ここからは、実物に基づき具体的に説明したいと思います |
|
この石は、久慈川の岩型石です。景色は乏しいのですが、総ジャグレの屏風岩形の岩型石になっています。そうはいっても実景にはこのような景はないので、実際は抽象的な岩型といったところでしょうか。この石に写真のような台座が付いています。団扇に近いような形で、その下部部分だけに台座がついています
ごく普通の台座ではありますが、石のボリュームと強さを受け止めている台座で、力強い石をそのまま力強い台座でそのまま受けていて、これはこれで石との一体感もあり、調和しているのではないでしょうか |
|
この石は、佐治のせり出しの石です。写真のとおり石は逆台形状の形をしています。この台座は、石をすっぽりと包み込むような感じで作られていて、下部にいくに従ってすぼめられ小さな足が付けられています。石の強さに対して、石を受け止めるだけの強い台座ではなく、強い石を優しく包み込んでいるような台座になっています
足も小さくて品があり、台座としてはまあまあのデキだと思っています |
|
この石は、八海の岩型石です。岩型といっても、良く川擦れをしたちょっと抽象的な岩型になっています。このように力強い石では、ある程度力のある台座をつけても石と調和させる事ができますので、もう少し台座がごつくなっても大丈夫ですが、個人的好みとして、シンプルな台座を合わせた方が、石の見栄えが良くなると思っています
足は小さくてごつくないのは良いのですが、台座の回り線が少し煩いのと、石がちょこんと乗っているような感じであるのが、ちょっと気になります。もう少しせり出している部分に台座を延ばせば良かったかもしれません |
|
この石は、佐治川の高土破石です。紫檀で作られてはいるものの、足も大きめで、台座も張り出しすぎているので、調和という意味ではイマイチですね
この手のシンプルな石ほど、台座には気を配らなければならず、台の幅をできるだけ狭くして、足も小さく軽やかに仕上げれば良い台座になると思います |
|
この石は、釜無川の高土破石です。写真のとおり、力強さと幽玄さを兼ね備えた形状の変わった高土破になっています。このような石は、多少力強い台座でも十分合うのですが、あまりがっしりとさせて力強さだけが全面に出るのを嫌い、このような台がつけてあります
私の好みは、力強さよりも柔らかさや繊細さみたいなところがありますので、少し力強い石に台座をつける場合は、力強い台座を好みませんので、このような台座になっていますが、この石のような場合は、ガッチリと石を受け止めるような強い台座でも合いますので、そのあたりは、ご自分の好みでよろしいかと思います
足も小さく少し洒落た感じで良いのではないかと思っています |
|
この石は、岩手の山型石です。シンプルでなだらかな二つ山になっていて、やさしい感じを受ける形です。このような石は、全体の形状に注意するとともに、形状だけではなく台座に優しさ(優美さ)をも持たせ、石と調和させる事が必要になってきます。ですから、足もかなり小振りな足をつけ、全体として柔らかさを演出して調和させてあります
このようなシンプルな山型石には、品もあり良い台になっていると思います |
|
この石は、静岳の山型石です。この石は、古谷石と同じようにクツを履いている石で、クツが見えるように台座が作られています。実際石が埋まっているのは3mm程しかなく、ほとんど台の上に乗っかっているような状態です
これはこれで悪くはないと思いますが、できれば台座を薄くした方が、さらに似合うのではないかと思います。そうして、足をもう少し小さくしてやれば品が出ることでしょう |
|
この石は、佐渡赤玉石の山型石です。山型石における普通の台座は、石の底面をすっぽり台座の中に埋めるというのがほとんどなのですが、この台座の特徴は底面全体を埋めることなく台座の上に乗せているような感じで作られています
ですから、石だけが非常に目立ってしまい(特にこの石の場合、丈もありますから)、一体感という面ではちょっと違和感を感じさせてしまいます
丈の低い遠山みたいな弱い石ならば合うかもしれませんが、このような強めの山型には、ちょっと不向きです |
|
