縁や足縁に簡単な装飾を施すことにより石の格が上がったり、全体の品格が上がったりしますので、適度な装飾ならば歓迎されるものでもあります


●良い台座とは

 「この台座は紫檀でできているから良い台座だ」・「石だけ持って持ち上げても台座が外れないから良い台座だ」・「綺麗な装飾が施されていて良い台座だ」など、たまに耳にする事があります。ここまで、いくつか台座のポイントを書いてみましたが、ある程度理解され方なら、前記のような事が間違いである事がおわかりになった事と思います。あくまでも台座は『石と調和していて、石を引き立てている』ことが、良い台座の条件です
 ですから、台師さんに作ってもらった紫檀の台座であろうと、石を活かしていない台座なら、アマチュアがホウノキで作った石を活かした台座の方が良い場合も多々あります。石は千変万化で一つとして同じものがないのと同じで、台座も一つとして同じものはありません。また、いくら木を掘る技術が高くても、台座の良し悪しが正確に理解されていないと良い台座は作れませんし、見てもわかりません。木を掘る技術や仕上げの技術などは、経験でカバーできますが、台座のポイントを正確に理解していくのに大切なのは、正確な理論の習得と感性の向上だと思っています
 それほど難しい事ではありませんので、これを読んだ機会に、是非習得していただきたいと考えています



