2006年4月編

今月の飾り

2005年10月の研修会より、勉強方法を少し変えてみました。それは、飾りの中で　『一番良い点』　と　『一番悪い点』　を見つけるという方法です。従来の良い点だけを見つけるという方法も、いわゆる「あら探し」になることなく、飾りの良い点が理解できる方法としては適切なのですが、飾りの悪い点を把握していく事も、ミスの少ない飾りを行う上では勉強になるだろうということで、この方法に変えました 　また、その発表方法についても、今までは、各人が順番に良い点を発言していくという方法でしたが、この方法ですと、最後の方に発言する人は、先に発言する人達の意見を耳にしてしまうので、いろいろと迷ってしまう場合もあります。そのため、今回からは、各人がそれぞれに渡された紙に、『一番良い点』と『一番悪い点』を書いて講師に渡し、最後に講師がそれを発表し、勉強をしていくという方法です
釜無川産滝石 九輪緑釉楕円水盤 斑竹平卓	掛け軸は、翡翠の図	添えは、雪柳	3点飾り
今回の研究会は、用事があって参加できたのがだいぶ遅くなってしまい、どのような研修の流れになったのか、まったくわかりませんので、どのように良い点や悪い点が指摘されたのか不明のままですが、お許しください。そのため、思いつくままちょっと書いて見ます ●飾りの解説 　今回の飾りは、いよいよ春真っ盛りの時期になり、過ごしやすくなったとともに、想像以上に暖かい日があったり、野外の山野でも芽吹きが始まりました。生や命を実感できる季節です。この飾りについては、滝石を主役に、魚を加えた翡翠（カワセミ）の軸と、添え草にはユキヤナギが添えられています 　主石の釜無川石については、太く雄渾な滝が流れ落ち、滝見台までついている石で、緑釉の水盤と斑竹の卓と取り合わされています。真夏に鑑賞したい飾りですが、この時期でも充分良いですね。石（石というよりも滝部分かな）が意外と強く目を引くので、軽めの道具合わせが良く、切立ちの水盤と軽めの斑竹卓との取り合わせも、ただ合っていると言うだけでなく、品良く調和しています。軸の翡翠についても、水中に飛び込んで魚を加えて出てきた時の図で、動きがあって良いし、滝壺に飛び込み採餌している姿が目に浮かび、石と合っているだけでなく、良く調和して石の邪魔をしていないのがよくわかります。添え草は、ユキヤナギの細幹斜幹をあわせ、興趣を増しています。添えの地板が、少し大きめに感じる人がいるかもしれませんが、そんなことはなく、これくらいの大きさで充分樹が働いています 　『石・軸・添え』の組み合わせが、『静・動・静』という組み合わせも、調和しているだけでなく、席に躍動感が生まれているのも、なかなか良い点だと思っています 　雑談の中では、滝石の事に話が及び、この石についても議論されました。この石で一番の欠点は、やはり全体の景状でしょう。特に左裾の収まりが良くなく、右稜線が良い押しをしているのに対し、踏ん張りがキツ過ぎるのが、一番目立つ点で、左の裾が反対にすぼまっていれば、グンと良くなるだろうと思われます 　滝についても、石に対して広すぎるのが惜しまれます。滝として強調されている事が決して悪いわけではありませんが、ここまで滝に主張されてしまうと、幽玄さの風情や奥ゆかしさに欠けてしまい、ちょっと強すぎるのではないでしょうか。左の壁を滑めているような様も、あまり良くありません 　もう一点は、滝見台についてです。滝見台も芸としては良いのですが、位置があまり良くありません。滝見台というのは、滝の左右どちらかにあるのが良く、この石のように正面にあるのは、風情としては劣ってしまいます。できれば、左右どちらかに振れているのが理想です 　などと、マイナス点ばかり書いてしまうと、あまり良くないのかなと思われても困り、あくまでも欠点だけを指摘し、最高になるのにはどこが良くないか、ということだけです。実際は、石の縦横比や滝との諸バランスも、少し欠点はあるものの、かなり良く、滝にしてもこれほど雄大なものは珍しく、幽玄さみたいなものは欠けるにしても、圧倒する力強さは、なかなかお目にかかれないものでしょう。滝見台についても、位置的にわずかな問題はあるものの、これほど綺麗に感じさせる滝見台というのも少ないもので、貴重な芸であります。実際に目の当たりにしてみますと、多少の欠点を補ってありまるほどの良さがあり、滝石としては、まあまあ良石のクラスの石です 　余談になりますが、私も２石ほど良い釜無川の滝石を拾ってあったのですが、前の家に住んでいるときに、盗難にあってしまい、今は良い物を持っていません。石については、何回か盗難にあって、合計で２０石ほどはなくなっています。滝石だけで半分以上を占めていますので、水石関係者ではなく、一般の人が持っていったのだろうと思っていますが、私としては、お気に入りの滝石が２石も盗まれたのは大きなショックでした

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