日本水石名品展見学

 先日明治神宮において日本水石協会主催の「日本水石名品展」が開催され、先輩に連れられて初めて見学してきました。この水石展は、日本水石協会が主催している展示会ですから、出品者も全国にわたる大きな展示会です

 会場は、明治神宮の回廊と社務所を使い、回廊においては水石と盆栽、それとわずかですが草物も展示されていて、社務所の方は水石だけの展示になっています

 回廊においての展示は、屋外の展示と言う事と、大型盆栽も一緒に飾られており、合間に季節の草物なども添えられていて、華やかな感じのする展示になっています。ただ、会場は広く開放感があったり、大型盆栽も一緒に飾られていますので、小さな石では「力負け」や「位負け」してしまい、どうにもならず30cm以上の石がこの場所ではベストの選択になりそうです

 今回、何点か写真に納めてきましたので、少し紹介してみたいと思います

 この石は、京都の畚降ろし石と呼ばれている石で、その中でも名品とされている石の一つです。間口は40cm以上は優にありますので、水盤ではなく台座で飾られています。景状は悪くありませんし、色彩も古色がのり落ち着いています

 京都の石自体硬質な石は少なく、しいて言えば加茂川に硬質な真黒があるくらいですから、この石も質的な魅力には乏しく、まあ雅味ある石という感じです




 この石は、産地は忘れてしまいましたが、ご覧のようなシンプルな平石です。勝手はキチンとありますし、前面の変化もあって水石として成立している石です




 この石は、前述した加茂川の硬質真黒です。変化に富んで川擦れも良いのですが、景状的にはもう一歩というところですが、なかなかの石です。ブログでも触れましたが、この石は明らかに右勝手の石ですから、左勝手に飾っているのはあまりいただけません




 呑平の水盤が出ているというので楽しみにしていたのですが、残念ながらこの飾りでした。石・水盤・卓ともそれぞれが悪くありませんが、いかんせん合っていなさすぎです。せめて石と水盤、あるいは水盤と卓のどちらかでも合っていれば、これほど違和感を感じる事はないのですが、ちょっともったいないですね

 一番悪いのは間違いなく卓です。写真には写っていませんが冠卓ですから卓自体が基本的にうるさく、そのうえ真塗りになっていますので、水盤の黒釉とも色がダブってしまい、せっかくの水盤が沈んでしまっています。やはりスッキリとした水石が似合いそうな卓を使った方がはるかに良くなる事は言うまでもありません




 この石は山型の鞍馬石です。写真のとおり石の変化についてはなかなか良く、景状はやや薄めながらもまあまあ整っています。このような石については、このまま台座で飾ってしまいますと、いかにも切り石であることがわかってしまいますので、台座よりも水盤に飾って見たい石だと思います




 この石は北海道の神居潭石です。展示されている石の中では一番大型の石で、間口が60cmくらいはありました。これくらい大きな石であれば、もう少し芸が欲しいところですが、景状がまあまあ良いので、これくらいでも充分かな

 何回か回廊を見たあとは社務所に移動して、室内の展示を見ました。特別出品という事で元京都府知事の荒巻禎一さんや徳川美術館、京都頼家などからの特別展示がありました。この中では、徳川美術館の山型小品石が大人しくてなかなか良い石で、川擦れが良く効いている加茂川の石で、品のある石でした

 一般の展示部門の中にも、なかなか良い石があり、唸るような石こそありませんでしたが、2〜3石欲しくなりそうな石はありました(笑)




 その中の筆頭はこの神居古潭石です。極めて硬質な石でありながら、景状は素晴らしく整っていて、なおかつ川擦れも抜群で、思わずさすりたくなるような石です。台座で飾られていましたが、これくらいの石であれば、やはり水盤に据えて見たいところで、水盤に飾るとグッと良くなると思います




 来場者に人気があったのは、この加茂川の溜まり石です。景状・石質・川擦れとも良く、時代乗りも抜群で底光りするような迫力がある石です。ただジャクレ石としては、やや芸に乏しいのは否めなく、もう少し変化がある石であれば、さらに良くなったと思いますし、台座も良くありませんので、やはり水盤飾りにした方が良かったのではないでしょうか




 この石は産地は忘れてしまいましたが、やや赤茶色味がかかった茅舎石で、そこそこ有名な石だと記憶しています。茅舎でもかなり崩れた感じのする石で、寂を感じさせる石になっています。色彩からすると秋から冬にでも飾ればちょうど良い感じになりそうです




