水石展報告・・・・・M

◆甲府市文化協会水石部水石展◆
○2008年11月1日(土)〜11月3日(月)
○甲府市総合市民会館 2階 展示室

 今回は、甲府市文化協会主催の水石展の様子をアップします
 今回の展示会は、文化協会に加入している各水石会の水石展の開催報告です。初心者からベテランの方までいますので、出品された石や飾りについては玉石混淆なのですが、この展示会の様子をレポートしてみます
 



最初は列席飾りです
 
 この石は姫川産の島型(山型)石です。この石は姫川産の質の良い蒼黒ジャクレ石で、前面のジャクレの変化も良く、全体としてもまあまあ纏まっています。地板に据えられている感じでは島型かもしれません。主峰がやや中央に寄ってしまっているのもさることながら、石全体の動きは右勝手に対して、主峰の山頂部は左勝手の流れになってしまっているため「流れ」を感じる事はできませんので、左方を少し奥に振って欠点をカバーし動きを出すようにすれば、もっと良くなると思います
   この石は富士川産の岩型石です。この石も全体の形状は右からの押しになっているのに山頂部は左からの押しという事で「両押し」状態になってしまいました。もう少し右を沈めて左から押すように据えると良くなりそうな感じです
 この石は釜無川産の滝石です。滝は太く雄渾な様を呈していますが、滝の形状がもう一歩という感じで、滝と言うよりも残雪の景に近い感じになっていますので、現状では「残雪」として見立てた方が良くなるのではないかと思いました
 この石は三峰川産の通称ザクロ石と呼ばれている石で、青緑系の母岩に紅が入っている石です。この手の石は水石と言うよりも鑑賞石として喜ばれる事が多く、通常は台座石として楽しまれているものですが、水盤に据えられ山水景状として見るようになっています。形状的には、それほど優れてはいませんが、紅の部分が良く映えています
 この石は富士川産の岩型石です。富士川では珍しい質の石で、メノウ化した部分を含む硬質で褶曲が見られる石です。石色は茶系の石で「冬枯れ」を想像させるような色合いと質感を持った変わった石です。
 この石は安部川産の岩型石です。恐らく右下にある抜けを見せたくてこのように据えたものと思われますが、石全体が右後方へ逃げている感じになってしまい、ちょっとしっくりしていません。石全体の形状が良く見えるように据えた方がもっと良くなると思います
 この石は安倍川産の溜まり石です。色合いもこの時期に合いそうな感じですし、平らな破面にわずかな溜まりがあるだけの変哲もない石そうに見えますが、ちょっと洒落た感じの石です。しかし、現状ではちょっと水盤が厚すぎのため、この石の良さがあまり発揮されていませんので、もう少し調和を考えて飾ると良くなりそうです
 この石は梓川産の土破石です。色はやや薄い感じではありますが、川擦れも良く、景状もまあまあ纏まっています。水盤が大きすぎてしまい、石だけが浮いてしまっているような感じになっていますので、もう少し水盤を小さくしたいところです
 この石は梓川産の溜まり石です。石肌にやや荒さが残っていますが、石の色調はこの時期らしい感じになっています
 この石は奈良井川産の島型(山型)紅流し石です。紅の色もまあまあ良いですし、位置も良い場所に据えてあります。景状も良いのですが、ちょっと反っくり返っているように見えてしまっているので、もう少し起こして据えたり、やや水盤が広く深いため、少し浅めで小さいものを使うとさらに良くなります
 この石は姫川産の滝石です。全体の形状も良いですし、滝についても位置・落ち口とも良く、飾りも映りが良くて良いです
 この石は奈良井川産紅流しの山型石です。紅自体が纏まって入っているのではなく散りながら入っていて、川擦れも良いのですが、形状的にはあまり良くなく、現状の据え位置でですと、石が左に傾いているように見えてしまいますので、右をもっと沈めて石に流れを作ってやると良くなるのではないかと思います
 この石は奈良井川産の真黒石です。景状も良いですし川擦れも素晴らしく、なかなかの良石です。ほんのわずかではありますが水盤が小さいので、やや窮屈に見えてしまうのが、ちょっと惜しいですね
 この石は富士川産の土破石です。写真の通り高土破の石ですが、破面の広さや高さ、あるいは主峰の位置・高さ、全体のバランスについてはそこそこ纏まっています。前面に変化が無いので、この部分がやや単調になってしまっていますが、高土破としては、そこそこ纏まりのある石となっています
 この石は早川産の山型石(滝石かな)です。丈のあるシンプルな石ですが、やや両逃げになってしまっています。滑らかな石肌で草体の物であれば両逃げも芸になってくるのですが、この石の場合は、やや減点になってしまいます。浅い銅盤を広めに使っているのは、このような石を飾る場合良く見られる手法ですが、今回は、ちょっと広め過ぎでしょうか