 ここからは、実物に基づき具体的に説明したいと思います
 この石は、久慈川の岩型石です。景色は乏しいのですが、総ジャグレの屏風岩形の岩型石になっています。そうはいっても実景にはこのような景はないので、実際は抽象的な岩型といったところでしょうか。この石に写真のような台座が付いています。団扇に近いような形で、その下部部分だけに台座がついています
 ごく普通の台座ではありますが、石のボリュームと強さを受け止めている台座で、力強い石をそのまま力強い台座でそのまま受けていて、これはこれで石との一体感もあり、調和しているのではないでしょうか
 この石は、佐治のせり出しの石です。写真のとおり石は逆台形状の形をしています。この台座は、石をすっぽりと包み込むような感じで作られていて、下部にいくに従ってすぼめられ小さな足が付けられています。石の強さに対して、石を受け止めるだけの強い台座ではなく、強い石を優しく包み込んでいるような台座になっています
 足も小さくて品があり、台座としてはまあまあのデキだと思っています
 この石は、八海の岩型石です。岩型といっても、良く川擦れをしたちょっと抽象的な岩型になっています。このように力強い石では、ある程度力のある台座をつけても石と調和させる事ができますので、もう少し台座がごつくなっても大丈夫ですが、個人的好みとして、シンプルな台座を合わせた方が、石の見栄えが良くなると思っています
 足は小さくてごつくないのは良いのですが、台座の回り線が少し煩いのと、石がちょこんと乗っているような感じであるのが、ちょっと気になります。もう少しせり出している部分に台座を延ばせば良かったかもしれません
 この石は、佐治川の高土破石です。紫檀で作られてはいるものの、足も大きめで、台座も張り出しすぎているので、調和という意味ではイマイチですね
 この手のシンプルな石ほど、台座には気を配らなければならず、台の幅をできるだけ狭くして、足も小さく軽やかに仕上げれば良い台座になると思います
 この石は、釜無川の高土破石です。写真のとおり、力強さと幽玄さを兼ね備えた形状の変わった高土破になっています。このような石は、多少力強い台座でも十分合うのですが、あまりがっしりとさせて力強さだけが全面に出るのを嫌い、このような台がつけてあります
 私の好みは、力強さよりも柔らかさや繊細さみたいなところがありますので、少し力強い石に台座をつける場合は、力強い台座を好みませんので、このような台座になっていますが、この石のような場合は、ガッチリと石を受け止めるような強い台座でも合いますので、そのあたりは、ご自分の好みでよろしいかと思います
 足も小さく少し洒落た感じで良いのではないかと思っています
 この石は、岩手の山型石です。シンプルでなだらかな二つ山になっていて、やさしい感じを受ける形です。このような石は、全体の形状に注意するとともに、形状だけではなく台座に優しさ(優美さ)をも持たせ、石と調和させる事が必要になってきます。ですから、足もかなり小振りな足をつけ、全体として柔らかさを演出して調和させてあります
 このようなシンプルな山型石には、品もあり良い台になっていると思います
 この石は、静岳の山型石です。この石は、古谷石と同じようにクツを履いている石で、クツが見えるように台座が作られています。実際石が埋まっているのは3mm程しかなく、ほとんど台の上に乗っかっているような状態です
 これはこれで悪くはないと思いますが、できれば台座を薄くした方が、さらに似合うのではないかと思います。そうして、足をもう少し小さくしてやれば品が出ることでしょう
 この石は、佐渡赤玉石の山型石です。山型石における普通の台座は、石の底面をすっぽり台座の中に埋めるというのがほとんどなのですが、この台座の特徴は底面全体を埋めることなく台座の上に乗せているような感じで作られています
 ですから、石だけが非常に目立ってしまい(特にこの石の場合、丈もありますから)、一体感という面ではちょっと違和感を感じさせてしまいます
 丈の低い遠山みたいな弱い石ならば合うかもしれませんが、このような強めの山型には、ちょっと不向きです
 この石は、佐治の山型(土破)石です。著名な作台師が作った台ですので、作りも良く違和感なく、石と一体となっているのがわかります
 このままでも十分合格なのですが、個人的な好みとして、もう少し足を小さくすれば品格がさらに上がるように思います
 ちなみに、この石は佐治川であるのにもかかわらず、どこかの雑誌で違う産地の石に化けていました(笑)
 この石は、安部川の縮緬石です。会員の遺愛石でもあり、縁があって今は私の手元にあります。この石は底切りの石ですので、台座を掘る事自体は簡単ですが、重要なのは足をつける位置と大きさです。島型石ですので、縁の出入りが多い石については、『縁が出ている場所に足を付ける』ということが、基本中の基本です。縁が出ているところに足が無いと、安定感を得る事ができず、どうしても違和感を感じてしまうからです。台座が丸みを帯びてしまうような姿石や立石は除き、外に飛び出している縁に足を付ける事が基本であると覚えておいて下さい
 足も小さく品があると思います
 この石は、加茂川の石です。現状では洞門景をしていますが、水盤で飾るときは、天地を反対にして岩型石として飾っています
 この台座は、鑑賞のためというよりも保管のための台座であり、ちょっと風変わりな台座にしてあります
