水石展報告・・・・・E

◆甲府市文化祭(文化協会水石部水石展)
○2005年10月28日(金)〜10月30日(日)
○甲府市総合市民会館 2階 展示室・和室

 今回は、甲府市文化協会主催の水石展の様子をアップします
 今回の展示会は、市内にあり文化協会に加盟している水石愛好家が中心となっている水石展です。初心者からベテランの方までいますので、出品された石や飾りについては玉石混淆なのですが、愛石家同士の交流や情報交換などにも役立っています
 また、景水会が会場設営や運営を行なっているので、私も設営や賛助出品を行なっており、今回は、この水石展をレポートをしてみます



最初は、会場入り口飾りと列席飾りです
 
  これは、会場入り口の飾りです
 主草はススキで添えには真鍮製夫婦鹿の2点飾りです。良くありそうな飾りではありますが、季節感も良いし、主草の鉢が陣笠タイプで、主草との形のバランスも良く品のあるものになっていて良いと思います
   これが主草のイトススキです。写真ではわかりにくいのですが、不要な軸や葉も綺麗に整理され充分手入れも行き届いています。また、陣笠タイプの鉢との取り合わせもバランスが良いだけでな上品さも醸し出していて、好感が持てます
 いわゆる夫婦鹿の置物です。銅製ではなく真鍮製の添配ではありますが、時代がついているため安っぽさも感じさせず、季節感も充分あります
 この石は釜無川で採石された高土破石です。石全体の形状としては、取り立てて良いというわけではありませんが、変わった景をした高土破石です。水盤・卓との取り合わせもまあまあ良い感じです
 この石は、犀川で採石された土破石です。主峰の形状・山と土破面の広さとのバランス・石の高低のバランス・川擦れも良い石です
 この写真は、少し上から(とは言っても、実際に現場で鑑賞するよりも少し低い位置で、本来はもう少し高い位置から鑑賞します)見た写真です。この写真から見てもわかるとおり、石自体は、文句がつけようのない石なのですが、水盤が奥行きのある水盤に飾ってあるため、前後の間(ま)があまりにあき過ぎてしまい、飾りとしてはちょっと減点せざるを得ない飾りになってしまいました。短冊などの細身の水盤に飾れば、観賞価値は大きく上がることでしょう
 これは奈良井川の平溜まり石で、長方水盤に地板で飾られています。シンプルな平溜まり石ではありますが、石全体の形状は申し分なく、溜まりの大きさや位置も絶妙、川擦れもそこそこ良く、景趣豊かな良い石です
 この石は抜けを持った八瀬の巣立ち真黒石で、古い韓国製の銅盤に据えてあります。ちょっと窮屈気味ではありますが、この手の景を持つ石では、ギリギリ許容範囲といったところでしょうか。近年、韓国製の銅盤には使えるもの(形や作りが良くなってきた)が安価に出回りはじめてきたので、これらを使うのも良いかもしれません
 この石は、釜無川の立ち石です。真ん中に見える縦の筋を滝に見立てて抽象的な滝石と見るか、人物と見立てるのか意見が分かれそうな石です。ほとんどの人が人物と見立てていましたが、私は滝石と見立てました。席主に聞くのを忘れてしまったので、どちらかは不明のままです。飾りを見てみると明らかに卓が強すぎでバランスを崩してしまっています。これくらいのボリュームの石では、3〜4回りほど小さな卓でないといけません
  これは奈良井川の高土破石で、泥物の楕円水盤と天拝卓を使い飾られています。石については、真黒で川擦れの良く効いた石で、シンプルな石ではありますが、石の色や形状も良く、なかなか面白い石です。奥に控える山がちょっと長すぎるのが残念と言えば残念なのですが、こればかりは仕方がないことです(かといって悪い石ではありませんよ)
