水石展報告・・・・・G

◆文化協会水石展
○2006年11月3日(木)〜11月5日(日)
○甲府市総合市民会館 2階 展示室・和室

 今回の展示会は、市内にあり文化協会に加盟している水石愛好家が中心となっている水石展です。初心者からベテランの方までいますので、出品された石や飾りについては玉石混淆なのですが、愛石家同士の交流や情報交換などにも役立っています
 また、景水会が会場設営や運営を行なっているので、私も設営や賛助出品を行なっており、今回は、この水石展をレポートをしてみます  



今回は会場の都合で、入り口飾りはありません。まずは、列席飾りです
 
 これは天竜川産の島型石です。天竜の上流から出る蒼黒ジャクレ石で、稜線の美しさや多彩な見付けの変化が見所で、石自体は横長の石で、構えのない石ではありますが、これくらい変化があるとなかなか良いです
 横長の石を短冊水盤、平卓との取り合わせも良く、飾りとしても良い飾りだと思います
   これは富士川産の紋様石です。月に雁といった感じで、月と飛んでいる鳥が綺麗に出ています。母岩の色調も落ち着いていますし、月や鳥の大きさ・位置も良い場所に出ていて、この時期、ちょうど良い石です
 一見すると、月の大きさが大きいのではと考えてしまいますが、月を愛でるこの時期には、これくらい大きい方がちょうど良く、なかなか良い紋様石です
 これは笛吹川の支流である日川で採石された石です。この川は、甲州鞍馬石の産地で、京都の鞍馬石に似た石が出る川ですが、このような白っぽいジャクレ石も、稀に採石されています。色が白っぽいため、水石には不向きの石ではありますが、この石は、そこそこの時代が付いていますので、鑑賞できる状態になっています
 石は島型ですが、一見すると宝船のようにも見え、台を付け台石として見た方が良いように思えました
 これは姫川産の土破石です。破面が2段あり、それぞれの破面のバランスも良く、石の成りも良いのですが、主峰が手前にあるのが残念な石です。川擦れも良く、破面手前の壁のあり方も抜群なので、なおさら主峰の位置が気になってしまいます
 短冊大撫で角の水盤に据え、平卓と取り合わせてありますが、全体のバランスは良く調和しています
 これは薄根川産の段石です。非常に硬度の高い本真黒の段石で、石質は最高の部類に属し、この石でこれだけ形が出ているのは珍しいと思います
 良く見ると、破面の先端部分もせり出し状になっていて、綺麗に節理が剥がれているのがわかります。綺麗に節理で剥がれていますので、破面もピン直になっていて、清々しく感じるだけでなく、伸びもあり、全面の見付の変化もまずまずで、パッと見は地味に感じるかもしれませんが、なかなか良い石だと思います
 これは梓川の島型石です。島型とも山型ともとれる石なのですが、立ちあがり方を考えると島型といった感じでしょうか
 母岩は白っぽい硬質なジャクレ石なのですが、意外と早く時代も付き、少し茶色くなってくると、それなりの味が出てくる石です。この石も、そこそこ時代が付き、茶色くなってきています。台座を付け、地板と取り合わせてありますが、水盤に飾った方が良い石です。形状は端整な形で、川擦れも良いため、水盤に飾れば、より一層石が引き立ちそうです
 これは非常に川擦れの良い、犀川産の山型石です。すでにかなりの時代が経過しているような石肌で、写真でわかりにくいのですが、味わい深い味をかもし出している石です
 川擦れが良く、主峰の稜線も美しいのですが、主峰手前の厚みが足りないことと、やや腰高なのが残念で、惜しい石です
 これは加茂川の島型石です。巣立ち真黒の変化のある石で、良い位置に凸凹もあり、形状的にはなかなか良い石です。巣立ち真黒にしては珍しく手の入っていない石で、川擦れには乏しいものの、稜線もまあまあ綺麗ですし、見付けの変化も良く、なかなか良い石です
 水盤も珍しい寧窯の水盤で、この真黒石とも良く調和していて、ちょっと卓がごつめではありますが、飾り的にも良い飾りになっています