 この石は釜無川産の山型石です。ヨーロッパアルプスの山岳を思い起こさせるような景状の石で、形状的にも面白い感じの石です。丈のある石だからといって深い水盤を合わせず、もう少し浅手の物を用いて丈の高さを強調するように飾ると、このような石は活きてきます
 この石は安部川産紫晃の滝石です。谷部がえぐられているのは良いのですが、これでは空中から滝が流れ落ちているように見えますので、落ち口には岩のバックがなければなりません。滝と言うよりは残雪や氷瀑みたいな感じで見立てると見られるかもしれません
 この石は富士川産の岩型石です。左右の間口が40cm近くある大型の石で、台座飾りとなっています。ちょっと左側にボリュームがある石ですので、左を沈めるだけ沈めて台座を付けると良くなると思います
 この石は安倍川産紫晃の渓流石です。紫晃石ではありますが、紫部分は少なめの母岩となっています。渓流部分については、位置も良いですし、流れる様も素晴らしく表現されています。また、砂との見付け部分についての変化も良く、全体の景状も渓流石らしい良い石です。卓がちょっと小さすぎるので、窮屈さを感じてしまいますので、もう少し卓を広めに飾ると、もっと映える石になると思います
 この石は土佐産の鎧石です。土破とも岩型とも見られる石ですが、これだけの素晴らしい破面を持っていますので、とりあえず土破石としておきます(笑)。広い破面を持ちながらも、せり出しやジャクレをも持っている芸の多い石なので、見所満載といった感じになっています。このような多彩な変化を持ちながらも、全体としては良く纏まっていて、なかなか良い石となっています
 この石は梓川産の山型石です。川擦れが良く形状的にも控えを持った双山形でバランスも良いです。また、構えも良いため、落ち着きのある中にも変化を持った良い石です。さらに、水盤や卓とも良く調和していて、飾りも良いです
 この石は根尾産の菊花石です。台座がちょっと強めになってしまっているのと、角張った感じがしてまろやかさも欠けています。もう少し腰を低く品の良い台座を付けるとまた違った感じに見えてくるのだろうと思います
 この石は水無川産の島型(山型)石です。左にある主峰の押しはやや弱く、右にある控えのボリュームがあるため、飾るのには難しい石となっています。できるだけ右を沈めて右半分くらいを弱くしたいところですが、これが沈める限度ということですので仕方がありません
 これは早川産の遠山抱湖石です。間口が40cmを越える大型の石で、左側に主峰を持ち右には3つの溜まりを抱えています。主峰から続く稜線も石奥の良い位置に通っているのですが、石全体から見るとちょっと変化に乏しい事と、前面にももう少し変化が欲しいのが惜しいです。とは言っても、これだけの変化を持っている石ですから、そこまで望むのは贅沢という事になってしまいます
やや窮屈に見えてしまいますが、細身の石を細身の水盤と良く取り合わせているのも好感が持てます
 これは安部川産の紫晃滝石です。こちらは前掲の渓流石と違って紫部分が多い母岩に白い滝が入っています。滝の入り込みがもう少し欲しいところではありますが、こればかりは仕方がありません。母岩については、それほど変化のある物ではありませんが、滝石に限り前面が平板であっても滝が強調されてスッキリと綺麗に見えますので、これはこれで良いと思っています
 この石は富士川産の島型石です。小品の割には大きな変化はありますし、川擦れも良く形状も纏まっていてなかなか良い石です。これだけ複雑な動きをしている石ですから、台座で飾るよりも水盤で飾った方が数倍は引き立ちますし、石の振りや据え方で右側の重さをカバーする事もできますので、できれば水盤に据えたかった石です
 この石は安部川産の真黒石です。山水景状石と言うよりも抜けのある石という感じで、抜けの石については、あまり奥行きがない方が好ましいのですが、この石はちょっと奥行きのある石ですので、やや重みを感じてしまい軽やかさにちょっと欠けてしまいます
 この石は三峰川産(?)の姿石です。はっきりと産地を覚えていないので三峰川産かどうかわかりませんが、とりあえず三峰川産とさせてもらいます。石質はそれほど良いとは言えませんし、形状・川擦れとも良く誰(どの神様)に似ていると言うわけではありませんが、神々しい神仏の姿を連想させる見所を持った石です。全身の動きも良いのですが、特に頭部から上半身にかけての動きが良いです。台座は蓮台に仕上げてありますが、石に比べるとやや重く感じてしまいますので、もう少し全体のバランスを考えて台座を作ると、さらに良くなりそうです

