水石展報告・・・・・F

◆景水会水石展
○2006年3月18日(土)〜3月20日(月)
○甲府市総合市民会館 2階 展示室・和室

 今回は、景水会主催の水石展の様子をアップします
 今回の展示会は、景水会主催の水石展の開催報告です。今までは、5月〜7月に開催していたのですが、たまには春先にも展示会を行おうということで、この時期に設定され、開催されました。初心者からベテランの方までいますので、出品された石や飾りについては玉石混淆なのですが、この展示会の様子をレポートしてみます 



最初は、会場入り口飾りと列席飾りです
 
 これは、会場入り口の飾りです
 主木は、西洋カマツカの根洗いの単飾りです
   これが主木の西洋カマツカです。この木は、寄せ植えにされているものが多く見られ、実成りの風情を楽しむのが一般的です。今回の席主は、この種を写真のような寄せ植えに仕立てて、洒落た陶板に乗せての根洗い飾りです。細身のものを寄せ植えにし、実成りの風情を軽く楽しむというのが、本種の見所だと思っていたのですが、この木は、中心の主木はおろかヒコバエの寄せさえも、針金でわざと真っ直ぐに強制され、一風変わった寄せ植えになっています。また、幹を真っ直ぐにされているだけでなく、すべての枝も剪定され、ただの幹だけで構成されているという珍しい寄せ植えとなっています
 これは、会場内の入り口にしつらえた飾りです。中には手水鉢が入れてあり、「浄め所」となっています
 ここから、一般石の列席飾りになります
 これは揖斐川産の紋様石です。綺麗な山から登ってくる満月の風情が楽しめる紋様石です。惜しいのは山の部分の左側に欠けが見られることで、これがなければ、かなり良い石になったことでしょう
 それと、石自体が左への流れを強く感じてしまいますので、台座を付ける時も、右側を少し沈め気味にして作ると、欠点が少しでも解消されて良くなると思います
 これは釜無川産の段石です。写真ではわかりにくいのですが、天破に大きな段があり、その手前に小さな段があります。段石の条件は、スパッと切ったような平らな破面にあり、この石は、見事にその条件を満たしています。目通しの石の形状も良いです
 これは富士川産の滝石です。屹立した岩場から流れ落ち、滝の流れも落ち口から徐々に広がり、良い景色になっています。ただ、全体の形状がもう一歩で、特に左裾の出っ張りが大きな欠点になってしまっています
  これは早川(富士川)産の滝石です。全体の形状も良く、流れ落ちる滝の様もなかなか良く、見所になっています。写真ではわかりにくいのですが、谷部も抉られていて、良い景色となっています。飾りも良いですね
 これは富士川産の山型石です。いわゆる二山型の山型石となっていて、主峰の形状が面白く、二山型も非常に良いのですが、正面にもう少し芸が欲しいところです
 これは安倍川産の岩型石です。いわゆる「抜け」のある石で、この石の大きな見所になっています。全体の形状も良く、抜けの位置・大きさも丁度良く、なかなか良い石です。薄めの水盤との取り合わせも、この石を良く引き立たせています
 これは三陸海岸産の平土破石です。流れ側の左端がせり出しになっているところが、この石の見所でしょうか。破面はなだらかな起伏があり、石質はやや良くないのですが、大人しいなかににも動きのある平土破で、やや細長のため、短冊形の水盤が似合いそうな石です。銅水盤に平卓との映りも、まあまあ良いです
 これは千仏産の島型(山型)石です。千仏には珍しく石灰部分がたくさん噛んでいて、その様が残雪にも見え、この時期の季節感は抜群です。石灰部分がこれほど残っているのは、川の中で洗われている時間が少ないという事で、石が多少荒いのが惜しまれます。物凄い川擦れをしながら石灰部分がこれほど残るのはありえなさそうなので、これはこれで、仕方がありません。水盤や卓との映りも良いです
 これは笛吹川産の舟形石です。いわゆる「舟形溜まり」の形状をしていて、舳先と艫の反り具合・溜まりの位置や大きさのバランスとも良く、春先の展示会に一席は欲しいところです。短冊水盤に地板との映りも良いのですが、石の色と水盤の色が茶色どおしで似通ってしまいました
 これは富士川産の紋様石です。上と左の石は魚で、右下の石は金魚のようです。春先になると、そろそろ魚も動き出しますので、このような紋様石もなかなか良いものです(金魚はイマイチかな)。特に、魚の石については、どちらの石も魚の紋様の出方や位置、母岩や紋様の色も良く、単品で充分鑑賞できる石だと思います
 飾りについては、やはり卓が小さすぎます。これですと、飾ってあるというよりも、ただの陳列になってしまいます
 これは富士川産の山型石です。右側に屹立した主峰があり、左方向へ緩やかに流れる稜線も流麗ですし、小さな止めの山も良く効いています。水盤(銅盤)がちょっと浅めのような感じもしますが、石・飾りともそこそこ纏まって良いです。ただ、ボリュームがある石ですので、もう少し広めの卓を使うと、さらに良くなるように思います