この石は、佐治の山型(土破)石です。著名な作台師が作った台ですので、作りも良く違和感なく、石と一体となっているのがわかります
このままでも十分合格なのですが、個人的な好みとして、もう少し足を小さくすれば品格がさらに上がるように思います
ちなみに、この石は佐治川であるのにもかかわらず、どこかの雑誌で違う産地の石に化けていました(笑) |
|
この石は、安部川の縮緬石です。会員の遺愛石でもあり、縁があって今は私の手元にあります。この石は底切りの石ですので、台座を掘る事自体は簡単ですが、重要なのは足をつける位置と大きさです。島型石ですので、縁の出入りが多い石については、『縁が出ている場所に足を付ける』ということが、基本中の基本です。縁が出ているところに足が無いと、安定感を得る事ができず、どうしても違和感を感じてしまうからです。台座が丸みを帯びてしまうような姿石や立石は除き、外に飛び出している縁に足を付ける事が基本であると覚えておいて下さい
足も小さく品があると思います |
|
この石は、加茂川の石です。現状では洞門景をしていますが、水盤で飾るときは、天地を反対にして岩型石として飾っています
この台座は、鑑賞のためというよりも保管のための台座であり、ちょっと風変わりな台座にしてあります |
|
この石は、釜無川の滝石です。写真ではわかりにくいのですが、かなりレベルの高い滝石です。さて、この台座を見てみると、パッと見てもわかるように、右裾の飛び出しと左がわの膨らみが気になってしまいます。これでは、一体感とか、石を引き立たせるということとは、かなり遠い位置にあります。やはり、最低限石と一体感を持たせなければならない事がわかります
|
|
この石は、釜無川の滝石です。プロの作台らしく仕上げも綺麗なのですが、石との一体感はでていますが、台座の裾がすぼんでいる事により、不安定に見えてしまいます。姿石と同じように、これだけ立ちのある石に対して、裾をすぼめるような事をすると、洒落た感じには見えますが、安定感が欠けたものになってしまいます。裾をすぼめる事が悪いわけではなく、ここまですぼめてしまうと、すぼめ過ぎという感じですが、品は良いですね |
|
この石は、釜無川の滝石です。石との一体感という視点で見ると、合格ですね。ただ、足が強すぎる為、どうしても台座がえばりがちになってしまいます。いくら力が強い滝石だからといっても、この足だと台座の方が勝ってしまいますので、足を小さく目立たなくしてやれば良い台座になると思います |
|
この石は、釜無川の滝石です。石との一体感ということでは合格で、足もえばることなく(主張することなく)左右に付いていますが、仔細に見ると、滝(谷)の部分がえぐれていて、台座も石なりに作ってある事がわかります。このような場合、前述したように、「縁の外に足をつける」という原則から外れてしまいます。この台座の場合、谷部にある左右の出っ張り部分(縁)にやはり足が必要で、現状では、その部分に若干の不安定感と違和感を感じてしまいます。石なりの台座ではなく、谷を無視して谷部分を繋げた台座であれば、このままで文句無しなのですが、谷部を作ってしまったので、ちょっと不安定になってしまいました
今の足よりも二回りほど小さい足を、今の足部分と谷の左右につけておけば完璧だったですね |
|
この石は、釜無川の滝石です。石の右端に滝見台が付いているのが特徴で、あとは穏やかな滝風情となっています。この石に写真のような台が付いています。一見して、台座がえばり過ぎているのがわかり、台座が強すぎることがわかります
滝石であっても、このように弱い石については、もっと優しい台を付けないと鑑賞するのには不向きですね |
|
この石は、釜無川の滝石です。この石もわりと穏やかな滝になっていて、それに写真のような台が付けられています。この台の特徴は、なんといっても左右の足でしょう。足の向きが正面に向いて付けられています
太宰の本体部分については、大きさもちょうど良いとは思うのですが、足の向きが正面に付けられていることで、ちょっと違和感を感じざるを得ません。人物像ならまだしも、このような山水景状の立ち石では、ちょっと安定感に欠けそうですので、足はもう少し左右に開いて付けた方が良いでしょう |
