梅雨が空け、いよいよ本格的な夏本番の到来ということで、例年よりも梅雨明けが遅く、短い夏になるだろうと想像しているのですが、それにしても、かなりの猛暑が続いています。山梨では、連日36〜38度の日々が続いており、夏に入ったばかりというのに、既に夏バテ気味です(笑)
今月の主役は、富士川産の溜まり石です。写真でもわかるように、高溜まりの石で九輪の楕円水盤に据え、花梨製の平卓と取り合わせてあります。軸は燕の図、添えには西洋シノブの3点飾りとなっています
この石は、富士川産の青石系の石ではありますが、かなり硬質の石です。景はせり出しの高溜まりになっていて、鼻先がちょっと持ち上がり気味なのが、欠点といえば欠点なのですが、反面、この石の大きな特徴ともなっていて、ある意味、この石の持ち味のような気もしています。ここが無ければ名石になりそうな気もしますし、ありきたりの石にもなりそうな感じもしますし、良かれ悪しかれ『持ち味』という表現がピッタリするような石ではないでしょうか
(上部は見えませんが、良い溜まりになっています)
水盤は、九輪の楕円水盤を使っています。九輪の代表的な水盤には、確か【深海】という銘の水盤があり、この水盤と同じように、白釉の上に緑釉が掛け流されている水盤で、ひょっとしたら、同時期に作られた兄弟水盤かもしれません。緑釉の流し方がちょっと単調ではありますが、夏使い専門の変わった水盤です。上部にボリュームのあるこの石に対しては、少し弱めかもしれませんが、まあ、これくらいなら許容範囲内です。卓は花梨製の平卓を取り合わせてあります
軸は、月に蝙蝠の図です。蝙蝠も夏使いの典型的な画題で、6月から9月上旬くらいまでなら使え、どのような景状の石にでも合う便利な画題です。蝙蝠というと、日本では不気味に思われているかもしれませんが、中国では福を呼ぶ動物として考えられていて、日本でも戦前くらいまでは、古くは根付けや釘隠し、服地・寝具・陶磁器等に蝙蝠が描かれるなど、そこそこ親しまれていたようですが、戦後になるとパッタリと使われなくなった意匠です。絵では、ほとんどが「月に蝙蝠」か「柳に蝙蝠」の画題で、どちらも夏使いには良い画題となっています
添えについては、西洋シノブを使っています。普段は景色に合わせて添え草を選んでいますが、今回は、景色に合わせるのではなく、涼感を得るためにこの草を使っています。実際は、西洋シノブとはいえ、シダの仲間でしょうから、溜まりにシダで問題はないのですが、今回は涼感を優先させ、涼感を感じるこの根洗いを選び3点飾りとしました
今回の飾りについては、卓に不満を感じています。花梨の卓とこの水盤の色のマッチングが、どうしてもイマイチな感じになってしまいます。本来なら紫檀の卓でも合わせれば、ちょうど良いとは思うのですが、このサイズの卓で紫檀の卓を持っていませんので、不満を感じつつもこの卓を使っています。紫檀や真塗りの卓であれば、まったく違った印象になると思うのですが、こればかりは仕方がありません
ちなみに、花梨の良くないところは、少し赤っぽいところで、この赤っぽさと水盤の色調があまり良く調和しないことと、赤っぽいことにより、暖かみを感じさせてしまうことが、あまり良くありません |