水石の価格

 石の評価と価格については、なかなか難しく微妙なところがあり、それに各人の好みまで入ってきてしまいますから、定量的な評価をする事は難しく、ましてや、その評価を価格に反映させる事などできないのが、水石や盆栽などのように一点物の世界でしょう

 もちろん、ダイヤモンドなどの宝飾品、絵画、各種工芸品などのような一点物の世界も同じであり、不動産などもある意味一点物の世界と同じでしょう。このような物は一点物であって、ほとんどの場合、売り主と買い主間で売買価格が決められ、「値があってない物」と昔から良く言われています。もちろん、値があってない物というのは、半分以上は当たっているとは思いますが、ある程度の「相場」があるというのも事実でしょう

 例えば加茂川石のこれくらいのレベルであれば1万円程度だとか、神居古潭石の場合、このくらいのクラスだと2万円前後というような感じです。もちろん他の世界もまったく同じで、ダイヤモンドであればその品質に応じて1カラットあたりだいたい○○万円とか、絵なら1号当たり○万円とかの基本の相場があって、それにプラスマイナスが加除されて最終的な価格が形成されていくという感じでしょう

 水石についてのプラスマイナスで加除される要素にどのような物があるのかと考えますと、形状(景状)・石質・石色・産出河川・時代の乗り具合・石の来歴などがその基本にあり、あとは「好み」も大きな要素になってくるのが面白い事です

 高級水石が流通するような場合、昔は業者と愛好家の相対での取引がほとんどでしたが、近年では入札方式やオークションなどを通じての価格形成も現れてきたりして、取引方法も変わってはきたものの、まだ絵画などの分野よりは、流通も整備されていないし、価格形成についても曖昧な部分が残り、困惑しているのが現状だろうと思います

 ましてや「値はあってないもの」と嘯く人や業者さんが多いのも、あまり良くない事の一つで、売る時だけは熱心に進めても、買い戻しをしなかったり、不当に安く買い戻すようなことを業界がしてきた事も、愛好家にそっぽを向かれてしまう原因で、業界として成熟しきれていない大きな理由だろうと思います

 例えば20万円で愛好家に売った水石があるとして、だいぶ楽しんだので10年後にその水石を購入した業者に買い戻してもらおうとすると、なかなか簡単に応じて貰えなかったり、買い戻したとしても、何だかんだ理屈を付けて購入時の1〜3割にしかならなかったなどという話は、昔から良く聞いています

 バブルで高騰した後ですから、それでも仕方ないと思える人はいますが、下落後で安定した後でも同様の話を耳にしますので、恐らく、売りさえすればそれで良いといった業者さんの体質が問題の一つではないかと思います

 業者さんは商売ですから、安く買って高く売れればそれなりに利益が出るわけですから、安く買いたいのが当たり前ですし、買っても売れなければ利益どころか損をしてしまうわけなので、なかなか高く買ってやる事ができない事情もわかります

 水石の魅力の一つに「時代感」というのがあります。拾いたての石・養石10年の石・養石30年の石・明治時代から養石されている石では、おのずと時代感が違って、やはり古いものほど良いのは当たり前で、業者さんも売る時には、それを訴える場合も多々あります

 それを買った愛好家は、10年20年と養石しながら充分楽しんで、そろそろ飽きたので買い戻してもらおうと思ったら、自分が養石した分だけは石の魅力が増しているのにもかかわらず、購入時の1〜3割くらいにしかならないのでは、ちょっと可哀相ですし、不信感みたいなものが出てきても仕方がありません

 このようなものについての価格設定というのは、買値の2〜3倍の値付けをするのがだいたい普通でしょう。2万円で仕入れた物は4〜6万円くらいで売るくらいが、だいたいの相場というもので、それくらいでなければ業者さんの利益も出ませんし、商売として成立していくものと考えられます

 10万円で買った石を、10年15年後に売ったら1〜3万円では、ちょっと買った人が可哀相ですし、やる気がなくなってしまうのは事実です。せめて半分くらいでは買ってやらないと、愛好家の購買意欲など起きるはずがなく、そのような事が愛好家の購買意欲を削いでいるとも言えるでしょう

 10万円の石を15年楽しんで、5万円になれば1年当たり3333円ですから、それくらいなら購入する側にも安く楽しめたというメリットは充分感じる事ができるように思います。このような事は水盤や卓などの道具類にも言えるでしょう。2万円の水盤を買って10年後に売ったら1万円になったというのであれば、1年当たりの使用料(笑)は1000円ですから、それほど高いものではなく、むしろ安いのではないかと思えるくらいです

 「水石はお金がかかる」「石など売る時は二束三文にしかならない」などと言われていますが、業者さんが頑張って「半額買い戻し」みたいなものを制度化していけば、愛好家も安心して石を購入できると思いますし、そうして購入者が増えていくことにより、業者さんも良くなっていくように思います

 絵画業界と同じように安定的な業界として水石界を維持していくためには、このような業者さんの努力が必要ではないかと思います。もちろん、社会情勢の変化により多少の価格変動はあるでしょうから、景気の動向に応じて基礎価格が変動していくのは仕方がありませんが、できるだけそれを維持していく事が業者さんと愛好家の信頼関係を強くする事に通じ、水石界が維持発展していくことができる制度ではないかと考えています

 まあ、これは水石界だけでなく盆栽界も同じような状況だと思いますので、同じような感じのシステムを作り上げていく事が業界を救い、それぞれの趣味の世界を広げていく良いシステムとなり得るだろうと思えます。自分さえ儲かればそれで良いなどと思っている業者さんが多数を締めているような状況では、この不況下の中ますます先細りになってしまうのは目に見えています

 このような事くらいで、それぞれの業界を活性化できるとは思っていませんが、今より少しはマシになるでしょうし、業界として取り組まなくても個々の業者として取り組んでいけば、その安心感は絶大ですから、お客さんが増えるのは間違いないでしょう(笑)




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