物には、その物の持つ内容や形状により真・行・草という位に分けることができ、水石飾りに使う諸道具はもちろん、石にも、その石の持つ形状や色彩により真・行・草と分けられることができます。きれいさっぱりと3つの区分に分けられるのではなく、真体の石の中にも、 「真体の真体」・「真体の行体」・「真体の草体」 などのように区分ができ、行体・草体の石も、同じように分けることができます
 
 従来は、水石の持つ位を自分で判断し、真体の石には真体の道具を使った飾り、草体の石には草体の道具を使った飾りなどというような、位にみあった飾りを行うことが必要であると言われてきました。その理由として、水石が真体のものに、草体の道具を取り合わせて飾ったり、草体の水石に真体の道具を使って飾りをした場合などは、美や芸術性を感じることはおろか、陳腐な物になってしまうことは明白であり、やはり、それぞれの格にあわせた飾りが必要だと考えられてきたからです
 もちろん、このことは間違いではなく、基本中の基本と考えても良いのですが、それだけが正しいわけではありませんし、そのような決まりきった飾りだけでは、水石飾りの奥深さや楽しみは半減してしまい、飾りの幅がまったく無くなってしまいます。位の違う物を取り合わせても、特に違和感を感じなかったり、美を表現することができれば、それはそれで間違いではなく、それこそが 『取り合わせの妙』 とも言うべきものであり、飾りの奥深さと楽しみでもあります
 そうはいっても、何も知らないうちに、あれやこれやと位や格の違う取り合わせをしても、けっして良い飾りにはなりそうもありません。最初のうちは、基本に忠実な飾りを行うことが、やはり必要だと思いますので、水石や道具の持つ格を勉強することが必要になってくるのではないかと思っています

 さて、この水石の位ということになりますと、まずは、水石の形状から判断することになります。連山形や遠山型などのオーソドックスな形の物で、石肌はあまり滑らかではなく、少しゴツゴツしていたり川擦れの良くないものなどが、真体に相当します。また、石の構えは、あくまでもグッと鑑賞者に向かってくるような威厳のある構えを持ち、色が真黒色のものが、真体の真体という格付けになります。人によっては、真黒の石がすべて真体の石と位置づけている人もいますが、真行草の格付けとは、色を最重要視して判断する物ではなく、あくまでも、 「形状」 がその判断の第一基準になりますので、ご注意下さい。
 構えが悪かったり、色彩や彩度が落ちる物、石肌が滑らかな物などは、真の行とか、行の真とかに位が落ちることになります

 それとは逆に、草体の水石とは、基本的には 「川擦れによるまろやかさ」 と 「簡単な(省略された)線」 で構成されていることが必要になります。ですから、山形である場合は単峰形などの単純な形状で、ツルツルと滑るくらいの川擦れをした物などが、草体の石であるということになります
 姿石など部類は、観音様などの神仏に関する形状を現した物は、真体になり、茅屋石などは、その内容から草体の水石になるのです

 いずれにせよ、この位分けというのは、何かの基準に従っておこなわれる事ではなく、ある程度は、席主や鑑賞者の主観にゆだねられてしまうほど微妙な物である場合もあります
 例えば、手元にある山形の水石があり、蔵者は「行体の真の石」だと思っていても、見る人によっては「行体の行の石」と見る人もいます。この辺になると微妙なところで、言葉では表せない物があるのです。そのような微妙な判断はともかくとして、水石においても、基本的には真・行・草の位付けがあるということです

 水石における真行草の位付けについては、水石飾りにおいては、その位を重視して飾る必要はさほどありませんので、それほど重視しなくてもかまわないと考えています

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 真行草の形について、写真で説明したいと思います。前述したとおり真行草の位分けは、色ではなく、あくまでもその形で分けることになります。形が最優先されますので、ご注意下さい