 このようなシンプルな石ほど、石だけで見せる事は難しく、飾りの技術が物をいう石でもあります。この石は土破でもあり、土破石は破面だけでなく、破面の後ろに何もなくて見通せる事が大きなポイントの一つでもあります。前述したように、後ろに控えている山がかなり左にまで延びていて、それがこの石の唯一の欠点でもあります。ですから、この石は、少しでも破面の広がりを見せるという事と、控えの山を少しでも小さく見せると言う事が必要で、そのために、石の振りを、右を手前に、左を少し奥に振る事により、この石の持つ欠点を減らし、良い点を増幅させるという一石二鳥の効果を得ることができます。そうして、川擦れの良いシンプルな形を活かす為にも、すっきりとした水盤に飾ってやれば、さらに良い飾りに変身できるのではないかと思います(現状では、雲足と卓の足がちょっと強めすぎるかな)。個人的には、飾ってみたい石のNO.1です
 この写真は、角度を変えて写したものです。右の写真は、席主が飾ったものをそのまま正面から写したもので、左の写真は、少し左に回りこんで写したものです。左の写真の方が、奥の山が短くなり、破面も活きてきて、石の格が2段ほど上がるように思えます。この石のように微妙な芸を持つ石ほど、飾る角度により石の死活がかかわってきますので、充分注意したいところです
 この石は水無川で採石された八海山の溜まり石です。破面が広がり、その先端部分に溜まりがあるという形状をしています。石全体としては、三角形の形状をしており、三角の先端部分に溜まりがあるという感じです。この石も、石の据え位置にちょっと問題があるように思われます。このような石の場合、見所である溜まりの部分を斜めに見るのではなく、石の振りを直して正面から見るようにすれば、さらに良くなるはずです。ですから、この石は右を奥に、左を手前に振り直すことにより、石も良く見えるようになり水盤ともバランスがとれ良い飾りになると思います
 この石は奈良井川で採石された山型石です。丈のある山型で小さな控えをも持ち、なかなか形姿の良い石です。写真ではわかりにくいのですが、良く見るとコケもうっすらとのってきているのを見ると、柔らかい質のようにも感じますが、実際は硬度も高く梓川としては良質な石です
 飾りについては、石のボリュームを受け止めるためにやや深めの水盤が使われてはいるのですが、石のボリュームを受け止め調和させるのにはちょっと弱すぎでしょうか。この大きさであるのならもう少し深めの水盤に変えるか、深さが同じなら、もう少し広めの水盤に飾れば、この石はさらに活きてくるでしょう
 ちなみに、この石が今回の文化祭賞を受賞しました
 この石は、笛吹川の舟形石です。石質は硬質の花崗岩で、鞍馬石と同質のものです。いわゆる「ソゲ石」なのですが、全体の形姿も抜群に良く、個人的には、欲しい石です(笑)
 この石は釜無川の滝石です。写真ではわかりにくいのですが、石全体の形状は左側が厚く(ボリュームがある)、左勝手の石ですが、写真の様に滝を正面に飾ってあります。滝石ですから滝を正面に飾りたい気持ちはわからないのではないのですが、石の形状(勝手)を無視してまで、滝を正面に向けることはありません。台座石であっても、やはり石の形状(勝手等)成りに正面を決めなければなりません。この石も、据え位置を変える(右をもう少し奥にする)だけで、今よりも石が活きてくるでしょう
 この石は富士川で採石された島型石です。富士川でも珍しくなってしまった虎溪石とい質の石で、硬度が高く鉄分を多く含んでいる特徴があります。この石ももう少し持ち込んでくると鉄錆が浮いてきて寂びた感じの渋い石になります。石としては、全体の形状も良く、川擦れも良くなかなかの良い石です。ただ、良い溜まりを擁しているのにもかかわらず、石が少し沈め気味に据えられるところがちょっと気になります。溜まりの底部分が水盤の砂よりも上にくるように据えたほうが違和感無く観賞できて良いのではないかと思いました
