水石展報告・・・・・A

 2003年10月31日(金)〜11月3日(月)
 甲府市総合市民会館 2階 展示室

 今回は、甲府市文化協会主催の文化祭の様子をアップします
 今回の展示会は、甲府市文化協会水石部の展示会で、5つの水石愛好団体と4つの地区文化協会から出展があり、一般席35席・小品席20席・席飾り2席と近年にない盛況な出品状況となり、水石趣味も少し流行りだしてきたのかなとも思ったのですが、出展してきたメンバーを見ると、相変わらずのメンバーばかりで、特に新しい人が始めた様子もありませんでした。偶然に今年だけ、出展者が多かったようです。昨年は、近年になく良石が出品されましたが、今年は『質より量』という感じの展示でしたが、とりあえず、レポートをしてみます
 また、今回は、写真を少し手直しをして使ってみましたので、より実践的にわかりやすくしたつもりですが、いかがでしょうか



まずは、会場をご案内いたします


 
  会場の玄関口にあたるこの場所では、とりあえず、正面に飾りを行い、来場者のお迎えをします。今回の席は 「五葉松の文人」 をメインに、添えには 「御堂」 です。まったく季節感のない飾りなのですが、出品者曰わく『会場内では、恐らく季節感のある飾りや、コーナー飾り・添え草などが展示されているから、これくらいでどうかなと・・・』。まあ、特に間違いでもないので、仕方がありません

 次に、左の展示室に入ることにします
 今回の展示会では、出品石が例年よりはるかに多かったため、コーナー飾りは最小限の1カ所だけで、スペースの関係で盆栽は置かずに草物を置く程度にし、水石を中心に、ところどころ季節の草を配してあります。会場正面に席飾りが2席・一般石が35席・小品石が20席という内容で、ちょっというか、かなり窮屈な感じになってしまいいました

 では
 今回出品された石の中で、私の気になった水石や飾りについて、少し解説したいと思います 


@席飾り−1
  こちらは、正面右の席です。長野県楠川で採石された滝石で、均釉の楕円水盤に据えられ、品の良い机卓が使われています。写真ではわかりにくいと思いますが、母岩の色も少し赤みを帯びていますので、これだけでも秋飾りに合う色合いの石で、滝がある左側にも深い谷が見え、水盤に据えるのがとても難しい石なのですが、一分の隙もなく据えられています
 掛け軸は、「指し紅葉」が掛けられ、定番ではありますが「滝に指し紅葉」という風情を簡潔に読みとることができます。細かいことになりますが、絵には数枚しか葉が描かれていません。これは盛期の紅葉ではなく、晩期の紅葉の葉姿ですので、使う時期はちょうど良いことになります
 また、添えを置かない2点での飾りになっていますが、この場合は、添え草は使えませんので、添えとしては添配しか使うことができません。この景色の中に、合う添配はほとんどありません(合うとすると笹舟くからいかな)ので、この場合は、2点飾りで充分だと思われます
 許容範囲内なのですが、しいて言えば、水盤の色が少し気になるくらいでしょうか


A席飾り−2

  こちらは、正面左の席です。新潟県の阿賀野川で採石された海岸の断崖を思わせる岩形石です。ちょっと斜に据えられ、縞黒檀の花台が使われています。水盤の色が気になる方もいるかもしれませんが、「石=黒、花台=黒」という組み合わせなので、このような場合には、濃色の水盤は似合いません。特に花台の色と突いてしまいます(ダブってしまう)ので、黒檀・縞黒檀・塗り物のような黒系統の花台を使う場合は、濃色のものを使うと、花台と水盤が同系統になってしまいますので、お互いを活かすことができませんので、明るい系統の水盤や鉢が似合います。今回の飾りの場合については、飾る時期が秋ですので、このような暖色系の水盤は、暖かみも感じるので良いと思います
 掛け軸は、 「セグロカモメ」 の図です。少し前までは、冬掛けでしたが、現在では年中掛けとして使えるようになってきました。もちろん、海の景色を現していますので、岩形・島形の石などにはぴったりとあてはまる軸となっています
 添え草は、ミゾソバです。小さな白とピンクの花を3輪ほどつけている物が使われています。@の飾りは、軸で季節感が現されていますが、こちらの席は、この小さな添え草で季節感を現しています
 パッと見て、一番最初に目が行ってしまうのは、やはり花台です。この場合は、もちろん許容範囲内ではありますが、やはり少し花台が小さめに感じてしまいます。これは、この飾りが海の景色を現しているからで、山の景色であれば、必要充分だと思います。あとは、砂の色にもう少し気を配ればさらに良かったのではないかと思います