 これは神居古潭でも珍しい黄金古潭の溜まり石です。写真ではわかりにくいのですが、すでに瑪瑙化しているような石で、硬度が高いうえに、ジャクレの変化もあり、何より川擦れが素晴らしいです
 高溜まりでも、いわゆる天溜まりの形状になっていて、黄金古潭だけでも珍しいのに、形状の面白さも加わっています。また、色調も紅葉を思い起こさせるような感じで、この時期には、良く似合っている、なかなかの石です
 これは富士川産の溜り石です。地元では蒼龍と呼ばれている蒼黒の硬質ジャクレ石で、上部に2つの溜り部分を持つ石です
 蒼龍の中でも、一番質の良い手で、石色や川擦れも良く、また、皮目と肌目もバランスよく出ています。川擦れや石全体の形状も良く、なかなかの良石です。特に落ち口部分は素晴らしく、少し内側に抉りこまれている様な姿は特筆に価するくらい、この石の大きな見所となっています
 ただ、形状から見た石の流れは右から左に流れているのに対し、石の目の流れが奥から左手前に流れてしまっていて、この目の強さが石全体の流れを乱していしまっているのが、非常に惜しいですね。この目がなければ名石となれたかもしれません
 黄釉の水盤と真塗りの地板との取り合わせもまずまずで、良く調和していると思います
 これは釜無川産の滝石です。川擦れは乏しく石肌には、やや荒さは目立つものの、石全体の形状も良く、滝の位置・谷部の具合とも良く、全体としては、まあまあ良い石だと思います。特に、持込の古さ・良さは今回の出品石の中では一番で、時代のある石の良さを感じさせる石です
 台座を付け平卓と取り合わせていますが、卓が低く重い感じを受けてしまうのが、ちょっと惜しいです
 これは富士川産の遠山抱湖石です。この石は、天竜川石でザクロ石などと呼ばれている石と同じで、緑色の母岩に赤が噛んでいる石です。三峰川の源流と富士川(早川)の源流は同じ白根三山ですので、同じ様な石がでます
 綺麗な山容を誇る石ですが、ちょっと腰高なため島型ともとれる石で、湖の湖畔に濃い紅を噛んでいたり、他にもうっすらと紅が浮かんでいるところもあり、今の時期の山とまったく同じに見えるくらいの石で、時期的にはピッタリの石です。また、湖の落ち口も良い位置にあり、このことも好感が持てる良い石だと思います
 これは奈良井川産の溜まり石です。この石は、小品ながらも真黒で、しかもせり出し溜まりになっている、なかなか面白い石です
 溜まりとは言っても、本当にごく僅かしか溜まらない石ではありますが、川擦れは良いし、形状的にも面白いので、飾って活きる石の典型みたいなものです
 これは釜無川産の溜り石です。浅い薄溜りになっていて、石全体の形状や川擦れも良く、なかなか面白い石です
 ただ、釜無川産石の特徴である灰色部分が、ちょっと煩くなっているのが、仕方がない事とはいえちょっと残念です。このような形状がシンプルな石は、できるだけ単色なのが良く、紋様的なものが無いのが望ましいです
 今回は台座での出品ではありますがやはり水盤で見たい石で、高めの卓も、ちょっと似あっていません
 これは姫川産の山型石です。主峰から副峰へ続く稜線が美しく、砂との見付け線も動きと変化がありなかなか良い石です
 特に、右端にある副峰の位置や大きさが抜群に良く、いわゆる「構えの良い」石となっていて、とにかく副峰が効いています
 飾りについても、均釉の水盤と机卓との取り合わせも良く調和していています
 これは富士川産の山型石です。山型石でも、非常に立ちのある屹立した山で、左に緩やかな裾を引いている珍しい形状をした石です
 これくらい立ちのある石になると、なかなか裾を引いた石など無く、良くこの形で残ったものだと感心させる石です。ちょっと右から(勝手側から)の押しが弱いため、石が反っくり返っているように見えるのが惜しいですね。恐らく底の関係からだと思われますが、やはり左をもう少し沈めて見たい石です
 これは釜無川産の山型石です。写真からはわかりにくいと思いますが、意外と擦れの良い石で、単純な山型ではありますが、実物を良く見ていますと、時代がついている関係か、意外と味があります
 また、釜無川特有の石灰を噛んだ部分の白が、新雪にも見え、これもまた面白い要因だと感じました