|
ここから、台座で観賞する石である形象石(茅舎石・姿石)・紋様石についてです。この石は、奈良井の茅舎石です。茅舎は台座が必需品ですから、特に注意して台座を作ることが必要で、普通の葛舎であれば、台座に装飾を設けることなく、石と一体となったシンプルな台座が一番似合うと考えています。この台座については、このままでは、とってつけただけの感じを受けてしまい、茅舎の台座としてはイマイチという感じです
かといって、台座の幅を狭めてしまうと腰高になってしまい、ちょっと不安定になってしまいます。ですから、この石のように石自体で家(茅舎)すべてが表現されている場合は、台座の幅を広げて、台座が地面を表現するようにすると違和感が無くなり石と調和してきます |
|
この石は、加茂の葛舎石ですが、普通の葛舎と違って、壊れかけの風情を持った葛舎です。このような石の場合、家の本体にあたる部分だけで台座を作ることは困難になってきますので、このような変形の台座になっています。このような変形の石に変形の台座をつける場合は、石の形状に合わせるだけでなく、調和させながら作ることが必要になってきますが、この「調和させる」という部分については、センスや感性的な部分がありますので、文章で表現しきれるものではありません。ですから、変形台座に合わせる場合は、事前に絵や写真などでシュミレーションしてから作ると、良い台座が作れるのではないかと思います
|
|
この石は、荒川の茅舎石です。この茅舎の台座は、石と一体感を持たせようとすると、やはり腰高感を感じさせるようなものになってしまいますので、普通の台座ではなく、石と台座の見付け部分を地面に見立て、あえて台座の幅を広げたものです。台座の幅を数ミリから数十ミリ広げる事により、その広げた部分を地面に見立てているつもりです。写真では、なかなか感じる事は難しいかもしれませんが、実物をじっくり見ていると、奈良井の台座と比べると、こちらの台座の方が台座としては、はるかに優っていると思います |
|
この石は、古谷石の茅舎です。前述した静岳石と同じようにクツの部分があります。、静岳石と同じように3mmくらいしか石が埋められていません。この手の土中石は、クツを見せる事が主流となっていますので、どうしてもこのような台座になりがちです
この石も、クツの部分は地面になっています。クツが地面になっているのは、上の荒川の茅舎と同じでような考えですから、景色的な違和感を感じてしまいますので、このような石は、クツ部分をもう少し埋めてクツと一体となった台座を付ける必要があります |
|
この石は、高根島の茅舎石です。この石は、台座まで含めて家が表現されている石ですので、極力台座を薄くし、石と一体となった形で作られています
若干右足の位置が気にはなりますが、これくらいであれば許容範囲内で良いだろうと思います |
|
この石は、安部川溜まり石の台座です。台座をつけるほどのたいした石ではないのですが、石の大きさが4寸程の石でもあり、時には舟形の添配として使おうと思って、小さな台座をつけてみました。舟形と見るのには、ギリギリの石だろうとは思いますが、柳の盆栽や葦などの草物の添えには充分使える範疇です
このような舟形石の場合は、石と同じくらいあるような台座はNGです。大きめの台座をつけてしまうと、どうしても鈍重感が出てしまい、舟形石の持つ「痩せ」が殺されてしまうからです。ですから、舟形石の場合は、底の湾曲部分の底辺に小さな台座をつけてやり、底のカーブを見せてやる事が大前提になります。そうすることで、舟形石の持つ『痩せ』た感じを引き出せますし、石と台座の一体感が生まれるからです
本当は、もっと良い石があれば良かったのですが、持ち合わせがないので、こんな石になってしまいました |
|
姿石については、「このような台座をつけると良い」というような決まりはありませんので、解説するのにも非常に難しいものがあります。して言えば、「女性を連想させるような物は、優しい台座を」「男性を連想させるような物は、女性よりも力強く」「動物を連想させるものは、それなりに」・・・・というような感じでしょうか