B奈良井川石
  これは、奈良井川で採石された岩形石です。母岩は濃い紫色をしていて、紅流しと同じように綺麗な紅が流れています。なんといっても紅の流れている位置が最高のところに出ています。紅流しの価値は、紅の色や量も大事なのですが、最大のポイントは、どこに紅が現れているかにかかっています。このような感じで良いところ(必要なところ)に紅が流れている石は、なかなか見たことがありません。この場合の紅は、紅葉と見立てるものであり、石だけでも充分季節感を感じさせることの石です。それとともに 「せり出し」 も効いていて、雄大な景色を創出しています。その石を海鼠の長方水盤に据え、地板にあわせています
 パッと見は、地板が広そうに見えますが、玉縁の長方水盤の強さ、石の強さ(迫力)とのバランスを考えると、この地板の厚さ(薄さ)では、この強さを受け止めるのには、これくらいの広さの地板でも充分許容範囲内です(これで、地板がもう少し厚いと、小さくしなければなりません)。写真でもわかると思うのですが、地板の縁が直角になっています。地板の場合は、縁の仕上げ処理も大きな要素ですので、このようなものではなく、できるだけキチンと縁が処理されているものを使った方が、良いと思います
 この石のように、重量感(迫力)があり、せり出しが効いている海岸の岩型石には、水盤内帆掛け船などの添配を置いて飾るのには最適な石です。添配を水盤内に置く時は、この石の場合、広めの楕円水盤に石を据え、出船・入船などの景を演出するのも楽しそうな石です


C釜無川石
  この石は、釜無川で採石された島形石です。持ち込みは古く、だいぶ味がきている石で、ちょうど良い広さの楕円水盤に据えられ、縞黒檀の花台が使われています。写真ではわかりにくいのですが、少し上から覗くと、水盤が少し広めにも感じますが、島形の石ですから、これくらいの広さでも充分許容範囲内です。ただし、石の黒、水盤の色(瑠璃ですが、かなり暗色です)、花台の黒色と、色が突いてしまい(ダブってしまい)、色彩的にも石が引き立つという感じではありません。やはり、このような取り合わせは、マイナスにこそなれ、プラスに働くものではありませんので、道具の取り合わせに注意すべきでしょう


D奈良井川石
  この石は、奈良井川で採石された硬質な真黒の山形石です。川擦れも良く、山の形も良い石です。その石を銅盤に据え、珍しい平の机卓に飾っています。写真を見てもわかるとおり、誰でも水盤の薄さが気になるようで、少し物議を醸した飾りです。はたして水盤は薄すぎるのでしょうか(許容範囲を超えているのか)?

 結論から申し上げますと、この薄さでもギリギリ許容範囲内です。この石は砂から上に出ている部分は、けっこうボリュームがあるのですが、滑らかな石の線に助けられています。つまり、水盤の選定には、石のボリュームだけではなく、石の持つ見つけの線も重要になってくるからです。ですから、この石の場合は、この飾りでも、充分許容範囲ということになります。本来ならば、もう一寸程広く、高さもあと三分ほど欲しいところですが、無い物ねだりをしても無理というものです


E員弁川石
  この石は、三重の員弁川で採石された硬質な山形石です。川擦れも良く、持ち込みも古く、なかなかの良石であります。その石を台座のまま平卓に飾っています
 かなり良い石(今回出品された石のなかでも一二を争う良石でした)なのですが、台座で出品していることと、卓が良くないことが大きなマイナスになってしまっています。残念ながら 「石を殺してしまう」 典型的な飾りとなってしまいました。それほど高価な卓を用いることはありません。キチンと石が似合う卓を用いるべきなのです。自宅で楽しむ分には、このような飾りでも何ら問題はないのですが、展示会に出品する時くらいは、もう少し道具に配慮すべきでしょう。最低限、このような卓の使用は慎みたいものです(このような良石を持っている人ですからね)


