水石展報告

◆甲府市文化協会水石展
○2007年11月2日(金)〜11月6日(月)
○甲府市総合市民会館 2階 展示室・和室

 今回の展示会は、市内にあり文化協会に加盟している水石愛好家が中心となっている水石展です。初心者からベテランの方までいますので、出品された石や飾りについては玉石混淆なのですが、愛石家同士の交流や情報交換などにも役立っています
 また、景水会が会場設営や運営を行なっているので、今回は、この水石展をレポートをしてみます



最初は、会場入り口飾りと列席飾りです
 
 これは、会場入り口の飾りで、キハギとお地蔵さんです

 会場正面飾りは、軽い盆栽飾りになっています。主木は双幹のキハギで、添えはお地蔵さんです
 これは、主木のキハギです
 普通の盆栽家さんから見ますと、かなり物足りなく見えることと思いますが、これくらい軽い盆栽でなければ水石とは合ってきません
 これは、添えのお地蔵さまです
 古い瓦を、小さなお堂に見立てて、遊び心があって面白いです
   こちらは、ちょっとわかりにくいのですが、会場入り口の飾りです
 会場入り口の飾りは、黒軸カリヤスの根洗いです。思い切り軸を曲げて懸崖風に仕立た根洗いとなっていて、普段はあまり見る事のない草姿ですが、株も極限にまで減らした姿に仕立てて、軽く仕上がっている風情は、水石展示会向けとなっています
 ここから、一般石の列席飾りになります
 これは千葉県にある鴨川産の島型石です。山頂直下に近いところに抜けがあるので、とりあえず島型にしましたが、巣立ちのある独特の肌は、変化があってなかなか面白く、細身の銅盤とも良く合っています
 これは梓川産の岩型石です。石色は茶と白で、見られた方もさほど評価の高い石ではないと思いますが、力強く屹立していながらも、全体のバランスは取れていて、私の好きなタイプの石です。右を少し上げて、斜に構え気味で水盤に据えると引き立つ石だと思います(写真が悪くて白っぽくなってしまいました)
 これは奈良井川産の溜まり石です。まだ石が若いため、やや灰黒状ではありますが、石質も川擦れも良い溜まり石です。左裾が締まり右裾は少々えぐれ気味になっているのも、石の流れを作っていたり、好ましい変化になっています
 これは釜無川産の滝石です。滝を真正面にして飾っていますが、ちょっと右に振ってやりますと、さらに良くなりそうです。ただ、右側が高く厚いのがやや惜しまれる石で、石の振りを直すだけで解決できるものでなく、水盤で左右の沈め方なども調整しながら飾ると良いと思います
 これは北海道の幸太郎石です。やはり山型とも島型ともとれる石で、変化も多く見所の多い石です。幸太郎石の割には白い部分が多いのが惜しまれますが、時代がついてくれば、解決してくれる事でしょう。薄い銅盤にもよく似合っています
 これは梓川産の山型石です。石の正面がジャクレてはいるもののやや平板気味ですので、岩型とも見る事ができます。これを古い信楽の水盤に据えていて、平凡な石ではありますが、道具の取り合わせが非常に良いため、一種の風格が漂っている感じになっています。それでも、やや水盤が小さいかもしれません
 これは京都の鞍馬石の溜まりです。鞍馬石にしては珍しく変化のある石で、加工がされていない初石の珍しい溜まりです。溜まりを擁しているのは良いのですが、溜まりの位置が右寄りで、しかも前後に長いことから、石の形状とのバランスが良くない事がちょっと惜しまれます
 溜まりが左右に広がっていず、前後に広いというケースは良くあり、飾る時に悩む方も多いと思います。溜まり自体が目立つような石でしたら、石に振りをつけて溜まり部分を、やや斜めから見るようにしますと、解決できる場合がありますので、この石も、右を奥に左を少し手前に振って見るようにしますと、この欠点がある程度カバーできると思います
 これは姫川産の滝石です。母岩は紫色をしていて、石灰を噛んでいる石です。石灰の噛み方により梅花石とか梅林石になる石ですが、この石のように石灰分が滝のようになるものもあります。深く穿たれた谷部の奥に滝が流れる風情は何とも言えず奥ゆかしく、普通の滝石とはレベルの違う滝石になっています。錦秋に染まった滝という感じで季節感も抜群ですね
 道具の取り合わせも申し分なく、品格の高い飾りになっています
 これは安倍川産の岩型石です。抜けが面白く、変化の少ない石に良いポイントとなっています。抜けのある位置も良く、なにより丈があることが効いていて、ただ抜けのある石という感じではなく、軽さを持った抜けの石になっているのが良いです
 これは姫川産の山型石です。山の形は半円形に近い珍しい形で、左へ裾が伸びています。本来なら、もう少し左を沈めて飾りたいところです。石色が薄すぎるのもやや気になりますが、もう少し時代をつけたいところです
 これは安部川産の島型石です。写真ではわかりにくいのですが、深い入り江を擁している真黒石で、単調な形状に変化をつけています。浅手の水盤にも良く映っています
 これは佐治川の山型とも島型ともとれる石です。佐治川独特の変化の多い石肌で、佐治川石としては形状に変化が少ない感じの石ではありますが、全体としては大人しい感じの石になっています。水盤が少し深いので、やや厚ぼったさを感じてしまいますので、もう少し浅手のものに飾りますと、さらに石が引き立つものと思われます
 これは桂川の溜まり石です。川擦れの効いた石肌に、浅い溜まりが良く似合っています。写真でもわかると思いますが、右奥が奥へ出っ張っている(逃げている)のがやや惜しいですね
 これは梓川の高溜まり石です。溜まりと言いますと、普通の石に深くて大きな溜まりが良さそうに思いますが、それだけでなく、この石のような高溜まりもなかなか良いものです。ただこの石は、やや奥行きがあるため、軽やかさ感じさせるほどではなく、ちょっと厚ぼったいのですが、前面の変化も石全体に良く調和していて、飽きのこない石になっています
 これは富士川産の紋様石です。紋様石のなかでも一番単純でわかりやすい「一」です(笑)。このような紋様石は、山水景状を楽しむような風情はありませんが、水石に初めて接するような人には、わかりやすい石で、なおかつ字体も力強く表現されているので、このようなさまざまな人が訪れてくる展示会では、良い石だと思います
 これは天竜川産の溜まり石です。石は非常に大きな石で、2尺の水盤でも足りないくらいの大きさです。川擦れの効いた単純な石ではありますが、勝手側、流れ側、あるいは石全体の形状ともバランス良く纏まっていて、無駄が無い良い形状で、溜まりの位置や大きさのバランスも優れています。現在の据え位置では、やや左より気味ですので、もう少し右に据えるとさらに良くなるでしょう
 ここから小品席です