 これは犀川産の山型石です。左右の稜線のまろやかで微妙な流れも良いし、川擦れも効いて味のある石になっています。頭部分(山頂)がちょと重いのが惜しいです
 これは釜無川産の山型石です。単峰の省略された単純な山型ではありますが、主峰の位置も良く、稜線左からの押し具合と右稜線の引き具合も良く纏まっている石です。台座で飾られていましたが、ちょっと卓が大きくて強くなってしまっている感じが惜しいです
 これは利根川の山型石です。上記の釜無川石と同じような感じの石で、こちらの石は、ちょっと直線部分があるように感じられ、滑らかさにかけるきらいはあるようです。利根川には珍しく石肌に細かい変化を持つ石で、もう少し養石すれば雅味ある石になりそうです。砂の色と水盤の色とが同じような感じになってしまい、ちょっとぼやけてしまっているのが惜しいです
 これは神居古潭の山型石です。主峰の位置からすると、もう少し右からの押しが少し弱い感じがしますので、もう少し左を沈めて水盤に据えると、グッと良くなる感じです
 飾りについては、台子を利用して、薄い緑釉の水盤との取り合わせも春らしさを感じるし、色彩的なバランスも良いです
 これは揖斐川の島型石です。石が大きいため木材で水盤が作ってあり、透かし卓に乗せられています。石自体は揖斐の青石(蓬石)で、非常に変化のある島型となっていて、見切り線の変化も良く、なかなか見ごたえのある石となっています。ただ、手作り水盤との相性には、かなり疑問を感じてしまいます。卓も小さすぎるため、これでは、ただ置いてあるだけにしか見えず、大きなマイナスになってしまいます。これくらいの大きなものであれば、地板に乗せる方がまだ良かったですね
 これは水無川(八海山)産の岩型石です。写真ではわからないのですが、奥の岩の手前に溜まりもあり、なかなか良い石です
 時代がのった白磁水盤と卓の映りも良く、良い飾りになっています
 これは釜無川の山型石です。屹立とした山型石で、私の好きな石です(笑)。今回の水石展では、丈のある石が多かったのですが、その中でもピカイチに高さを感じさせる石で、なかなか面白い石です
 水盤と卓との取り合わせも抜群に良く、石自体も良いのですが、飾りも良いので、石がより活きていることがわかります。ちなみに、この変わった水盤は古信楽(明治・大正期くらい)の水盤です
 これは富士川産の溜り石です。石英部分が多いため、採石仕立ての頃は白っぽく、なかなか鑑賞に堪えないのですが、この石は時代も乗っていて、石英部分の輝きも失せ、なかなか渋い趣になっています。石の形状については、全体の変化具合もバランス良くまとまっていますし、溜まりの位置や見付け線変化も良く、なかなか良い石で外縁の銅盤との写りは良いのですが、石の据え位置・卓とのバランスには一考を要する飾りです
 これは富士川産の石です。パッと見た目は茅舎に見えてしまう石なのですが、席主はどのように思ってこの石を飾ったのでしょうか?・・・聞くのを忘れてしまったので、真意はわからないのですが、岩型とでもみているのでしょうか??
 これは釜無川産の高溜り石です。流れ側の左部分のせり出し具合は良く、川擦れもあり面白い石なのですが、もう少し勝手側上部にボリュームが欲しいところです。石と水盤とのバランスは良いので、もう少し大きめの卓を使うとさらに良くなるように思います
 これは富士川産の山型石です。上の石よりも硬度の面でちょっと劣る石ですが、主峰・左右の稜線の動きとも良く、主峰の右側にあるジャクレの谷部が大きな見所となっています。台座石として出品されていますが、この石は、台座より水盤の方が活きてくる石です
 ここから小品石の部です
 これは奈良井川産の平溜まり石です。母岩の形状も素晴らしく、溜まりの位置や大きさなどのバランスも抜群です。ありそうでなかなか無い石です
 水盤・卓との映りも良いです
 これは富士川産の梅花石です。紫の母岩の色に白い石英分で幹・枝・花が見事に表現されています。3月末開催の展示会という事で、時期的には遅れてしまっていますが、梅花石としては、なかなかの良石で、なんともいえない風情があります
 これは佐治川産の岩型石です。鉄分が多い石らしく、景状はそれほどではありませんが、錆が浮いている石肌は古色も窺え、紫泥水盤と取り合わせてあり、渋い飾りになっています
 これは釜無川産の溜まり石です。小品ながらせり出している形状や見付けの変化も良く、景色豊かな石となっています 
 たまには会場の風景を
 飾り付けが終わった会場です。入り口から奥の方を見た様子で、奥に仮床の間が二席見えます
 こちらは、奥原入り口側を見た様子です。左に受付があり、右奥が小品石のコーナーになっています