F佐治川石
  この石は、佐治川の石で、いわゆる岩上茅舎と呼ばれている石です。写真からは判断できないかもしれませんが、岩の構えは良く、茅舎の形も良く、古格も備えていることから、まあまあの石といえると思います。それを短冊大撫で角の水盤に据え、中卓に飾られています。このような飾りを見て思うことは、やはり卓使いのことで、岩上茅舎は普通の茅舎石と違うことはわかるのですが、やはり平卓か地板に飾った方が良いのではないかということです。なぜならば、この石の場合、茅舎と岩のバランスを見ると、それほどの大きさの対比を感じません、岩の大きさが、山ではなくあくまでもさほど大きくない岩にしか見てとれませんので、どうしても平卓では、違和感を感じてしまいます。この石の景色は、平溜まりや茅舎と同じく平地の景色ですから、やはり、平卓や地板の方が違和感なくシックリと鑑賞できると思います


G富士川石
  この石は、富士川で採石された遠山抱湖型の石です。こちらでは虎渓石と呼ばれている石で、非常に硬質で鉄分を多く含むことから、持ち込んでいると、少しずつ錆が浮き出して赤みを帯びてくるようになります。この石を、楕円の水盤に据え、地板に飾ってあります
 席主曰わく 「石肌に浮いてきた鉄錆を紅葉と見立てている」 ということでしたが、紅葉と見立てるのには、あくまでも赤系統の色でなくてはなりません。これくらいの茶色で紅葉と見立てられるのであれば、そのような石はたくさんありすぎてしまい、「なんでも有り」になってしまいます。ですから、紅葉はあくまでも「赤味」がすべてです。もちろん、このように茶色系統の石については、夕日を浴びている様に見立てることができますので、このような石は、そのような飾りをすると、その色を活かすことができます(例えば「夕日の景」「蝙蝠」などと一緒に飾るとか)。飾りの面白みさとは、そのような特徴を 「活かす」 ことであり、自分自身の勝手な思い込みではありません。やはり、冷静沈着に自分の石を評価する眼を養う必要があります
 Bの飾りと同じように黒漆仕上げの地板を使っています。Bの地板は、恐らくホームセンターなどで売っているものを流用したものですが、こちらは本物です。ですから、縁の仕上げ処理も丁寧に縁が取られているので、いわゆる「硬さ」を感じません。また、少々時期はずれの感はありますが、黒の地板に呂均釉の水盤が映えているのがわかります
 それと、この石は、底を切断している石だそうですが、残念ながら切る位置を間違っています。この石の良いところ(見所)は、下の写真で線を引いた上の部分でしかありません。線より下部については、何の見所もないし、何の働きもしていません。ですから、この石の場合は、砂に埋まっている見切り線で石を切断し、赤い線の位置まで砂に埋めると、この石は一段と良い石に見えるはずです


H鞍馬石
 この石は、京都の鞍馬石です。せり出しの効いた平溜まりの風情をした石です。織部釉の楕円水盤に据えられ、算木の中卓に飾られています。本来ならば、このような平石は、平卓か地板に飾った方が、映えるのですが、この石は、少し高さもありますので、このような中卓でもぎりぎり許容範囲かなとも思われるのですが、いかがでしょうか? もう1cmでも石の高さが低ければ、平卓か地板なのでしょうが、この石に限っては、難しいところです


I天竜川石
 この石は、 「赤壁」 と席主が命名した天竜川産の岩形石です。パッと見では、石の右側に不必要な出っ張りがあったりしますので、あまり良い石とは見えないのですが、これは、実物を見るとわかるのですが、驚いたことにかなりの良石なのです。残念なのは、飾りがもう少しでした。どこが良くないかというと、第一にあげられるのは、石の向きです。この場合は、卓の真ん中にも据えていなし、石の振りが違っています。もう少し時計回りに振らなければならないのですが、それができていません。もう一点は、卓の高さです。景色的に見ても急峻な山の岩場を現わす岩壁ならば、このような中卓でもかまわないのですが、このように細くて長い石は、中卓に飾ったのでは、その細くて高い様を表現できませんし、なにより力のバランスが悪すぎます。このように細長い石(姿石等)は、平卓に飾ることにより、その高さや細長さを強調することができ、石も良く見えることになります。ちなみに、下の写真は、僕が会場当番の時に、会場を閉める前にちょっといじらせてもらい撮影したものです。写真では奥行き感や立体感がわからないので、さほど変わったように見えないかもしれませんが、ちょっと飾り方を変えることにより数段良くなっているはずです


