展示を行うということは、自分自身が趣味の一環として楽しむとともに、 「他人に見てもらう」 と言うことが大前提にあります。もちろん、ここで言うところの「他人」とは、同行の仲間だけではなく、水石に興味を持っていない人も見に来るだろうということは、ある程度予想されます。ですから、常法に則った展示が必要になってくると考えられています

 すでに流派を名乗り、流儀というものをある程度の理論の元に確立している(もしくは、他人に認められているもの)のであれば、常法や定法と呼ばれている共通認識からは、多少かけ離れたものでも仕方がありませんが、そうでない大部分の人達(愛好家)については、基本的には常法等に則った展示を行った方が、一般来場者にとってもより理解がし易くなり、好ましい展示なるだろうと考えています
 水石の展示会だからといって、ただ石だけを並べるのではなく、水盤に入れたり台座におさめたりして、卓や地板を用いて飾るというのも常法の一つです

 ただ、あまりに「常法に則って」というような表現をしても、感覚的な部分が多少あることはいうまでもなく、初心者の方にそのような事のすべてを求めても、水石の間口が狭くなってしまい、取っつきにくくなってしまう趣味になってしまいますので、最初から、常法のすべてを覚えるということではなく、徐々に勉強していけば良いのではないかとも考えています
 そこで、どのようなことに注意して展示を行うかということを、少し書いてみたいと思います。『このような山形石はこのように飾る』などの具体例については、とても列挙することができませんので、具体的な例については、他項において写真で例を示しながら説明することにし、ここでは、その基本的なポイントのみをお示しすることにします

 最初に注意しなければならないのは、なんと言っても 『席としての調和』 にあります。形・強弱・色の調和を図るとともに、席全体のバランスをとるということが必要です。このことは簡単でありそうに見えますが、一番難しいところでもあります。また、展示を行う上でも、一番重要な感覚です
 よく「○○○は、△△△のように飾ると、主役が一番引き立つ」とか、「◆◆◆は、□□□のように飾るべきだ」などというものがたくさんあります。これらのことは、 「調和」や「バランス」が最大限に図られた結果 そのものであり、そのような結果を何十通りも覚えるよりも、常に「調和」や「バランス」を心がけて飾るクセをつけておけば、自ずから身に付いてくるものであると考えているからです。このことは席飾りでも、列席飾りでもまったく同じ事で、いろいろと難しいことは考えずに、調和とバランスに心がけていれば、おのずと良い飾りになってくるものと思っています

 もう一点心がけたいことは、使用する 道具の選定 です。道具選びといっても高価なものを使用すると言うことではなく、前記のように調和とバランスのとれた道具であるとともに、やはり、ある程度は鑑賞に堪えうるものであることも必要です。この「鑑賞に堪えうる」ということも、その基準が難しいところなのですが、水盤においては型作り(成型:形物:流し込み)と呼ばれているものではなく、最低限は手作り水盤を使用したいところです(磁器水盤なら型作りでも可)。花台については、赤みを帯びたような安価な物はできるだけ避けるようにしたいところです。できれば一品物のほうが良いに決まっていますが、最近では写し物(昔の名卓を真似した物)でも、安価で形の良いものがたくさん作られていますので、このようなもので、充分飾りに使うことはできます

 最後に、肝心の石についてですが、これについては、文字で表現することはほとんど不可能です。だからといって、その人の感覚だけで判断するのも、あまりお勧めではありません。水石を鑑賞するのにもいろいろな要素(鑑賞ポイント)がありますので、何が優先されるべきかという順序を示すことにします
 それは、一も二もなく 「形」 が最優先をされます。いくら石質が良くて、古色を備えた物であっても、その形が悪い(重大な欠点を持っている)ものについては、石そのものが持つ魅力はあるかもしれませんが、水石としての魅力に欠けてしまいます。採石されてあまり年数の経ていない若い石でも、形が整っている方が、水石としての鑑賞価値は大きいからです
 ですから、水石の展示を行う場合は、石質・古色・色よりも、形が最優先されることになります






 席飾りについて、ある程度研究している人ならわかると思うのですが、飾りの世界は無限と思われるほど奥深いもので、とても文章で表現しきれるものではありません。その奥深さについては、おいおい飾りの実例を示しながら解説していきたいと考えていますので、ここでは、鑑賞時の心得と、鑑賞時の簡単なポイントについて紹介したいと思います