ここから、床の間飾りの部です
 最初は、会場正面の仮床の様子です。右側の席には右勝手の石を飾り、左側には左勝手の石を飾る様にして、コーナーを一体化させます
 この席は、会場内に作られた仮床の右側席です
 この飾りは、奈良井川産の山型石を主役にし、鐘突き堂の図の軸と丹頂草の添えによる3点飾りになっています。シンプルな山型石に吊り灯篭を取り合わせることにより景色感を出し、添え草の丹頂草で季節感を出している席です
・主石 奈良井川石(間口13cm)
・水盤 志茄埜庵白釉長方水盤
・卓  紫檀金具付き天拝卓
・軸  鐘突き堂 厚一画
・添え 丹頂草 
・鉢  ソバ釉丸鉢 忍作
 これは主石です。川擦れの良い山型石で、主峰の位置・左右稜線の流れも良く、草体の山型石となっています。ただ、石色が錆びた茶色の部分があり、秋の紅葉と見られてしまう可能性があります。錆の部分を朝焼け・夕焼けと見ることもできるのですが、それには、朝焼けや夕焼けを感じさせることが必要になるのですが・・・。今回の場合は、朝・夕の景色を感じるのには、ちょっと難しいからか、席主も途中から残雪の遠山に石を変更していました
 これは軸です。厚一作で画題は鐘突き堂の図となっています。季節が無い軸ですので、四季を通じて使える内容なのですが、神仏の関係ですので、ちょっと格を付けたい時に合わせると良いかもしれません。厚一とありますが、奥村厚一ではなく、岐阜の画家さんです
 この席は、会場内に作られた仮床の左側席です
 この飾りは、水無川(八海山)産の茅舎石を主役にし、猫柳に小禽(ジョウビタキ)の図でを取り合わせた2点飾りです。右の席に添え草が使われていたり、軸に季節感がありますので、こちらは、シンプルな2点飾りになっています。また、茅舎に猫柳の取り合わせという事で、のどかな田園風景を連想させるものになっています。この飾りでは、軸が季節感があるものを使ってあるので、季節感を感じにくい山野草を使っても問題ないのですが、並んだ2席に同じように添え草があるのも煩わしいもので、左右どちらかの席に一つのみということに、極力努めるようにしています。そうすれば、見栄えもしつこくないし、動きや変化も感じられ、会場の見た目も良くなります
・主石 水無川石(間口29cm)
・地板 紫檀地板
・軸  柳に小禽図 中澤一僑画
 これは主石です。八海山石独特のジャクレと石肌があり、かなり大型の茅舎石になっています。軒の出などは崩れかけの廃屋を思わせるようで良いのですが、屋根より下の部分がやや小振りのため、少々頭でっかちに感じられてしまいます。これくらい大型の石になると、一間床(180cm)でちょうど良いか、やや大きめかなという感じですが、充分許容範囲内です
 これは軸です。花が咲き始めた柳に小禽(ジョウビタキ)が止まっている図となっていて、この時期にはピッタリの画題です。この時期には抜群の画題ではありますが、逆を考えると、この時期以外では使えない軸となってしまい、なかなか難しいものです
 この席は、和室内にある本床の飾りです
 この飾りは、梓川産の溜まり石を主役にし、雁の図の軸と洋種のイグサを添え草にした3点飾りとなっています。水辺の景色が上手に演出されています
・主石 梓川石(間口約30cm)
・水盤 銅楕円水盤
・地板 杉地板
・添え 洋種イ草
・鉢  和瑠璃釉丸鉢