 この石は、釜無川の滝石(岩型石)です。深く穿たれた数条の谷があり、右側の谷には滝が見えます。川擦れが良いので、滝を現す石灰岩部分もかなり少なくなってしまっています。そのことは、滝としての魅力は半減してしまってはいますが、谷を深く削ることにより谷の厳しさを増し、山岳の岩型としては一級品の景になっています。飾りについても、前述の滝石とは違い、勝手の右側を少し手前に出し、キチンと正面が決めて据えられているのも好感度が高いですね。欲を言えば卓を吟味して欲しいくらいでしょうか
 これは富士川の文様石(梅花)です。梅花で有名なのは空知梅花・秩父梅花・勝浦川梅花・門司梅花とかが知られているのですが、梅花で重要なことは、花の美しさもさることながら、幹や枝の配置と花の位置などの全体のバランスです。梅花と呼ばれているさまざまな石を見ても、バランスの良くないものばかりではなく、ひどいものは枝や幹の無いものがあったりするものもあるのが現状です。本当に良い梅花とは、少しうねりのある幹に、真っ直ぐ伸びた小枝を持ち、適量の花を咲かせ、いかにも野に咲く野梅の風情を感じるような文様の物で、それらがバランスよく配置されていることが必要なのです。欲を言えば、その上に石質と石色が良ければ文句無しというところでしょうか
 そのような観点でこの石を見てみますと、幹は立ち上がりも良いし、適度の「ゆすり」もあり、二股に分岐はしていますが、これは特に問題とされません。ですから幹は合格でしょう。小枝については、ほとんどありませんから、これはマイナスになります。適度な数の花については、これもかなり多目ではありますが、花盛りの最盛期であれば、このようにも見えますので、特に大きなマイナスと考えなくても良いでしょう。ただし、このことは、花盛りである2月下旬くらいの景色ですから、11月に飾るのにはちょっと無理があるかもしれません
 この石は梓川の島型石です。前述の文化祭賞を受賞した梓川石と同質の石です。主峰も張りがあり良く、左右の稜線の流れも美しく、また正面の砂との見切り線の出入りも動きを感じさせ、全体として纏まりがありバランスもほど良くとれています。写真ではわかりにくいのですが、石が少し後ろに反っているのが残念で、もう少し前に起こして飾れば完璧でした
 ここで取り上げる予定はなかったのですが、少し前に台座の話が出たついでに取り上げることにします。台座のコンテンツをお読みになり、すでにお分かりの方は分かっていると思いますが、この石は、台座が無い状態の石そのままで茅舎が完成している石ですので、このような石と一体化したような台座では、どうしても腰高感を受けてしまいますので、台座を作る場合には、特に注意が必要です
 この石は梓川の山型石です。写真ではわかりにくいと思いますが、幅が45cmを超えるような大型の台座石です。写真で見てもわかるとおり、石も古く時代感も抜群で、左の山が高い逆勝手の山型です。写真だけ見ていると、可もなく不可もなくという石に見えますが、実際に実物を目の前にしますと、石が大きいので迫力を感じることはできるのですが、石の芸が少ないので、ボリューム感は感じても、なかなか石の良さを感じることはできません。この石が幅10cmくらいの小品石ならば、別にどおってことないのでしょうが、45cmを超えるような大型石ですので、芸の少なさが大きなマイナス要因となってきます
 つまり、大型の石ほど多芸で見所が少ないと鑑賞上不利に働いてしまいますので、この点も展示会などでは注意することが大事です