ここから、床の間飾りの部です
 これは会場正面に設えた仮床です。床の間のある和室を使う事ができませんでしたので、今回はこの仮床の2席だけの席飾りになりました
  これは右の席です。三陸海岸産の山型石と軸・添え草の3点飾りとなっています。軸がやや細く小さめなので、ちょっと軸が負けているようにも見えますが、ギリギリ許容範囲内という感じでしょうか

・主石 三陸海岸産山型石(間口約16cm)
・水盤 志那埜庵白釉長方
・卓  花梨平卓
・軸  五重塔
・添え 姫ツルソバ
 これは主石の三陸海岸産の山型石です。海擦れの素晴らしいやや赤みがかかった山型石で、極限まで抽象化された孤峰となっています。この石を長方水盤に据えて花梨製の平卓と取り合わせています。長方水盤の直線とまろやかな石の見付け線とが程良く調和していて良いのですが、厳しく言うと卓がやや広く重く感じてしまい石の軽やかさが表現できていないかなと
 これは軸の五重塔です。水墨で描かれている五重塔で、恐らく京都の北山か東山あたりの風景でしょう。霞んだ山中に浮かぶ五重塔の画題ですので、最初は山型石とではちょっとダブり気味かなとも思ったのですが、席全体から考えますと、それほど違和感も感じませんので大丈夫でしょう
 こちらは左の席です。水無川産(八海山石)の遠山抱湖石と軸・添え草の3点飾りとなっています。石は小振りながらも素晴らしい石ではありますが、一間の席に対してはやや主石が小さめで、石の働きが席全体まで回っていないようにも感じてしまいます。もう一回り大きければ良かったですね

・主石 水無川産遠山抱湖石(間口約13cm)
・水盤 銅楕円水盤
・卓  紫檀透かし卓
・軸  川蝉
・添え 黒軸カリヤス根洗い
 これは主石の水無川産遠山抱湖石です。八海山石で一番質の良い真黒のジャクレ石で、左側にスクッと立ち上がった主峰を持ち、その右側には溜まりを擁しています。時代の乗った銅盤との映りも良いですし、卓との調和も抜群で、三位一体の主飾りになっています
 これは軸の川蝉です。川蝉の画題は柳・フトイ・木杭などと一緒に描かれている事が多く、特に止まって水面を眺めている絵が多いのが特徴です。この絵も水中にいる魚を探している様が良く描かれていて、今にも飛び出しそうな「動き」が感じられます。溜まり・滝・渓流石などと合わせるのに良く使われています

最後に添えに使われた草でも・・・
今回の展示会で使われた添え草の一部をピックアップしてみました
 これらの草物は、コーナー飾りに使われた物や、床の間の飾りの添え草として使われた物、列席の添え草として使われた物です。紹介したものは、初夏の飾りらしく、涼しげな感じを現す山野草が多いのですが、実際には、このような季節の物ばかりではなく、いろいろなバリエーションの山野草が会場を飾っています





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