 この写真は、石ではなく卓を撮ってきました(笑)。石自体はそれほどの物ではありませんが、軽やかで品のある卓はなかなか無く、その点この卓は、その両方をかなり高い次元で満たしている水石向けの卓です。一見すると、たいした卓とは見えないかもしれませんが、石を活かすという卓の使命を考えると、良い卓と言う事ができるでしょう。ただ、やや薄めに仕上げられていますので、力強い石はあまり似合わず、痩せの効いた石を飾ると抜群に似合いそうな卓です。このような卓は、是非使ってみたいものです




 この石は揖斐川石となっていましたが、時代がつきすぎて産地などわからないくらい古い時代の石です。写真ではわかりにくいのですが、左側部分が手前に飛び出しているような奇形の石で、現状ではあまり良くないのですが、据え方を変えると良くなる石だろうと思います。つまり逆勝手に据えなければならない石です




 今回の展示の中で一番変わっていたのがこの飾りです。桐生川の岩型石を飾ったもので、水盤がやや広めではありますが、なかなか面白い飾りでした。外反りの水盤に両セリの石を据えているので、形状的にはダブって見えてしまい勝ちなのですが、水盤が浅くてやや広めなので、それほどダブって見えていません(出品者がそこまで意識したかどうかはわかりませんが・・・)

 いずれにせよ、あまり類例の無い景状の石を上手に据えていると思いました。やや広めではありますが、技有りの飾りですね




 名品展に続き、午後からは浅草に向かい日水同人会さんの水石展を拝見させてもらってきました。会場は浅草公会堂という場所で、観光客で賑わう浅草の一等地みたいなところにあり、会場も素晴らしかったのですが、展示会もなかなか良かったので、少しレポートしてみます

 正直言って、それほどたいした事はないだろうと思っていたのですが、会場内に入りますと意外や意外、一席ごとに結界で仕切られ、さらには綺麗な青氈まで敷き詰められ、おやっと思ってしまいました。感心した事には、一席毎に席札の位置も変えられていて、キチンと鑑賞できるようになっています

 会場内を一通り見渡しても、石の配置についても気が配られている感じで、石の大小についても適度に散りばめられていて、ライティングも良いですし、全体の展示についても配慮されている事が見受けられました。これは期待ができるかなとゆっくりと見させて頂きましたので、その様子を少し書いてみます




 一番驚いたのはこの石です。この石は抜けのある八海山の岩型石で、石も良いですし飾りもなかなか良く、一緒に訪れた先輩達の目を引いていました。これくらいの石であれば全国レベルの展示会でも十分通用する石ですね




 この石は会場に入り最初に飾ってあった石です。岩手県の遠野を流れる猿ケ石川の石で、石は若そうな感じではあるものの、景色は素晴らしくなかなか良い石でした




 この石は三峰川の石で、いわゆる川擦れの天竜斑石です。シンプルな山型ですが、微妙な変化があるだけでなく、川擦れも良く効いている石でした。水盤は恐らく丸善の瑠璃釉隅入り長方水盤で、これも渋かったですね




 この石は陸中海岸の石で 、あっさりとした渋い石です。海擦れは抜群ですし勝手も良く綺麗な孤峰で、僕が好きなタイプの石です(笑)。ただ残念なのは台座飾りになっていることで、水盤飾りを見たかったです




 この石も陸中海岸の石で、いわゆる抽象石という範疇に入ってくる石です。僕自身はあまり好みの石ではありませんが、「たまには、このような飾りも良いものだ」と、一緒に行った先輩方の評判はなかなか良かったです

 使用している道具と石のバランスはもう一歩というところでしたが、前述したように展示会全体の雰囲気作りなどはなかなか良く、レベル的には結構高い展示会でした。恐らく、良い指導者がいるからなのではと思います

 最後になってしまいましたが、手提げ袋のお土産まで頂いてしまいました。展示会に出向いて、お茶菓子とかお祝いを持っていく事はあっても、何かを貰う事などあまりありませんでしたのでこれには、ちょっと驚かされました。良く見ますと、日水同人会さんの40周年記念で作られたものらしく、デザインをもなかなか洒落ていますし、丈夫で実用的なトートバックです。ありがとうございました!




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