厳しかった残暑もおさまりましたが、秋の長雨(霖雨)期に入ってしまい、まだまだスッキリと青空が広がる秋晴れの日は少ないですが、今月も半ばくらいになれば、気持ちの良い日々が続くことと思います。しかし、少しずつ色づいてきた木の実やススキの穂には、秋への移ろいを感じさせ、回りの景色も秋へと動き始めています
今月の主役は、ススキです。これはススキと言っても普通のススキではなく、たぶん糸ススキです。この糸ススキを皿型の鉢に植え、スズタケ製の地板と取り合わせています。軸は月の図、添えには陶製の良寛を置き、3点飾りとなっています
この糸ススキは、園芸店で購入したものでして、正式には「○○糸ススキ」か「○○ススキ」だったと記憶しているのですが、残念ながら正式名称を忘れてしまいました。まあ、それほど正式名称にこだわるほどのものではありませんので、とりあえず「糸ススキ」と呼んでいます(笑)
植えてある皿鉢は、写真ではわかりにくいかと思いますが、ちょっと赤みがかかった感じに薄い釉薬が掛けられている鉢で、色調からすればそれほどススキと合う鉢とも思えないのですが、形状がなかなか面白く、ススキと合いそうなのでこの鉢を使っています
初秋〜秋の主役として使う草物にはベタではありますが、ススキが一番良く似合い、季節感も抜群ですし、その風情たるや何ともいえなく、秋の主役といってもふさわしいのではないかと思っています。私も好きな草でして、全部で4鉢も作っているくらいです(笑)。今年は、この鉢が面白そうでしたので、これを飾ってみました。どこが面白いかと言いますと、主になるメインの草(茎)が曲がって生えた事にあります。いつもなら、生育途中で真っ直ぐに矯正するのですが、今年は、そのまま放置しておいたところ、このような姿になり、これもまた一興とばかり使いました
本来なら、株元ももう少しスッキリと整理しておきたいのですが、来春に株分けでもしようと考えていますので、株元の整理がしておらず、少し醜い姿になっていますがご容赦ください
軸は、ベタではありますが月の図です。日本画の画題でも「秋草に月」というくらい、秋草と月を一緒に描かれた絵が多く、ススキが描かれている絵の7割くらいは月が一緒に描かれているくらいで、細身のススキと丸い月との相性と言いますかバランスは非常に良く、その風情ともあいまって、昔から好まれています。そのようなこともあり、シンプルな月を使っています。今月は、お月見もあるので、それにもちょうど良いかもしれません
この2点でも飾り的には充分だろうとは思いましたが、若干の寂しさも感じられます。これに置いて調和するような添えは、人間か動物が一番似合いそうで、今回は陶製の良寛さんを添えてみました。添えとしては、少し大きめに感じられはしますが、ギリギリ許容範囲内くらいであると思っています。
ススキに一番合いそうな添配は、何と言っても『旅の僧』でしょうか。これが一番合うのではないかと思っていて、次はカマキリ・キリギリス・コオロギなどの昆虫でしょうか。ただし、昆虫類は小さめの添配が多く、大きさの面でススキと合わせるのは難しそうです。旅の僧にしても、数体持ってはいるのですが、大きすぎたり小さすぎたりと、なかなか合う物がないので、旅の僧らしく見える良寛さんを使っているのです
今回の飾りについては、ひん曲がってしまった主草(茎)のススキを活かす事ができるか?・・・・・というような観点から、この鉢を主役にして飾りを試してみました。ススキと言えばピンと直立したものが多く、凛々しい姿の中にも風情を感じさせるというのがススキの一番優れているところなのですが、今回使った鉢は、とても凛々しい姿とは程遠い姿となっています。それでも、このような姿のススキであっても、なんとか飾りに耐えうるように感じています
それと、もう一点目に付くと思われるのは、添えの大きさでしょうか。主草のボリュームに対しては、少し大きめであるのは否めません。人によっては許容範囲を超えていると思われる方もいるかと思います。私自身は、実際にこのように飾ってあるわけですから、限界ギリギリではあっても、まあ大丈夫かなと感じています。もう少し主草にボリュームがあれば、バランスは良くなると思うのですが、あまりボリュームがあり過ぎますと、一間の床の間では大きすぎてしまいなかなか難しいところです。この良寛さんを使わないのが一番なのでしょうが、ススキとあまりに合う添配なので、無理して使ってしまいました。ここらは賛否の分かれるところかもしれません |