J北三陸海岸石(小品)
 この石は、左右4寸ほどの北三陸海岸で採石された山形石です。写真でもわかるとおり底をカットしてある、採石されたばかりのまだ若い石です。台座におさめて小さな平卓で出品されています。このような草体の石の良否は、全体の形と、それを構成する線により決まってきます(このことについての詳細は、いつかの機会に述べます)。一見すると、それほど悪いもののようには思えないのですが、やはり勝手側が強すぎる(押しすぎる)のが、このような草体の石ではマイナスになってしまいます。つまり、Gの富士川石と同じように切り間違いをしているのです。このようにシンプルな形をした草体の単峰は、これほど勝手側を強くしない方が良いでしょう
 もちろん、このような石は水盤で飾った方が、はるかに映えるのですが、小さな石ですので、合う水盤がなかったのかもしれませんので、仕方がないと思います

 参考までに、この位置で切れば良いだろうと思われる位置で仮想切断をしてみました。こちらの方が、穏やかで草体の雰囲気が現わされている山になっていると思います。ちなみに、角度では7度左方向に傾けてありますが、もう1〜2度くらい程度でしたら傾けても良いと思います


K桂川石(小品)
 この石は、左右4寸ほどの桂川で採石された、小品では珍しい連峰型の山形石です。色も赤味を帯びているため、紅葉と見立てることもでき、なかなか面白い石です。その石を楕円の水盤に据え、中卓で飾っています。水盤の色・形・大きさ・卓とのバランス・・・・全てが整っていて、なかなかお洒落な飾りとなっているのが、写真からでもわかると思います
 小品石というと、茅舎・姿石・単峰・滝石・溜まりが、どうしても多いのですが、その中に、このような連峰型があるのもなかなか良いものです


L姫川石(小品)
 この石は、左右3寸ほどの姫川で採石された山形石です。険しい単峰を単純化した草体の山形石です。やはり底切りをしている石なのですが、なかなか変わった形の石でありながら、草体の条件も満たしている良石だと思います。しかし、残念ながら石の質がイマイチでした。これで、硬質ならば、なかなか面白い石だと思うのですが・・・・・
 楕円の水盤に据えられ、平卓が使われているのですが、この石は、長方の水盤でなければならないのに、楕円に据えられているため、石の良さがイマイチ引き立っていません。多少大きさの違いは我慢しても長方に据えれば(もちろん許容範囲内で)、はるかに引き立つ飾りになったと思われます


M釜無川石(小品)
 この石は、左右4寸5分ほどの釜無川で採石された茅舎石です。茅舎石としては、まあまあ形は整っているのですが、クラックがあったりするので、そこそこといったところでしょうか。注意して見ていただきたいのは、もちろん 『台座』 です。出品した本人は「このような台座にしてみたのですが、どうでしょうか?」と・・・・・
 みなさんは、どのように思われますか?

 結論を先に言いますと、台座と地板を一緒にしたものと考えられますので、この台座でも 「OK」 ということになりました。添えなどに使う場合は、地板を使わずに済むという利点がありそうですし、飾りの幅も広がりそうな面白い台座です。このようにいろいろなことにチャレンジし、廻りから意見や評価を受けることも、このような展示会は、良い機会だと思います


N北三陸海岸石(小品)
 この石は、左右4寸ほどの北三陸海岸で採石され、左側に滑らかな稜線を持ち、右手には破面、見付には小さな入り江を備えた土破型の島形石です。これを短冊大撫で角の水盤に据え、平卓に飾ってあります。一見すると、水盤が小さめにも見えますが、この大きさでも石が充分働いているため、この水盤でも十分調和していることがわかります。これが、見つけに入り江が無いただの土破石でしたら、このようにはいきません。取り合わせが面白い飾りだと思いますが、惜しむらくは、石が「若い」ということでしょうか
 ちなみに、少し上から見ると、このような感じです


 以上 
 簡単ですが、いくつかの水石飾りについての、私の私感を書かせていただきました。もちろん、見る人によっては、違う印象を持つかもしれませんし、違うように感じることとは思いますが、僕なりの論拠を持って、ざっくばらんな感想(評価)を書いているつもりです。よろしければ、何かの参考にしてください


 続いて会場の風景を・・・・・


やはり、ちょっと窮屈な席ですね。もう少し余裕が欲しいところなのですが・・・・・


こちらは、小品席です


見てのとおり、席札が大きすぎました。反省しています
一般席(列席)と小品席の間には、草の替わりにザクロを置いてみました


こちらは、展示風景とお客さんの様子です







 最後に、飾りに使った季節の添え草の一部を紹介します

ヤマラッキョウ(コーナー飾り)


○○イチゴ(名前を忘れてしまいました)


ミゾソバ


野路ギク






 最後まで ご覧いただき ありがとうございました





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