土破と段石

 山型石や溜まり石などで名石と呼べる石は、ちらほら見かけることができるのですが、土破と段石には、名石と呼んで良いような石はなかなかありません。特に段石などは皆無に近いくらいではないでしょうか。なぜ良い石が少ないのか?・・・理由は簡単で、土破とか段石の基準が厳しいからなのです

 土破と段石は、主役が破面というただ平らで、単純な構成をされていますので、許容範囲を広げてしまいますと、かなり甘い物まで水石として認められてしまいますので、際限がなくなってしまいます。ですから、この両者については、できるだけ厳しく自分を律していかなければならないと考えています

 では、この両者にどのような約束事(基準)があるのか、少し書いてみます。両者とも兄弟みたいな石形ですので、基本は全く同じです

(解説付きの写真が多々ありますので、クリックし文章と照らし合わせながらお読み下さい)

●破面について

 まず破面のあり方については、切ったようにスパッと真っ平らであることが望ましいです。もちろん、多少の凸凹はあっても、平らに見えるものであればなんら問題はありません。また、水平でなければなりません。特に段石の場合は、その段の有り様をメインに鑑賞するわけですから、それぞれの段の角度が違っていては、鑑賞価値はガクッと下がってしまいます

 段石の景状とはいわゆる河岸段丘の景色を石上に求めた物で、実際の河岸段丘は多少の起伏はありますが、石上で表現される場合は、それに省略された美しさを見いださなければなりませんので、段(破面)の角度がバラバラでは、鑑賞価値が下がってしまうわけです。ただ、土破の場合は、広大な草原をイメージする場合もありますので、ゆるやかな起伏があったり、多少の角度がついたとしても、鑑賞上差し支えないものであれば大丈夫です

 また、平らな破面を鑑賞する石ですから、広大さを引き立たせるためにも、破面の後ろは抜けている事も大事です。せっかく良い破面があっても、その後ろにたとえ山状のものでもあると、破面の平らさの鑑賞の妨げになってしまいます。ですから、破面(平ら)は奥まで抜けている事も大事な要素になります
 左の写真は、少し前の展示会に出品された石で、その石の解説にも書いたように、左の写真のように、できるだけ破面は、奥を空かして見なければなりません。そうすることにより、破面が活きてきます

●破面の前面について

 
 この両者の景状は、兎にも角にも破面が最大の見所になりますので、破面を一番美しく見せる状況が良い石となる条件です。その一つとして、破面前面の状況も関係してきます。破面の前面については、直角に降りている事が基本になり、前面がだらだらと前に伸びているようでは、メリハリがなくなってしまい、やはり鑑賞価値を下げてしまいます。もちろん、多少であればなんら問題はありませんし、逆に少し奥へえぐられているようになっていても、よりメリハリが効いて、なかなか良いものです

 
 この左右の石は、毎月の飾りの時に飾った石です。勝手側から撮影した映像で、奥が破面の前面になっているのですが、ほぼ直角に降りていることがわかります

 このような感じで前面が降りていると、破面とのメリハリが効いてきて、破面の平らさがより活かされることになります
 少し鋭角に内側に入り込んでいるのも、石によっては非常に良く、趣がましてきます


●前面の見付けについて

 
両者の石は、ほとんどの場合、石の摂理によって破面ができていて比較的単純な形が多いです。単純な形が悪いわけではありませんが、前面が直線状や中ぶくれ状になっていたのでは、鑑賞価値は下がってしまいます。やはり変化も必要で、見付けの線に動きがあることも、単純な形だからこそ必要になってきます。一番望ましいのは、写真のように、バランス良く少しくびれているくらいが最高です。見付けの線に滑らかな動きがあることにより、平らの破面もより美しく見えてくるのです。段石だからといって、何でも平らな直線が良いわけではなく、あくまでも変化と調和が大事になってくるのです

 この石の場合、多少の出入りはあるものの、それほどたいしたことはなく、動きが乏しいです。赤線で表示したくらい動きがあれば、最高ですね

※ここで注意しなければならないのは、全体が直角や少しえぐれ気味に降りているのが良いのではなく、あくまでも破面の前面だけです。勝手側は、石に動きを与えなければならないので、直角やえぐれているのとは反対に、少し出っ張っている事が大事です。この石の場合、2枚前の画像でもわかるとおり、良い膨らみがあったみたいなのですが、少し欠けてしまっているのが残念です

●石の形状

 
単純な石ですので、他の景状(山・溜まり等)の石よりも、石全体の景状には厳しくなければなりません。まず上面から見た形状ですが、勝手側が厚く、破面の先に行くに従いすぼまっていくことが大事です。そうなることにより、石に素直な流れが出てバランスが良くなります。これとは反対に、破面の先が広がってしまうと、なんとも間延びした形になってしまい、やはり鑑賞価値は下がってしまいます。破面については、勝手側から順々に狭くなっていくことが最大のポイントになってきます。このことは、絶対条件とまで言えるものではなく、全体のバランスがとれているものであれば、勝手側とほぼ同じ広さや、多少は広がっていても大丈夫です