 この石は、犀川産の土破石です。川擦れが効いた土破で、形状もまろやかさがありながらも、まあまあ纏まっています。長方水盤の方が映りが良かったでしょう
 これは奈良井川産の島型石です。海に浮かぶ孤島という感じで、砂との見切り部分が全体に立ち上がっている様は、山型と言うよりは島型と見てみたい石です。石自体は、普通の石ですが、全体の取り合わせが良いので、品が良い飾りになっています
 これは富士川産の小品石です。青石ですが緻密で硬質の石で変化が多く、面白い景をしています。やや奥行きがあり、上から見ますと円形に近い感じがするのですが、大人しいながらも流れはあり、珍しい系統の石ではないでしょうか
 これは釜無川産の滝石です。滝石といっても滝そのものだけを鑑賞するというのではなく、山と滝とを一緒に見る石です。まあ、山型に滝がついているという感じでしょうか。全体としては纏まっていて、渋い感じのする石です
 これは姫川産の山型石です。石質も川擦れも良い石なので、左裾のふくれが目についてしまいます。上の釜無の石のように、左裾が締まっていれば、かなり良い石になったでしょう

最近出品石が増えてきたので、今回から、和室にも仮りの席を作って飾ることになりました
 今までは、和室の床の間だけを使った飾りをしていたのですが、出展者も増えてきた事から、飾る場所を少し増やしてあります。写真でもわかるとおり、和室への登り口 に一席。左右の和室の隅に各一席の計三席を増やしてあります
 急ごしらえの席でしたので、見苦しいところもありますが、そこそこ楽しめたのではないかと思います
 これは和室への登り口に飾られた席です。主石は紫貴船の台座石に草物を添えた2点飾りです。やや早めではありますが、この時期に赤や紫系統の石は良く似合います。これくらいの石でしたら、台座飾りよりも水盤飾りの方が似合いますので、水盤を使って綺麗に飾りますと、さらに良くなったと思います
 これは紫貴船の山型とも島型ともとれる石です。少しくすんだ紫色は紅葉、白く噛んだ石灰分は雪にも見立てることができ、晩秋にはもってこいの石です。景状もなかなか整っていて良い石です
 こちらは右側の和室(本床)に飾られた席です。富士川産の遠山石にハゼを添えた2点飾りです。写真では添えが綺麗に写っていませんが、実際は真っ赤に紅葉した綺麗な葉をしていて、席に華を添えています
 これは主石の富士川石です。総ジャクレで変化の多い遠山で、高さがあまりない遠山ですので、浅い銅盤との映りもなかなか良いです
 これは左側の和室に設えられた席です。主石は釜無産滝石の台座飾りです。こちらは、間口が90cmほどのスペースしかありませんので、水石の単飾りになっています
 谷部が深い滝ではなく、どちらかというと浅く普通の滝ではありますが、出しゃばっていないところが良いかもしれません。据え位置については見事です

