11月の部

床の間飾り

主石は佐渡赤玉山型石
幅17×奥行き11×高9
水盤は陶翠変わり緑釉楕円・欅平卓
軸は、花梨の図


添えは、鋳銅製井戸


3点飾り


 11月となると、いよいよ秋本番といいますか、深まる秋を楽しむのには最高でもありますが、下旬にもなりますと、そろそろ冬の足音が聞こえてくるようになります。それでも、温暖化の影響なのか、ここのところ月の上旬は、まだまだ暖かい日が続き、紅葉前線も年々遅くなっているようにも思えます。そのようなこともあり、今回は、深まりゆく秋を意識して飾ってみました

 今月の主役は、佐渡赤玉の山型石です。佐渡の赤玉石は、鉱物的にはいわゆるジャスパーと呼ばれている硬質な石で、純粋に赤ばかりでできているものは少なく、黄色が混じっている事に佐渡産の特徴があります。その山型石を陶翠の変わり緑釉の楕円水盤に据え、欅製の平卓と取り合わせてあります。軸は花梨の図、添えには井戸を置き、3点飾りとなっています

 佐渡産の赤玉石は、黄色が良く混じり、黄色部分が大半な物や黄色勝ちな物を黄玉と呼んだり、錦紅石と呼ばれている石があったり、また緑が混じった石もある色彩石の一つです。硬度が非常に高く、日本の石中でも一番高く、石というよりもほとんど玉に近い硬度をしています。そのため、川や海で転石しても水石向きの形がほとんどできずに、古くから鏨で整形された石が出回っています。流通している石の90%以上は手が入っている石です。赤玉石と形ができにくい茅舎石は、人工的に加工しても許容している人が多いです

 この石は、赤玉石というよりも、どちらかというと黄玉に近い石で、古い時代に加工された石です。この石を陶翠の変わり緑釉水盤に据え、欅製の平卓と取り合わせています。赤玉の赤と黄色を、それぞれ紅葉と黄葉に見立て、飾ってある事は言うまでもありません

 軸は花梨の図です。花梨はすでに大半が落葉しているものの、色鮮やかな黄色い実が付いていて、いかにも晩秋の風景という感じです

 添えは、鋳銅製の井戸です。主石が色づいた紅葉の山で、軸も花梨ですから、草物の添えを置くことができません。また、花梨は昔から栽培種でしたので、添えを置くのなら、できるだけ人間生活に近いものが良いため、いろいろ考えた末、この井戸をあわせてみました

 山・花梨・井戸との組み合わせで、「紅葉に染まった山をバックにした庭の風景」といった感じでしょうか。井戸よりも茅舎の方が、よりリアルにその実景を感じる事ができそうなのですが、山・花梨・茅舎よりも、山・花梨・井戸の方が、景色は狭くなりそうに思いますが、その分景色に奥行き感が出て良いかなという感じで、今回は井戸にしてあります

 今回の飾りでは、赤玉石と軸の花梨の扱いが、課題といえば課題でした。軸自体は、晩秋から初冬の景色であり、赤玉も秋の景色ですから、季節感がダブってしまうからです。いろいろと考えた結果、軸の季節感は強いものの、赤玉の季節感はそれほど強いものではないので、まあ、これくらいならダブっても見苦しくないかなと思い。あえて両者を取り合わせてあります
 この飾りで、軸だけを季節感の無いものに変えるという手段もあるのですが、仮に「月」「雀」「構造物」などを代わりに掛けても、それほど良い飾りにはなりそうもなく、まあ、こんなものでしょう



玄関飾り

主飾りは鹿の添配飾り
欅製地板
単飾り

 秋の定番動物といえば、昔から鹿なのは有名でして、江戸時代くらいから鹿の添配はたくさん作られていて、そのほとんどが夫婦鹿になっています。秋の展示会では、おなじみの添配で、席飾りなどに良く利用されています

 鹿の添配については、大きめのもの(20〜25cm)を主役に使ったり、小さめのもの(10cm前後)を添えに使うのが一般的です。この鹿の添配については、いわゆる「型物」の一番安価な添配で、ちょっと気の効いた人は、鼻から馬鹿にして持つことも、まず無いであろう安物です。まあ、夫婦(雌雄)で持っていても、小品の水石や盆栽に使えるくらいで、ほとんど使い道はありません。なんとか使い道はないだろうかといろいろと考え、思い浮かんだのがこの飾りです

 数年前から構想を練り、骨董市などで、安価に売られている雌だけを買い集めて、なんとかこの飾りに結び付けてみました。一番気を使うのは、やはり地板です。玄関の奥行きがないスペースに飾るわけですから、やや短冊気味の地板が良く、今回は、欅製の波形地板を使っています

 『群れ』の景色ですから、草原がイメージできるよう少し広めの地板が望ましいところで、写真のようにやや広めの地板に飾っています。地板の厚みについては、薄ければ品良くなりそうですし、やや厚め(今回の地板くらい)でも、野の雰囲気が出て、これはこれで良いものだと思っています

 一番問題になるのは、『地板の模様(紋様)』です。上に載せている添配が3〜4cmくらいの小さなものですから、板に紋様があると、正直なところ煩わしくなってしまいます。紫檀などのように暗く木目が目立たないものなら良いのですが、柔木では、時代が付いて木目が見えないようになっているものの方が望ましいですね

 紫檀でできたこれくらいの地板があれば良いのですが、持ち合わせがありません。そのため、この欅製の地板を合わせていますが、ちょっと木目の煩わしさを感じてしまいますが、まあ、これくらいは我慢といったところでしょうか

 今回は、玄関の狭いスペースに飾っていますが、あと4〜5頭雌がいれば、床の間飾りの主役にも充分使えそうです。飾りに興味のある方は、雌を買い集めてチャレンジしてみてください。床の間で、「散り紅葉」の軸などと取り合わせれば、かなり良い雰囲気になりそうです。あまり見ることのない飾りだと思いますので、面白いのではないかと考えています。ただ、このような飾りについては、鹿だから可能になっていますので、他の物でも代用できそうにも思いますが、箱庭的にならないよう気をつけることが必要でしょうか
 いずれにせよ、初めて行った飾りですので、まだまだ改良の余地はありそうで、いつかは、もう少し発展させた飾りをしてみたいものです

 ちなみに、この手の型物は、一番大量に出回っているもので、古いものは鋳銅、近作のものはアンチモニーでできています。最初は、高岡で作っていましたが、その型を大阪の業者が買い取り、現在は大阪で作られています









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