ここから、床の間飾りの部です
 こちらは、和室の本床における飾りです。釜無川の滝石を主役に、軸が月の図、添えはノジギクの3点飾りです
 滝も秋の主役の一つで、この席は滝石を主役にして飾られています。写真ではわかりにくいと思いますが、軸の題が「深秋の月」という題で、滝石と取り合わせることで、深まりゆく秋を上手に表現されています
 添えのノジギクについては、「なぜ?」と思われる方もいると思いますが、草姿が懸崖になっているためで、滝石と懸崖の草姿が良く調和しています。これだけの本床で、違い棚にもなっていますから、添えの選択は悩むところですが、今回の添えは、わずかに小さめではありますが、まあまあ調和しているのではないでしょうか。ともすれば、違い棚が大きめのため、大き目の添えを置きたくなってしまうのですが、あまり大きな添えですと、主役を食ってしまいますから、これくらいで充分です
 季節感も良いですし、全体のバランスも良い飾りではないかと思います
【席題:深秋】
・主石 釜無川石(間口20cm)
・水盤 九輪緑釉楕円水盤
・卓  斑竹貼り平卓
・軸  深秋図 
・添え ノジギク 
・鉢  和下方鉢
 こちらは、主飾りです。ボリューム感のある滝石で、写真ではわかりにくいのですが、谷の奥行きもあり、落ち口も良く、水勢も豊かで、滝見台までついている、多芸な石です
 少し水盤が浅目なので、石のボリューム感を受け止めらていない感じがしますので、あと1cmほど深いものなら良かったでしょう
 こちらは、軸です。箱書きには「深秋の図」とありました。画題はともかくとして、欠けていく月と少し葉が落ち始めた樹木で、秋を表現されています
 こちらは、和室の琵琶床における飾りです。四万十川の薄溜り石を主役に、軸が美男かずらの図、添えは御堂の3点飾りです
 これは、私の飾りですので、少し詳しく解説する事にします。主石はこの石と決めていました。軸や添えは、本床飾りと、なるべく使うものがダブらないようにしなければならないため、軸は「月」「船」「美男かずら」の3本を持って行き、添えは「紅ちがや根洗い」「御堂」「桟橋」を持って行き、隣の本床の飾りに合わせ、軸と添えを決める事にしました。本床の軸に月が書いてありますので、月の軸は飾れず、船の軸と、紅ちがやを合わせてみたのですが、いざ飾ってみますと、船が少し寒々しい感じを受けてしまい、秋本番には、それほど相応しいものではないように感じてしまい、最終的に、写真のような飾りになりました。美男かずらは、時期的には少し遅めなのですが、ここは少し我慢という感じです
 静かで大人しい平溜り石ですので、御堂の添えを取り合わせることにより、静寂な秋の泉をイメージできるような飾りにしてみました。自分で言うのも何なのですが、季節感もまあまあですし、席全体の調和や雰囲気も良い飾りになっているのではないかと思います
【席題:静泉】
・主石 水無川石(間口26cm)
・水盤 峯雲銅地紋水盤
・卓  正明作紫檀平卓
・軸  美男葛図
・添え 鋳物製御堂
 これは主飾りです。川擦れの良い真黒の平溜まり石ですので、薄い水盤でないと合わないため、この水盤を使い、琵琶床になっているため、中卓や地板は合わないので、シンプルな平卓を取り合わせてあります
 これは、軸です。野外でもすでに美男葛は色づき始めていますので、時期的には少し遅めかもしれませんが、まあ、ギリギリ大丈夫かなという感じです
 これは、添えの御堂です。鋳物製の御堂で、琵琶床に対して少し小さめに感じるかもしれませんが、これくらいでも大丈夫な範疇ですが、もう一回りほど大きい方が、さらに良いのですが、一品ものなので、こればかりは、仕方がありません

