2007年2月編

今月の飾り
 2005年10月の研修会より、勉強方法を少し変えてみました。それは、飾りの中で 『一番良い点』 と 『一番悪い点』 を見つけるという方法です。従来の良い点だけを見つけるという方法も、いわゆる「あら探し」になることなく、飾りの良い点が理解できる方法としては適切なのですが、飾りの悪い点を把握していく事も、ミスの少ない飾りを行う上では勉強になるだろうということで、この方法に変えました
 また、その発表方法についても、今までは、各人が順番に良い点を発言していくという方法でしたが、この方法ですと、最後の方に発言する人は、先に発言する人達の意見を耳にしてしまうので、いろいろと迷ってしまう場合もあります。そのため、今回からは、各人がそれぞれに渡された紙に、『一番良い点』と『一番悪い点』を書いて講師に渡し、最後に講師がそれを発表し、勉強をしていくという方法です
奈良井川産島型石
志那埜庵緑釉撫で角長方水盤
真塗り平卓
掛け軸は朧月に散り桜の図


添えは雪柳

3点飾り


 今月の飾りは、私の師匠の飾りです

 何ともはや、言葉もないとはこの事で、今までに、数多くの水石飾りを見てきたのですが、石の良さもさることながら、総合的な品格の高さと格調美は過去最高のものです

 この石は、奈良井川の梨地真黒で、硬度が高い事もありなかなか形のでない石なのですが、この石がこのような変化を持ち、素晴らしい景状をなしている事には、いささか驚かされます。また、真黒にもかかわらず痩せも素晴らしく効いていまして、奈良井川の真黒石の中では、トップクラスどころか、間違いなくベスト3に入る石でしょう。それくらい素晴らしい石で、写真では、その素晴らしさの全貌をお伝えする事はできませんが、持ち込みの良さとも相まって、グイグイと心を引きつけられる名石です

 その名石を、志那埜庵の緑釉撫で角短冊水盤に据え、真塗りの平卓と取り合わせているのですが、この水盤はこの石に合わせて特注で注文した水盤で、同じ物を20枚焼かせて、その中で一番良い作の物です。志那埜庵の中でも代表的な水盤の一枚で、石に合わせて作っているわけですから、水盤との取り合わせは抜群です。卓については、真塗りの平卓ですが、すでに長い年月を経過しているため、真塗りの黒い部分がかなり薄らいできてしまい、透き漆に近い感じになっていまして、なかなか良い感じの卓になっています

 軸は「朧月に散り桜」ですが、本来は散り桜なので、3月の画題になってしまうのですが、この花びらを梅の花びらに見立てて飾っています。そのため、2月でも大丈夫ということになります。見立てると言いましても、この花びらは、桜の花びらのようにキチンと描かれているわけではなく、なんとなく桜の花びらのように描かれているだけですので、まあ良いかなと。朧月があるから桜の花びらだろうと言うことで「散り桜」と書いてはいますが、実際は何の花びらかはわかりません(たぶん桜で間違いないと思うのですが・・・)

 石・水盤・卓と、三位一体で調和しているというのはこのことで、『道具使いが合っている』だけという低いレベルではなく、はるかに高いレベルで調和しています。石・水盤・卓が合っている(調和している)という事は、水石飾りの終着点ではありません。三位一体というのは、あくまでも諸飾りの【入り口】でしかなく、最終的に目指したいところは、その飾りにどのような美を表現するのか・・・ということでして、飾りを通して、侘び・寂び・枯淡の味わい・格調美・渋さ・幽玄さ・雅やかさなどのように、文章や数値化できない美を表現するからこそ芸術と呼べるに相応しいものとなります

 今回の飾りを通しては、品格の高さと格調美の高さがハイレベルで表現されていまして、まさに水石飾りの醍醐味に触れる事ができました。これぞ水石飾りの神髄という感じですね

 日本水石協会で行われている「名品展」や「水石総合展」、あるいは大観展などでは、名石と呼べる石に出会う事ができるのですが、それは【石の良さ】だけの事が多く、上記のような美を表現された物(飾り)には、なかなか出会う事はできません。久しぶりに水石飾りを見て感動しました

 「これからも、このような飾りを目指そう」と思う反面、「このような飾りが行えう事ができるのか?」・・・という、いささか自信を失う面もあり、複雑な気持ちにさせられた飾りです。最後になりますがこの石の 拡大画像 を添えてみます。どうぞご覧になってください。硬質な真黒石にもかかわらず、この変化と調和ですから凄いの一言しかありません





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