厳しい残暑が続いていますが、朝晩はめっきり涼しくなり、いよいよ夏も終わりを告げ、秋に向かっているのを肌で感じることができます。うるさく鳴いていたセミも、だんだん声が少なくなり、コオロギなどの夜の虫に取って代わるようになり、いかにも初秋を思わせるのが、この9月でしょうか。夏バテした体を、少しでも休ませたい月でもありますね
今月の主役は、津谷川産の土破石です。津谷川とは聞き慣れない川だと思いますが、宮城県の北部にあり、真黒石を産出する川です。左に主峰のある土破石で色丸善(均釉)の楕円水盤に据え、黒檀製の平卓と取り合わせてあります。軸は赤蜻蛉の図、添えにはミズヒキを置き、3点飾りとなっています
この石は、残念ながら津谷川独特の真黒石ではなく、少し筋の入った灰黒系統の石ではありますが、景もまあまあ良いし、川擦れも良く、見付の変化は乏しいのですが、山と破面・石全体のバランスも、まあまあ纏まっています。 裏面 も土破形をしていて、こちらも面白そうではありますが、裏面を見てしまうと、水盤に収まらないため、こちらを使うしかありません
水盤は、色丸善の均釉楕円水盤を使っています。色丸善の中でも一番多いのが、この均釉であり、磁器としての堅さや、均釉の色合いから来る冷たさはあるものの、夏使いとしては、楽しめる水盤でもあります。初秋の9月ですから、この色合いは少し涼しげかなとも思いましたが、まあ10月くらいまでは均釉でも大丈夫ですので、今回は、この水盤を使い、卓は黒檀の平卓を取り合わせてあります
軸は、赤蜻蛉の群飛図です。赤蜻蛉というと晩夏からの季題になり、8月のお盆過ぎから9月一杯くらいまでは充分使える画題で、この軸のように単独でなく群れているものは、晩夏ではなく初秋の景ですので、今月の画題としては、ちょうど良いと思っています。特に主石が土破であり、土破の破面は平地の景ですから、赤蜻蛉が山から平地に降りてきて、群れている感じも受け、景色的にもマッチしていると思っています。表装はイマイチなのですが、直すお金がないので、見難いのですがこればかりはご容赦下さい
添えについては、いろいろと迷ったのですが、今回はミズヒキを使っています。主石が破面を持つ土破ですので、形状のバランスから考えると、天突き型の草が似合うのですが、この鉢は株のバランスも悪くありませんし、穂の出方も良いので、このミズヒキを合わせてみました。もう一点の候補はイタドリでしたが、形状のバランスから考えると、ミズヒキの方が良いかもしれません
今回の飾りについても、色彩に少々不満を感じています。写真でもわかるとおり、水盤の均釉が非常に目立ちます。他の色を見ると、次に目立つのは軸の表装色であり、これも水色系統なので、水色(青)系統ばかりがちょっと目立ちすぎてしまい、色がダブってしまうとともに、色彩のバランスも正直イマイチと思っています。これを解消するのには、水盤の色を変えるか、掛け軸の表装を変えるしかありませんが、この石に合う水盤はこれだけです(本当は、もう少し浅めの方が良いです)し、軸の表装もすぐには変えられませんので、今回は、これで我慢するしかありません。今回の飾りの場合、軸の表装を直すのがベストでしょう |