 この石は、釜無川の滝石です。写真ではわかりにくいのですが、かなりレベルの高い滝石です。さて、この台座を見てみると、パッと見てもわかるように、右裾の飛び出しと左がわの膨らみが気になってしまいます。これでは、一体感とか、石を引き立たせるということとは、かなり遠い位置にあります。やはり、最低限石と一体感を持たせなければならない事がわかります
 この石は、釜無川の滝石です。プロの作台らしく仕上げも綺麗なのですが、石との一体感はでていますが、台座の裾がすぼんでいる事により、不安定に見えてしまいます。姿石と同じように、これだけ立ちのある石に対して、裾をすぼめるような事をすると、洒落た感じには見えますが、安定感が欠けたものになってしまいます。裾をすぼめる事が悪いわけではなく、ここまですぼめてしまうと、すぼめ過ぎという感じですが、品は良いですね
 この石は、釜無川の滝石です。石との一体感という視点で見ると、合格ですね。ただ、足が強すぎる為、どうしても台座がえばりがちになってしまいます。いくら力が強い滝石だからといっても、この足だと台座の方が勝ってしまいますので、足を小さく目立たなくしてやれば良い台座になると思います
 この石は、釜無川の滝石です。石との一体感ということでは合格で、足もえばることなく(主張することなく)左右に付いていますが、仔細に見ると、滝(谷)の部分がえぐれていて、台座も石なりに作ってある事がわかります。このような場合、前述したように、「縁の外に足をつける」という原則から外れてしまいます。この台座の場合、谷部にある左右の出っ張り部分(縁)にやはり足が必要で、現状では、その部分に若干の不安定感と違和感を感じてしまいます。石なりの台座ではなく、谷を無視して谷部分を繋げた台座であれば、このままで文句無しなのですが、谷部を作ってしまったので、ちょっと不安定になってしまいました
 今の足よりも二回りほど小さい足を、今の足部分と谷の左右につけておけば完璧だったですね
 この石は、釜無川の滝石です。石の右端に滝見台が付いているのが特徴で、あとは穏やかな滝風情となっています。この石に写真のような台が付いています。一見して、台座がえばり過ぎているのがわかり、台座が強すぎることがわかります
 滝石であっても、このように弱い石については、もっと優しい台を付けないと鑑賞するのには不向きですね
 この石は、釜無川の滝石です。この石もわりと穏やかな滝になっていて、それに写真のような台が付けられています。この台の特徴は、なんといっても左右の足でしょう。足の向きが正面に向いて付けられています
 太宰の本体部分については、大きさもちょうど良いとは思うのですが、足の向きが正面に付けられていることで、ちょっと違和感を感じざるを得ません。人物像ならまだしも、このような山水景状の立ち石では、ちょっと安定感に欠けそうですので、足はもう少し左右に開いて付けた方が良いでしょう
 ここから、台座で観賞する石である形象石(茅舎石・姿石)・紋様石についてです。この石は、奈良井の茅舎石です。茅舎は台座が必需品ですから、特に注意して台座を作ることが必要で、普通の葛舎であれば、台座に装飾を設けることなく、石と一体となったシンプルな台座が一番似合うと考えています。この台座については、このままでは、とってつけただけの感じを受けてしまい、茅舎の台座としてはイマイチという感じです
 かといって、台座の幅を狭めてしまうと腰高になってしまい、ちょっと不安定になってしまいます。ですから、この石のように石自体で家(茅舎)すべてが表現されている場合は、台座の幅を広げて、台座が地面を表現するようにすると違和感が無くなり石と調和してきます
 この石は、加茂の葛舎石ですが、普通の葛舎と違って、壊れかけの風情を持った葛舎です。このような石の場合、家の本体にあたる部分だけで台座を作ることは困難になってきますので、このような変形の台座になっています。このような変形の石に変形の台座をつける場合は、石の形状に合わせるだけでなく、調和させながら作ることが必要になってきますが、この「調和させる」という部分については、センスや感性的な部分がありますので、文章で表現しきれるものではありません。ですから、変形台座に合わせる場合は、事前に絵や写真などでシュミレーションしてから作ると、良い台座が作れるのではないかと思います
 この石は、荒川の茅舎石です。この茅舎の台座は、石と一体感を持たせようとすると、やはり腰高感を感じさせるようなものになってしまいますので、普通の台座ではなく、石と台座の見付け部分を地面に見立て、あえて台座の幅を広げたものです。台座の幅を数ミリから数十ミリ広げる事により、その広げた部分を地面に見立てているつもりです。写真では、なかなか感じる事は難しいかもしれませんが、実物をじっくり見ていると、奈良井の台座と比べると、こちらの台座の方が台座としては、はるかに優っていると思います
 この石は、古谷石の茅舎です。前述した静岳石と同じようにクツの部分があります。、静岳石と同じように3mmくらいしか石が埋められていません。この手の土中石は、クツを見せる事が主流となっていますので、どうしてもこのような台座になりがちです
 この石も、クツの部分は地面になっています。クツが地面になっているのは、上の荒川の茅舎と同じでような考えですから、景色的な違和感を感じてしまいますので、このような石は、クツ部分をもう少し埋めてクツと一体となった台座を付ける必要があります
  この石は、高根島の茅舎石です。この石は、台座まで含めて家が表現されている石ですので、極力台座を薄くし、石と一体となった形で作られています
 若干右足の位置が気にはなりますが、これくらいであれば許容範囲内で良いだろうと思います