文化協会創立30周年記念という事で、特別展示が行われました
 こちらは、特別飾り席です。安倍川紫晃の滝石を主役に、軸が月に雁の図、添えにクラマシダの3点飾りです
 席主は、普段は軽やかな飾りが得意な方なのですが、今回は、ちょっと重く鈍重な飾りになってしまいました。特に、水盤の厚みと卓の鈍重さが、飾り全体のイメージを決めてしまい、席主お得意の軽やかな飾りではありませんが、紫がかかった紫晃石独特の石色は、紅葉をイメージさせますし、雁行の姿も今の季節にピッタリで、季節感は非常に良い飾りになっています。水盤と卓を代えれば、もっと良い飾りになったと思います
【席題:無題】
・主石 安倍川石(間口16cm)
・水盤 志茄埜庵緑釉長方水盤
・地板 紫檀四方回し中卓
・軸  月に雁の図
・添え クラマシダ
・鉢  和丸鉢
 これが、主飾りです。安倍川の紫晃石で、紫がかかった母岩を紅葉に見立てて飾っているようですが、水盤と卓が、ちょっと重めになってしまいました
 これは、月に雁の軸です。そろそろシベリアから雁(ガン)達が渡ってくる便りが聞かれる時期になりましたので、季節感はピッタリです
 この飾りは、もう一席の特別飾り席です
 川擦れの効いた遠山抱湖を主石に、軸は五重の塔、添えにはハゼの双幹の3点飾りです。パッと見た目でも、品格を感じさせるだけでなく、部分部分を見ても素晴らしく、変化と調和がとれた良い飾りです。一品一品が良いだけでなく、飾り全体も調和している事が重要であることが、この飾りを見ると、良く表現されているように思います
 石・水盤・卓との調和、主飾り・軸・添えとの調和、「動き」が少ない渋さを感じさせる落ち着いた飾りです
・主石 奈良井川石(間口24cm)
・水盤 新天地銅地紋長方水盤
・卓  寿山作紫檀鰭飾り付き中卓
・軸  三重塔図
・添え ハゼ
・鉢  蕎麦釉六角鉢
 これは、主飾りです。川擦れの良い真黒石でありながら、遠山抱湖の形が出来ているのには驚かされます。それに、水盤と卓との取り合わせも絶妙で、三位一体で品格のある主飾りです
これは、三重塔の軸です。三重塔と書きながら、最初は五重塔だとばかり思っていたのですが、良く見ると三重塔でした。パッと見た目は五重塔に見えてしまいます(笑)
 最後に、会場の様子を・・・
 いつもは、この部屋全部を使うのですが、今回は片面しか使うことができず、仕方がなく鍵の手状に席を作って飾りました。そのため、展示席数も、例年より少なく、良い石も少なかったので、少し寂しかったです

最後に添えに使われた草でも・・・
 今回の展示会で使われた添え草の一部をピックアップしてみました
 これらの草物は、コーナー飾りに使われた物や、床の間の飾りの添え草として使われた物、列席の添え草として使われた物です。紹介したものは、秋飾りらしく、秋の花や紅葉物などの季節を現わすような山野草が多いのですが、実際には、このような季節の物ばかりではなく、いろいろなバリエーションの山野草が会場を飾っています





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