ここから、床の間飾りの部です
 これは会場正面に設えた仮床です。ここはいつも私が作っていたのですが、今回は、仕事があって設営に参加する事ができなかったのですが、上手に作られていました
 これは右の席です。釜無川の溜まり石と軸の2点飾りとなっています。軸がやや細く小さめなので、ちょっと軸が負けているようにも見えますが、ギリギリ許容範囲内という感じでしょうか。左の席で添え草を使っていますので、こちらは2点にしてあります
・主石 釜無川産溜まり石(間口約23cm)
・水盤 色丸善楕円
・卓  地板
・軸  モミジ
 これは主石の釜無川産の溜まり石です。高溜まりではありますが、前面の変化が非常に面白く、波に浸食された海岸の絶壁を思い起こすような感じです。水盤はたいへん時代のついた色丸善の水盤で、このボリューム感ある石をしっかりと受け止めているだけでなく、飾りに渋さを加えています
 これは軸のモミジです。幹の感じはモミジではなさそうですが、紅葉したモミジの葉が数枚見え隠れしているのが、何とも言えず良い感じです。幹の感じからしますと、岩場に生えている感じですので、滝石や立ち石の岩型系統の石と合わせると良さそうです
 この席は、会場内に作られた仮床の左側席です
 こちらの飾りは奈良井川産の山型石に、群飛している鶴の軸、菊(種はわかりません)の添えの3点飾りです
・主石 奈良井川石(高さ約25cm)
・水盤 陶翠呂均釉長方水盤
・卓  紫檀透かし足平卓
・軸  群鶴の図 
・添え 菊
 これは主石の奈良井川産の山型石です。呂均釉の水盤と瀟洒な卓と取り合わせていることにより、ただ落ち着いた渋い飾りというだけでなく、全体の配色にも気を配っている事が窺えられます
 写真で見てもわかるとおり、石質も川擦れも良く、何よりも形状が素晴らしく、他を睥睨するような感じを受ける石で圧倒的な存在感を持っています。右に溜まりがありますので、正式には遠山抱湖とも言えそうですが、これくらいの石になりますと、景状を云々するほどではありません
 これは軸の群鶴です。鶴でも丹頂鶴は縁起物と言う事で、正月とかの祝い事の時に良く使われるのですが、実際は一年中普通に生息している野鳥ですので、正月や祝い事限定ではなく、年中使いができる軸です。鶴の軸は、双鶴・群鶴・飛鶴の大きく3種類ありますが、動きがあって小さめに書かれた群鶴や飛鶴などは、水石飾りにも良く合う軸です
 これは添えの菊です。○○○菊という種名があるはずなのですが、私にはわかりません。まあ、いわゆる野菊の仲間でしょう。写真を撮るのが遅れてしまったので、ややしぼみ加減になっているのが、ちょっと残念です
 この席は、和室内にある本床の飾りです
  本床飾りについては、全景と軸の写真を取り忘れてしまいましたので、石の写真の紹介のみとさせていただきます
 この石は、石英の白を噛んだ安倍川の真黒石を加工した石のようです。加工してしまう事は良くありませんが、富士山型の石とか、茅舎などではある程度仕方がない事とされていて、特に富士山型の石については、いわゆる与十郎石みたいな感じになっていて、加工を承知したうえで楽しむ石でしょう
・主石 安倍川石(間口約18cm)
・水盤 志那埜庵白釉長方水盤
・卓  紫檀平卓
・添え ソビ根洗い
 和室琵琶床 全景
こちらは左側にある琵琶床席の飾りです。石は水無川産の山型石で、軸は双鹿図、添えは常葉シノブになっています
 この席は、和室内にある琵琶床の飾りです
こちらは左側にある琵琶床席の飾りです。石は水無川産の山型石で、軸は双鹿図、添えは常葉シノブになっています。琵琶床飾りにおいては、使う事ができる道具や石が限定されてしまいますので、いざ飾ろうとすると、なかなか難しいものです。今回は島型風の山型石に鹿の軸を添え、琵琶床ではシノブが置かれています
・主石 八海山石(間口約23cm)
・水盤 イラボ釉長方水盤
・卓  花梨平卓
・軸  双鹿の図
・添え 常磐シノブ
 これは主石の水無川石です。伊羅保釉の撫で角水盤と平卓と取り合わせてありますが、なかなか渋くて落ち着いた飾りになっています。石は水無川のジャクレには珍しい細かく小さな変化のある石ですが、バランスは取れています。立ち上がりがありますので本来ならば島型として飾る石なのですが、山型としても見る事のできる石です
 軸は秋らしく双鹿の図です。水辺にたたずむ2頭の鹿の図で、秋から冬までの間使うことができる軸で、使い勝手の良さそうな軸です
 添えは常盤シノブです。一昨年の冬にはほとんど枯らしてしまい、ここまで回復してきました。もう少し足が欲しかったのですが、これくらいでもギリギリ使えますので、今回は、この草を使いました

最後に添えに使われた草でも・・・
 今回の展示会で使われた添え草の一部をピックアップしてみました
 これらの草物は、コーナー飾りに使われた物や、床の間の飾りの添え草として使われた物、列席の添え草として使われた物です。紹介したものは、初夏の飾りらしく、涼しげな感じを現す山野草が多いのですが、実際には、このような季節の物ばかりではなく、いろいろなバリエーションの山野草が会場を飾っています





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