 これは主石です。梓川でも硬質の石で、大きなジャクレができるのが特色の石です。この石は、大きな溜りが穿たれています。一合以上は入るかなり大きな溜りで、大きな見所になっています。また、そのわりに形状もシンプルなのが印象に残ります。水盤が、やや窮屈目で、許容範囲内ではありますが、もう一回り大きければ、さらに良かったでしょう
 これは軸の雁図です。雁が沼か田んぼに舞い降りるという画題であります。雁は冬に日本に渡ってきて、春になるとシベリアに戻っていく白鳥みたいなもので、冬の画題となっています。ですから、正式には、春先に雁の図ではちょっと遅めなのかもしれません。飛翔している図であれば、帰雁の図で良いのですが、これは、舞い降りる図ですので、本来は秋から冬になります
 普通、あまりここまでこだわらなくても良いと思いますが、正式に知っていた方が良いかなと・・・
 これは添えの洋種のイ草です。これだけシンプルな天突き物であれば、もう少し浅い鉢に植えると、さらに映えるでしょう。ちょっと鉢が厚かったでしょうか
 雁の軸により季節感は出ていますので、季節感を感じにくい物を添えに使ってあります
 この席は、和室内にある琵琶床の飾りです
 この飾りは、奈良井川産の山型石を主役にし、軸には朧月に散り桜、添え草は半懸崖のコメツツジの3点飾りです。琵琶床飾りにおいては、琵琶床の高さがあることから、これと調和させなければならないため、卓の高さの選択が重要になってきます(すでに書いているかもしれませんが・・・)。地板や薄平卓のようなものでは低すぎてバランスが悪く、かといって膝が入るような中卓では、高すぎて琵琶床と釣り合わず、琵琶床の半分かちょっと低いくらいのものがバランス的にちょうど良いです。今回使われている卓も程良い高さであるだけでなく、作りも非常に良いため、石を引き立たせています
・主石 奈良井川石(間口16cm)
・水盤 陶翠外縁緑釉額入り長方水盤
・卓  紫檀鰭飾り柘植象眼卓(名品です)
・軸  朧月に散り桜の図
・添え コメツツジ
・鉢  和白釉懸崖鉢
 これは主石です。奈良井川産の川擦れの効いた山型で、全体の形状・バランスとも良く、時代感があるのも非常に好ましい一石となっています
 これは軸です。桜が咲く前に散り桜と、季節の先取りを行っています。季節の先取りは、10日〜2週間が目安となっていますので、桜は開花から散り出すのに10日ほど要しますので、咲き出す少し前に飾る(鑑賞する)のがベストです。そんなこともあり、この軸も時期的にはピッタリですね
 これは添えのコメツツジです。一般に添えというと山野草が中心になりますが、このような樹でも、添え草として使うことができます。あまり太くてボテッとした物では良くなく、細幹の優しい樹で全体の雰囲気に調和する物であればOKです
 この飾りの場合も、軸の散り桜で季節感は出ていますので、季節感を感じさせないコメツツジが使ってあります(花があるとダメですね)

最後に添えに使われた草でも・・・
今回の展示会で使われた添え草の一部をピックアップしてみました
 これらの草物は、コーナー飾りに使われた物や、床の間の飾りの添え草として使われた物、列席の添え草として使われた物です。紹介したものは、秋飾りらしく、秋の花や紅葉物などの季節を現わすような山野草が多いのですが、実際には、このような季節の物ばかりではなく、いろいろなバリエーションの山野草が会場を飾っています





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