この石は、瀬田川の姿石です。観音様を連想させるような優しく滑らかな石ですので、台座もそれに見合った物にしなければなりません。この台座では、ちょっと踏ん張りすぎていて力が強すぎるかもしれません。また、台座の胴部分の膨らみも、この場合、あまりプラスに働いていないような感じも受けます。この場合、足はついていません。と言いますか、これは回り足というもので、このようにちょっと抽象的な姿石の場合、若干角度を変えて飾る場合もありますので、このような廻り足にしておいた方が、飾る角度の微調整もでき重宝します |
|
この石は、伊那の山石と呼ばれる土中石の姿石です。これは、見るからに男性人物を表現していますので、上記のものよりも少々力強い台座をつけても構わないと思います。実際この石には、丸みのある姿石系の台座ではなく、普通の山水形状の台座がついていて、足までついています。かといって、この台座が合っていないわけではなく、一体感もそこそこのレベルで感じますし、石と台座の力配分も調和しています
ですから、姿石だからといって、すべてを丸系の回し足にすることなく、石によって形を変えたり、足をつけたりと臨機応変に対応しなければならないのが姿石の台座でもあります
この石の場合、正面が決まっていますので、足を付けても問題はありません |
|
この石は、三陸海岸の姿石です。足付きの丸台座がつけてあります。
他には、動物の形状に似た姿石もありますが、この手の姿石については、細くて丸みのある人物の姿石とは違って、石の形状も千差万別ですから、丸みのある画一的な台座ではなく、あくまでも石の形状にあわせる事が重要で、必要に応じて足をつけていくと考えて良いと思います
この石の場合も、瀬田川の姿石と同じで、角度を変えても見ることができますので、廻り足の方が重宝します |
|
この石は、佐治の姿石です。石肌が荒く姿石としてはもう一歩というところなのですが、参考までに掲載してみました。肌は荒いのですが、なによりうねりのある姿と足元がすぼんでいるところが、見所です
右の画像が本命の正面なのですが、左の画像のように正面を変更してもなんとか見ることができます。もちろん、この中間くらいで見てもかまいません。このような場合に、足を付けてしまうと正面が決まってしまいますので、廻り足にしておけば、どの角度からも見ることができ便利です
ですから、このような石の場合、廻り足にしておけば、その時の気分で正面を変更できるという利点があります |
|
この石は、富士川の紋様(梅花)石です。一般的にこのような梅花石は幹が下から伸びてきて花を咲かせるのが一般的なのですが、この石は、盆栽でいうところの懸崖樹形が表現されています。普通ならば、この石も、そのように見立てるのかもしれませんが、あえて懸崖にし絵画的な風情で楽しむというセンスは非凡なものがあります。台座もがっしりとしたものではなく、石の下部を支えるだけのもので、ほどよい上品さを醸し出しているように思います
この石の場合、微妙なところではありますが、若干の不安定感を感じますが、これくらいの大きさや高さがあることにより、品格が上がり良いのではないかと思います |
|
この石は、富士川の紋様石です。上の石と違って、垂れ梅を現している梅花です。紋様石については、台座で観賞する石ではありますが、茅舎や姿石と違って、石全体の姿も画一的ではなく、変化に富んでいますので、定型の台座があるわけではなく、基本的には、普通の山水景状石と同様な考えで良いと思います
この石の場合、石の成りに沿って全体の形が作られており、これは良いのですが、この石の場合は、足を付けることなく廻り足にでもすれば、さらなる向上につながるものだと思います |
|
この石は、富士川の紋様石です。黒の母岩に白い紋様で鶏(ひよこ)が浮かび上がっているものです。それに写真のような台座が付けられています。どのような理由でこのような台座が付けられたのかわかりませんが、石を硯屏にでも見立てたのでしょう
これはこれで面白いのですが、もともとが地面にいるもので、一体感という面ではこの図柄では、あまり良くないように思えます。この手の台座(硯屏)では、山水景のものが似合います。この図柄では、上の垂れ梅花と同じように石の成りに沿った台座で廻り足にした方がより似合うと思います |