 これが、真の位の石です。この石のように、石全体がゴツゴツとしていて、見付の線が激しく、石肌も川擦れに乏しい物が真の位になります。このような感じで、石肌の色が格の高い黒色であれば、真の真体という感じになります。この写真の石は、それほど強いゴツさを感じませんので、「真の行体」という感じでしょうか。実際に説明するのに、ちょうど良い石の持ち合わせが無いもので、この石を撮影してみましたが、実際は、もっとゴツゴツした石はたくさんあり、このような感じの石が真の位の石です




 このような感じの石が、行の位の石です。真体の石ほど見付けの線がゴツゴツとしていない様を呈していて、石肌にも川擦れが見られるくらいのものが、行体の石です。写真の様子では、こちらの石の方が見付けの線が荒々しく見えるのですが、実際は上の写真の方が、荒々しい感じがするもので、こちらの方が少しでもまろやかに感じます。恐らく、水石の大部分が行の位の石ではないでしょうか





 草体の石は、見付けの線も単調で滑らか、石肌も川擦れが効いているものでなければなりません。この写真の石は、この条件を満たしていることが写真からでもわかります。少し抽象的な石ですが、見付けの線の柔らかさや、石肌のまろやかさは、草体の石の大きな特徴です


 以上 島形の石で、真行草を現わしてみました。真の位の石などは、ちょっと馴染めないかもしれませんが、なんとなくイメージは掴めていただけたのではないかと思います





 水石や諸道具には真行草の位付けがあり、それを知っておくことは大事なことなのですが、もう一つ大事なことに、物の持つ格を知っておくことも必要です

 この 『格』 というものは、水石で言うと 『色』 にあたります。黒色が最上位で、以下は赤・蒼黒・灰黒と続き、白が最下位になります。主役の水石については、さほど格を取りざたされることはなく、他の道具との取り合わせでも、気を遣う必要はありませんので、あまり詳しくは触れません。また、道具における真行草の位付けについても、石と同じく、鰭飾りなどの飾りが多く装飾性が高いものが真体となり、装飾性が少なくなるにつれ、行体・草体と変化するだけなので、飾りを行う上でもさほど重要な事ではありませんので、ここでは、道具の真行草については省略することにします

 ただし、諸道具の持つ格の違いを知ることはとても大事なことです。これは真行草という位ではなく、あくまでも 素材等の持つ格の違い にあります。特に、飾りにおいて複数の道具を使用する機会の多い陶磁器や木材の物については、格の違いということを理解しておく必要があり、簡単に書くと、次のとおりになります
 
○陶磁器(鉢・水盤等)
 ・磁器 > 陶器
 ・釉薬による格付け
   青磁 > 絵付け > 白磁 > 施釉陶 > 無施釉陶
   青磁以外の施釉陶では、呂均釉・均釉が次に続き、寒色系から暖色系に向かいます

○木材製品(卓・地板等)
 ・塗り物(黒漆・朱漆)が最上位で、あとは材質(木の種類)です
    (拭き漆の仕上げの物は、ただの仕上げの仕様の一種ですから関係ありません)
 ・堅木(紫檀・黒檀等) > 花梨・紅紫檀等 > 柔木(スギ・クワ・ケヤキ等) > 竹の順です


 このように諸道具には、真行草の位とともに、格の違いが存在しますので、道具を使う場合は、この格の違いを使い分けて飾ることが必要になってきます。これは、どのようなことかといいますと、例えば、主役の水石に施釉の水盤を使った場合には、それよりも格上の青磁や絵付けされた鉢を用いた添え草は使わないようにし、焼き締めの無施釉の鉢を使う。とか、主役に紫檀の卓を使った場合は、添え草の地板に塗り物の地板を用いないようにし、スギ・ヒノキなどの格下のものを用いる。ということになります
 飾りにおいては、あくまでも主役(主石)がメインになり、掛け軸や添えはただの脇役にすぎません。ですから、主役に使う道具よりも格下の道具を用いることにより、主役との差別化を図ることになります。つまり、主役と添えは主従関係にあたりますので、このような道具の使い分けが必要になるのです。ちなみに、主役と添えとで同等の物を用いることは、まあ許される範疇(許容範囲)です

 この格付けによる 道具の使い分けは重要 になりますので、この 『格の違い』 はぜひ覚えておいてください



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