 この石は、安部川溜まり石の台座です。台座をつけるほどのたいした石ではないのですが、石の大きさが4寸程の石でもあり、時には舟形の添配として使おうと思って、小さな台座をつけてみました。舟形と見るのには、ギリギリの石だろうとは思いますが、柳の盆栽や葦などの草物の添えには充分使える範疇です
 このような舟形石の場合は、石と同じくらいあるような台座はNGです。大きめの台座をつけてしまうと、どうしても鈍重感が出てしまい、舟形石の持つ「痩せ」が殺されてしまうからです。ですから、舟形石の場合は、底の湾曲部分の底辺に小さな台座をつけてやり、底のカーブを見せてやる事が大前提になります。そうすることで、舟形石の持つ『痩せ』た感じを引き出せますし、石と台座の一体感が生まれるからです
 本当は、もっと良い石があれば良かったのですが、持ち合わせがないので、こんな石になってしまいました
 姿石については、「このような台座をつけると良い」というような決まりはありませんので、解説するのにも非常に難しいものがあります。して言えば、「女性を連想させるような物は、優しい台座を」「男性を連想させるような物は、女性よりも力強く」「動物を連想させるものは、それなりに」・・・・というような感じでしょうか
 この石は、瀬田川の姿石です。観音様を連想させるような優しく滑らかな石ですので、台座もそれに見合った物にしなければなりません。この台座では、ちょっと踏ん張りすぎていて力が強すぎるかもしれません。また、台座の胴部分の膨らみも、この場合、あまりプラスに働いていないような感じも受けます。この場合、足はついていません。と言いますか、これは回り足というもので、このようにちょっと抽象的な姿石の場合、若干角度を変えて飾る場合もありますので、このような廻り足にしておいた方が、飾る角度の微調整もでき重宝します
 この石は、伊那の山石と呼ばれる土中石の姿石です。これは、見るからに男性人物を表現していますので、上記のものよりも少々力強い台座をつけても構わないと思います。実際この石には、丸みのある姿石系の台座ではなく、普通の山水形状の台座がついていて、足までついています。かといって、この台座が合っていないわけではなく、一体感もそこそこのレベルで感じますし、石と台座の力配分も調和しています
ですから、姿石だからといって、すべてを丸系の回し足にすることなく、石によって形を変えたり、足をつけたりと臨機応変に対応しなければならないのが姿石の台座でもあります
 この石の場合、正面が決まっていますので、足を付けても問題はありません
 この石は、三陸海岸の姿石です。足付きの丸台座がつけてあります。
他には、動物の形状に似た姿石もありますが、この手の姿石については、細くて丸みのある人物の姿石とは違って、石の形状も千差万別ですから、丸みのある画一的な台座ではなく、あくまでも石の形状にあわせる事が重要で、必要に応じて足をつけていくと考えて良いと思います
 この石の場合も、瀬田川の姿石と同じで、角度を変えても見ることができますので、廻り足の方が重宝します
 この石は、佐治の姿石です。石肌が荒く姿石としてはもう一歩というところなのですが、参考までに掲載してみました。肌は荒いのですが、なによりうねりのある姿と足元がすぼんでいるところが、見所です
 右の画像が本命の正面なのですが、左の画像のように正面を変更してもなんとか見ることができます。もちろん、この中間くらいで見てもかまいません。このような場合に、足を付けてしまうと正面が決まってしまいますので、廻り足にしておけば、どの角度からも見ることができ便利です
 ですから、このような石の場合、廻り足にしておけば、その時の気分で正面を変更できるという利点があります
 この石は、富士川の紋様(梅花)石です。一般的にこのような梅花石は幹が下から伸びてきて花を咲かせるのが一般的なのですが、この石は、盆栽でいうところの懸崖樹形が表現されています。普通ならば、この石も、そのように見立てるのかもしれませんが、あえて懸崖にし絵画的な風情で楽しむというセンスは非凡なものがあります。台座もがっしりとしたものではなく、石の下部を支えるだけのもので、ほどよい上品さを醸し出しているように思います
 この石の場合、微妙なところではありますが、若干の不安定感を感じますが、これくらいの大きさや高さがあることにより、品格が上がり良いのではないかと思います
 この石は、富士川の紋様石です。上の石と違って、垂れ梅を現している梅花です。紋様石については、台座で観賞する石ではありますが、茅舎や姿石と違って、石全体の姿も画一的ではなく、変化に富んでいますので、定型の台座があるわけではなく、基本的には、普通の山水景状石と同様な考えで良いと思います
 この石の場合、石の成りに沿って全体の形が作られており、これは良いのですが、この石の場合は、足を付けることなく廻り足にでもすれば、さらなる向上につながるものだと思います
 この石は、富士川の紋様石です。黒の母岩に白い紋様で鶏(ひよこ)が浮かび上がっているものです。それに写真のような台座が付けられています。どのような理由でこのような台座が付けられたのかわかりませんが、石を硯屏にでも見立てたのでしょう
  これはこれで面白いのですが、もともとが地面にいるもので、一体感という面ではこの図柄では、あまり良くないように思えます。この手の台座(硯屏)では、山水景のものが似合います。この図柄では、上の垂れ梅花と同じように石の成りに沿った台座で廻り足にした方がより似合うと思います