 飾りには、床の間を使った席飾りと展示会での列席飾りとの2種類があり、それぞれ鑑賞時のポイントも若干違いますが、その基本はほぼ同じです


−−− 席飾り −−−

 正式な床の間でも、展示会における仮の床の間においても、掛け軸の掛かっている席を鑑賞する時は、まず掛け軸に対して一礼をします。水石飾りにおいて、掛け軸は主役の添えではありますが、床の間とは、本来掛け軸を掛けて鑑賞するための場所ですので、掛け軸が一番重要視されているからです(常法)
 そうしてから、席全体をひと眺めし、席想を思い浮かべ、主役(水石)→掛け軸→添え(草・添配)と個々に見ていくようにします
 席飾りのポイントは、大きく分けると2つあります。一つ目は言うまでもなく 「季節感」 です。席全体として季節感を感じることができるか?・・・・・です。列席飾りにおいては、この季節感というものは、あまり問われないのですが、席飾りには季節感が付き物だからです
 ですから、席主がどのように季節感を表現しているか?・・・・・このことが最大のポイントになります

 次に注意して見ることは、 席全体のバランス です。主役(主石)・軸・添えの3点が、その大きさ・強弱・形・色、あるいは配置されている場所のバランスが図られて、全体として調和がとれているかどうか?・・・・・です。展示(飾る)する時にも、細心の注意を払うところですので、鑑賞時にも同じようになるわけです。具体的には、主役・添えの置かれている位置や大きさのバランスはとれているか。勝手・強弱・色使いはキチンと調和しているどうか。掛け軸の大きさ・掛ける高さは適切であるかどうか、などです


−−− 列席飾り −−−

 これは、席飾りではなく、一般席にある普通の展示なので、季節感はさほど問われませんので、石・水盤・花台の3点が、バランスが図られて調和しているかどうかということが、鑑賞時の大きなポイントになります
 最初に注意することは、全体のバランスであり、形・大きさ・強弱・色・砂の色・粒の大きさのバランスがとれているかどうかを見ます。その次に注意して見ることは、適切な道具使いがされているかどうかになります。これは、どのようなことかと言いますと、平溜まりなどのように平地の景色を現すものが、どのような花台で使われているのか、とか、といった具体的な景色と形のバランスを見るようにしていき、最終的に評価をすることになります。席飾りにおいても、このことは同じです

 この時に注意しなければならないのは、 『許容範囲』 ということです
 水盤も卓も、基本的には一寸刻みで作られていますので、それぞれの間口は、寸刻みになっていますので、「あと2センチ広くなくてはいけない」とか「もう1センチほど水盤が深くなくてはいけない」というような評価はまったく無意味なのです
 一つの水盤のサイズを仮に考えてみると、間口は同じ寸法でも、浅いものから深いものまであり、その形についても、長方・楕円・短冊・間口と奥行きのバランスの違い、足の付け方、縁や装飾の有無、はては色の種類まで厳しく見てしまうと、一サイズで100枚以上持っていても足りません。ですから、このように細かいところまで評価すると言うことは、まったくナンセンスになってしまいます
 水盤は、小品サイズですと4寸くらいのものから、大きいものだと2尺5寸くらいまでが、普通使うサイズだと思います。これだけでも寸刻みでいっても20数種のサイズが必要になり、それに前記の条件を加味してしまうと、数千枚もの水盤がなければ、すべての石にピタリと当てはまらず、そんなに数多くの水盤を持てる人もいないはずです(もちろん、花台や地板に関してもも同じです)。同じ広さの間口であっても、高さは違うし、奥行きに至っては、10:5位の短冊型から10:8位の奥行きが深いものまであり、水盤や花台の微妙な大きさや深さを評価することは、ちょっと的はずれになりかねません
 ですから、『許容範囲』であるかどうか?・・・・ということを最初に評価することになります。そのうえで、その飾りをさらに良くするために「水盤の深さがあと1cmあれば最高の飾りになる」というように評価をするものなのです

 このことも、鑑賞する時の大きなポイントであるとともに、席主に対する礼儀でもあります。ただ「あら探し」をするだけではいけません。それだけで終わってしまうと、その飾りや主役・使われている道具・道具の取り合わせなどの 「良いところ」 が、まるで見えてきません。それでは、なかなか鑑賞眼も進みませんし、飾りの力もついてきません。その飾りの良いところを正確に見つけ出す目(力)も必要となることは、言うまでもありません

 ちなみに、僕の評価方法(採点方法)は、100点満点での評価方法をとっています。これは、どのような方法かと申しますと、主役が良くて、飾りに間違いがなければ、もちろん100点満点です。マイナス材料があれば、それはマイナスの評価になるのですが、それでは、簡単な飾りだと、けっこう高得点になってしまう傾向になってしまいます
 そこで、難しい物を正確に飾った場合には、ここから加点していくことになり、+20点とか+30点とかを加点していくようにしています。今までに見たこともないくらいの難しいものを、上品に飾った時などは、その困難さや、上品さに応じてさらに加点していき、最高は200点に達する時もあります(笑)
 このようにしていくと、その飾りの良いところも、正確に把握できるようになり、飾りの力もついていくことは請け合いですので、ぜひ、お試しください



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