 ちなみに、私は1割くらいの広がりまでなら、なんとか許容範囲としていますが、それ以上広いようなものですとNGです

 
 次に正面から見た形状についてです。これはどのような景状の石でも共通することになりますが、まず、勝手側は、石に動きを与えなければなりませんので、滑らかにやや膨らんでいるようになっている事が必要です。また、石の流れ側の先端については、破面とのメリハリを効かすため、やはり直角に降りている事が基本になります。ただし、滑らかな角度で降りてくる土破の破面であっては、この限りではなく、砂との境界まで滑らかに降りてくる事が必要です

 最初の石は、流れ側が直角に降りているのが非常に良く、これで破面の美しさが、たとえ少しでも強調されています

 2枚目の左の石は、勝手側の押しは非常に良く滑らかに石の力(流れ)を左から右へ働かせていますが、右端(流れの先端部分)の降りがちょっと滑らか過ぎくらいに降りています。これでダメなわけではありませんが、平らな部分がもう少し伸びていると最高でした
 もちろん、ピン直に直角に降りるのが最高というわけではありませんが、石に合った降り方をしている方が良いのに決まっています


●バランス
 今まで書いてきたことは、約束事みたいなもので、覚えてしまえば誰でも理解できる事なのですが、このバランス感覚だけは、特に『○対○が一番良い』というようなものではなく、あくまでも、石の力関係を見抜く目と美的センスによるものだろうと思います。ですから、文章で表現するのはなかなか難しいため、写真を見ながら少し触れてみたいと思います
 
 右の石は、今回の教材用にと撮影した石ですが、これでは上段が明らかに小さすぎます。これくらいの面積の上段であれば、2.5倍ほど高くなければならず、逆に、これくらいの上段のボリュームであるのなら、下段が3分の1程度の厚さにならないとバランスがとれません
 つまり3分の2ほど砂に埋めてしまえば、バランス的にはかなり良くなるのです。ところが、それくらい厚みのある水盤はあるものの、いざ据えてみますと、深い水盤の上にちょこんと石が乗っている感じになってしまい、やはりいけません
 ですから、このような石の場合は、浅い水盤にできるだけ沈めて飾るようにします。そうすることにより、石を最大に活かすことができるのです。欠点を修正することができるのは盆栽ですが、水石は修正することができず、飾り方(据え方)でカバーするのですが、これが水石の醍醐味かもしれません

 

 これは、高土破です。石全体の景状は、なかなか面白いのですが、石の高さやボリュームと比べると、やや破面の広さに物足りなさを感じます。破面のある位置が2cm程下にあるか、赤線を引いたくらいに全体が纏まっていれば、バランス的にはちょうど良いのですが、こればかりは思うようにいきません(笑)
 それでも、これくらいであれば、まあ許容範囲内くらいではないでしょうか









 この石は、全体の形状自体はかなり纏まりがあり良いのですが、肝心要の勝手側の裾に欠点があります。破面・山・前面・右裾と、全体としては、かなりまとまっているのですが、勝手裾が惜しい石ですね

 でも、これくらいは我慢するしかなく、多少の欠点はあろうとも、これくらい纏まりがあれば、まあまあ見られる石でしょう





 ここまで解説すれば、土破と段石については、ある程度はわかっていただけるものと思います

 でも、これだけでなく、さらに付け加えなければならないのは 石質  川擦れ です。形状が整ったうえで、石質が良く、川擦れも良ければ、名石の仲間入りができます
 ここまで読んでいただければ、いかに段石と土破が難しい石か、おわかりになっていただけるものと思います。今まで書いた条件をすべて満たす事ができる真黒石でもあれば、まあ、天下一品といった感じでしょうか。【ありそうで無い】というのが、土破と段石の名品です。もちろん、世間は広いですから、すべてを満たしている石を持っている人はいると思いますし、川にも必ずあるはずです。私も、この石を目指して探石しています(笑)。このような石があれば、これこそ【一生一石】といったところでしょうか

 最後の写真ですが、私の拾った石では、まあまあの石です。川擦れの良い黒石で、全体の形状もまあまあなのですが、上段に比べてバランス的に下段がちょっと弱いです(もしくは、上部が強すぎです)。もう一伸びあれば、かなり良い石になれるのですが、そんなに甘くはありません。川擦れが良いだけに惜しい石です

ここまで何点か書いてきました要件については、すべてが必須要件ではありません。すべてを満たしていれば名石の仲間入りができるということだけで、欠けている項目があるからといって、水石として成立しないわけではありません。河原で拾う時や自分持っている石が、客観的にどうなのか?・・・・・が参考になれば幸いだと思っています




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