 簡単ではありますが、いくつかの例を用いて、台座の良し悪しを解説してみました。たかが台座かもしれませんが、台座石の場合、出来次第でこれほどまで石の生殺を担う事が理解されたのではないかと思います(ちょっと大袈裟かな)。大多数の人が、『石さえ良ければ、台座などそれほど取るに足りないものでは・・・』と考えているのではないかというくらい、台座に注意が払われていません。私の場合、こだわり過ぎているのかもしれませんが、やはり、少しでも石を良く見てもらう為には、ここまで研究し注意を払っているという事だけでもわかっていただければ幸いです

 上の写真は、紫檀の端板に石を埋め込む部分を掘っている途中のものです。お気に入りの石は紫檀で台座を作るようにしていますが、元来がマメではないので、よほどでないと自作はしていません(笑)
 また、特に紫檀を使わなければいけないわけではなく、他の材料でもまったく問題はなく、柔木で作ってあっても、良い台でありさえすればそれで十分だと思っています
 ですから、最初は入手しやすい柔木で作台し、慣れてきたら堅木を使うというのも良いと思います。また、お気に入りの石は紫檀(堅木)で、それほどでもないのは柔木でという人も良く見かけますので、そのあたりは臨機応変で良いでしょう


 あたりまえのことですが、それほどたいした物ではないものにまで台座を付けることはなく、水盤で鑑賞するのが私の基本スタイルですから、右の写真のように、途中で作台が頓挫してしまっているものもいくつかあります(笑)

 写真で見てもわかるとおり、たいした石ではありませんので、これは柔木を使って作っている最中で、あとは足を削りだし、全体の形を整え彩色するだけになっています



 水石の形はそれこそ千差万別ですから、それぞれの石に合った台座を作ると言う事は、これだけの事例紹介では、とても解説しきれることではありません。それでも少しは参考になったでしょうか? 紫檀などの唐木を使っているから良い台座であるというわけでもなく、石が台座にピタリと嵌るからと言って良い台座であるという事は、間違いであって、あくまでも 『石と一体感が合って、石を引き立たせる』 事ができる物が良い台座であるということです。ですから、唐木でなく柔木で作る場合であっても、ポイント(石と一体感が合って、石を引き立たせる)を押さえた台座であれば、良い台座と認められ、観賞価値も十分あり、展示会に出品してもまったく問題ありません

 自作される方は、いくつか示したポイントに注意し、作台する前には、できれば絵図面でも実際に描いて、ポイントを確認しながら作成すると、良い台座が作れるのではないかと思います。また、慣れないうちは、なかなか思ったように作る事ができないかもしれませんが、いくつも作っていくうちに、だんだん良い台ができてくると思います

 また、プロに作台を頼む時も、石を写真に撮って、台の形や足のつけ方や大きさなども細かく指示をして作ってもらう事により、いっそう良い台座にすることができます。作台師だからといって、必ず良い台を作ってもらえるわけではなく、眼が効かない人もいますので、作台を頼む時には、必ず絵図面をつけて頼むようにしてください。そうすれば、自分自身が考えた良い台になること請け合いです

 それと、自分の石の台座だけを考えているだけでも勉強になるのですが、他人の台座もポイントに注意してみている事も大事で、展示会・雑誌・ネットなどを見ていても、たくさんの台座石を見る機会があります。良く見ているうちに、良い台座とよくない台座を見分ける力もついてきますので、水石の画像を見る場合にも、漫然と石だけを見ることなく、石と調和して石を活かしているかどうか? 石を活かしていると思ったなら、何がポイントで石を活かしているのか?(その反対もありますが・・・・) そのような点に注意して普段から台座を見ていると、少しずつではありますが、確実に鑑識眼が養われていくと思いますので、水石の画像を見るときは、常に注意しながら見ることも重要です
 そして、自分自身でそれらが見極めることができるようになると、石を見る眼も確実に上がっていきますので、水石の奥深さが広がっていく事と思います

 最後になりますが、古谷石のように昔からかなり派手な台座が作られている特殊な石もあります。古谷石自体が、石肌の竣(皺)を楽しむと言う感じであったり、独特な台座で観賞するという伝統を守るという目的であれば、それはそれでかまわないのですが、個人的には、すっきりとした台座に仕上げ方が、台座だけがえばることなく石とも調和すると思っています



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