水石事始め

 水石を始めた理由というのは、人それぞれだろうと思いますが、今回は私が水石を始めた理由といいますか、きっかけについて少し書いてみます

 盆栽を長いことやっていましたので、水石という趣味があることは知っていたのですが、きっかけは平成3年に遡ることになります。当時、職場の異動により、新しい部署で仕事をしていたのですが、そこの上司がたまたま水石家だったことが、きっかけといえばきっかけになった始まりです
 当時の私の趣味は、野生鳥獣の観察(主に猛禽類の研究)がメインで、盆栽を少々楽しんでいるくらいでした。水石のことは知っていたのですが、まったく興味はなく、水石のような無機的なものよりも、生きている盆栽や山野草をいじっている方が、はるかに楽しいし風情もあるように思っていました

 そんな時に上司になったAさんは、水石と盆栽の両方をやっていて、一雨会の会員でもありました。盆栽仲間であったということもあり、盛んに水石趣味を勧められたのですが、当時は、「たかが石っころを拾ってきて、水盤に飾る趣味では、自身の技術により良くなっていく盆栽に比べれば、まったく面白みの無い趣味だ」と思っていましたし、ほとんど興味もありませんでした
 当時は、休日になると、あちこちの山野に出かけては、猛禽類の調査や研究をしていまして、その事を知っていたAさんは、「出かけた時にでも良いから、水石になりそうな石があれば拾ってきてくれ」と頼まれ、それくらいだったら時間つぶしにでもなるからと、猛禽の観察に出かけては、帰りがけに釜無川や富士川の河原を歩くようになったのです

 本などで水石の写真を見たり、実際の水石も幾度となく見ていたので、山の形をしたこの程度の石なら、河原に行けば普通にあるはずだと思っていたのですが、河原に行っても丸いのや四角っぽいのは、たくさんあるのですが、山とか溜まりの石は、ほとんど見かけることはなく、何度となく【それっぽい】石を拾っては見せていたのですが、ほとんどの石が水石として合格する事はなく、拾ってきてはみるものの、ほとんど捨てられていました(笑)

 そんな事が、しばらくの間続いていたのですが、そのうちに少しずつ見られそうな石も拾えるようになり、Aさんも喜んでくれるようになりました。とは言いましても、当時は、川擦れの良い抽象的な山型石などのような物は、まったく興味もなく、ジャクレ石にしか目がいきませんので、ジャクレ石を専門に拾っていたのですから、たまには良いのも拾えていたのかも知れません(拾った石は、すべてAさんに差し上げていたので、本当に良かったのかどうかもわかりません)
 石を拾ってはAさんに差し上げるということが、恐らく1年ちょっとくらい続いたのですが、知らず知らずのうちに、だんだん石にも興味を持つようになってきて、そのうち、自分でも飾ってみようかと思い始め、盆栽屋さんに行って安い水盤を2枚ほど買ってきて、Aさんに砂を貰い、試しに家(オンボロアパートです)の下駄箱の上に置いてみたところ、これが想像以上に良くて、水石趣味のほんの一端に触れただけなのですが、いきなり虜になってしまい、私の水石趣味が始まったのです

 当時としては、たいしたことのない石でしたが、拾って眺めているだけではまったく面白くなかったのですが、いざ水盤に据えて飾ってみると、これがなかなか綺麗でして、山に行った帰りに河原から拾ってきた石だけで趣味が成立するという事は、手間隙掛かる盆栽から比べれば、はるかに楽な趣味で、なかなか時間の取れない私にも合っている趣味だと思い、少しずつ水石にはまっていく事になったのです

 とはいえ、まだまだ河原から拾ってきたジャクレ石を2枚しかない水盤に交代で飾るくらいでしたので、本当の楽しみについては、ほとんど知らなかったのですが、まあ、最初なんてこんなものでしょう。そのうち、ただ飾るのには飽きてしまい・・・・・飽きてしまったと言いますか、実際は飾り方などまったく知らずに、無手勝流で飾っていたのですが、これが、どうもしっくりこない事がわかってきたのです。このようなことを続けていても進歩が無いと思って、水石会にでも入会して、少し勉強する必要があるかなと考えるようになり、いくつか水石会を探しましたところ、家のすぐ近くに小さな水石会があることがわかり、この会に入会させていただき勉強する事にしました
 本当はAさんの会(現在私が所属している会です)にでも入会しておけば良かったのかもしれませんが、当時の会は、一雨会の会員さんが4名もおり、過去にも一雨会の副会長を4人も輩出している名門の会でした。当時、Aさんを始めとして、何人かにも声を掛けていただいたのですが、私には少々敷居が高すぎると感じ、近所にある水石会を選んで入会させていただきました

 その会は、跫の会という会でして、この会でも優秀な先輩方がいたため、水石全般、特に石の見方について、基礎からみっちりと教わる事になり、いろいろとお世話になりました。跫の会につきましては、数年後に会長が亡くなってしまい、それ以降は、しばらく休会状態になってしまって、現在の会に入会させていただき、今日に至っているという感じです

 こうやって振り返ってみますと、平成3年から上司の依頼により石を拾い始め、正式に水石を始めたのは、平成4年か5年くらいからでしょうか。今年で13年〜14年にしか経っていないのですが、盆栽のように手入れや日常の肥培管理が必要のない水石は、ズボラな性格の私には、ちょうど合っている趣味のようで、日常の管理がいらない代わりに、拾ったり飾ったりする時に、石を見切ったり・長所を生かしたり・短所を修正したり・季節感や景色感を表現したりと、なかなか知的なところがあり、頭を少しでも柔軟にしていかなければ、上手に飾る事もできないところ等、あまりの奥の深さと、それらを追求する事の楽しさに惹かれて、今まで続けてきました。もちろん、水石の持つ奥深さを探求するためにも、今後も続けていきたいと思っています

 探石は、石を拾う事はもちろんですが、自然の中の河原を歩くことにより、気分転換やストレス発散になるだけでなく、石の上を歩くことにより、足の裏にある各所のツボが刺激されて、なんとなく体調も良くなるような感じもしています。唸ってしまうような石は、なかなか拾う事ができませんが、まあまあ楽しめる石であれば、それだけで充分でしょう
 現在は、まだ石の会のなかでは一番若いですし、足が弱くなるまでは、ある程度探石を楽しみたいとも考えています。足が弱くなり探石も満足にできなくなってからは、飾りを極めていきたいものだと漠然と考えています




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