ここから、床の間飾りの部です
 こちらは、展示会場正面にある仮床の右側の飾りです
 天竜川島型石を主石にした3点飾りです。時代のある石で、山・入り江・溜りなどをバランスよく備えていて、皮目と肌目のバランスも良く、細身ではありますがなかなかの良石です。これを短冊の長方水盤に据え、真塗りの透かし卓と取り合わせてあります。軸はアトリの図で、添えにはヤマラッキョウが合わせられた飾りになっています
 余談ではありますが、石も良いし、まとまりのある良い飾りなのに、鑑賞に来られた盆栽グループからは「悠さん。この飾りでは、添えが大きすぎてダメですよね?」と言われてしまいました。まさか、この飾りを見てケチをつけられようとは思ってもいなかったので、ちょっとビックリしました(笑)。良い物は良いということをキチンと身につけないと力はつきませんのでご注意ください
 これが主石です。石もさることながら短冊水盤や卓との調和も見事です。これしか言いようがありません
 こちらは、展示会場正面にある仮床の左側の飾りです
 山型の竜眼石を主役とした2点飾りになっています。この石は、山型ではありますが、稜線の具合がイマイチという感じで、石全体の形だけ見ると右勝手にみえますが、主峰の傾きは右勝手になっていて、飾るのに難しい石となっています。席主は石の形姿を重んじ左勝手に据えていますが、これはこれでまったく問題なく、私も左勝手に据えると思います
 この石を大撫で角の水盤・半竹の平卓と取り合わせ、軸は鹿の軸の2点飾りとなっています。飾りとしては、季節感もあり、ボリューム感・色彩感ともバランスが取れていて良い飾りではないでしょうか
 これが主石です。こうして拡大して見ると、やはり主峰の傾きがちょっと気になります。石の根を見てみますと、これ以上左を浮かして据えることはできませんので、右側をもう少し沈めたいところです。席主もまったく考えは同じでしたが、残念ながらこれ以上沈めて据えることができないということでした。仕方がないので、これは我慢するしかありません
 これは軸です。夫婦鹿の絵柄で、あまり動きは感じられないのですが、落ち着きのある絵で、いろいろなタイプの石に合いそうな絵柄でもあります
 こちらは、陶板付けをしてある草物を主役にした飾りになっています。軸はトンボです。本来は水石の展示会でありますので、主役か添えにでも水石を用いたいところで、水石を使っていない飾りでは、やはり良くないように思いますが。会場の入り口などで、来客を向かえるような場合は、季節の盆栽や山野草で迎える事はかまわないのですが、会場内において、水石を用いないのは、あまり歓迎されるものではありません
 そうはいっても、飾られてしまったので、感想を少し書いてみます。この席では、山野草の寄せ植えが主役に使われているのですが、いくら寄せ植えだからといっても、必ず主役がなくてはなりません。『他の物を添える』ということは、軸や添配を添えるのと同じで、あくまでも『主役を引き立たせるため』にあります。今回の寄せ植え作品には、どう見ても肝心の主役が不在状態としか思われず、ちょっと散漫な作品になってしまっています。寄せ植えとは、やはり主役が厳然とあって、それらを引き立たせる事ができる他者が寄せてあり、それらが渾然一体となって作品となっている事が望ましいと考えています
 飾りについては、トンボの軸とは季節感が調和していて良いと思います
 これが主草です。いろいろな山野草が寄せてある根洗いで、薄い陶板に乗せられています。陶板も形・釉薬とも良く、草の姿も悪くないのですが、前記のように主役の根洗いに主になる草がありません。一種(単独種)による根洗いなら良いのですが、数種類の寄せ植えにおいては、やはり主役となりうるものが必要で、現状では、散漫すぎてしまい、席飾りの主役としては、ちょっと役不足ではないでしょうか(添え草に使うのなら充分大丈夫です)
 これは軸のトンボの図です。絵柄は良いのですが、勝手がちょっと良くありません。しかし、使いやすそうな軸ではあります
 これは、和室枇杷床の飾りです。島型の千軒石に軸は稲干し図、添え草はベニチガヤの3点飾りとなっています
 この石は、島型の千軒石で、千軒石には珍しく細かい総ジャクレの島型石です。山を含む全体の形状はなかなか良く、特に入り江の出入り部分には秀逸な物があるように思います。銅水盤やすっきりとした卓との取り合わせにも非常に好感が持てます。卓は少し窮屈気味ではありますが、まあまあ許容範囲内というところでしょうか
 全体としても、まとまりがあり季節感も良く、良い飾りなっています
 これが主石です。この石は幅30cm以上はある大型の石ですが、前述の梓川石と比べると、石全体の景状も非常に優れていますし、なにより石芸が多彩で見所満載という感じです。これくらい良い芸を持っていると、大型石ありながらも飽きることなく見ることができ、観賞価値も高いです
 ただ、右の裾が浮いてしまっているように見えるのだけが、ちょっとマイナスでした。石はキチンと据えなければいけません

最後に添えに使われた草でも・・・
 今回の展示会で使われた添え草の一部をピックアップしてみました

 これらの草物は、コーナー飾りに使われた物や、床の間の飾りの添え草として使われた物、列席の添え草として使われた物です。紹介したものは、秋飾りらしく、秋の花や紅葉物などの季節を現わすような山野草が多いのですが、実際には、このような季節の物ばかりではなく、いろいろなバリエーションの山野草が会場を飾っています。また、細長い感じの物が多いのですが、これは、単にこのような物を写してしまった私の好みが入っているのだけで、実際は普通の物や這い性の物まで、さまざまな物が使われています



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