8月の部

床の間飾り

主石は富士川産溜まり石
幅28×奥20×高11
水盤は九輪緑釉流し楕円水盤・花梨平卓
軸は月に蝙蝠の図


添えは西洋シノブ


3点飾り


 梅雨が空け、いよいよ本格的な夏本番の到来ということで、例年よりも梅雨明けが遅く、短い夏になるだろうと想像しているのですが、それにしても、かなりの猛暑が続いています。山梨では、連日36〜38度の日々が続いており、夏に入ったばかりというのに、既に夏バテ気味です(笑)

 今月の主役は、富士川産の溜まり石です。写真でもわかるように、高溜まりの石で九輪の楕円水盤に据え、花梨製の平卓と取り合わせてあります。軸は燕の図、添えには西洋シノブの3点飾りとなっています

 この石は、富士川産の青石系の石ではありますが、かなり硬質の石です。景はせり出しの高溜まりになっていて、鼻先がちょっと持ち上がり気味なのが、欠点といえば欠点なのですが、反面、この石の大きな特徴ともなっていて、ある意味、この石の持ち味のような気もしています。ここが無ければ名石になりそうな気もしますし、ありきたりの石にもなりそうな感じもしますし、良かれ悪しかれ『持ち味』という表現がピッタリするような石ではないでしょうか
(上部は見えませんが、良い溜まりになっています)

 水盤は、九輪の楕円水盤を使っています。九輪の代表的な水盤には、確か【深海】という銘の水盤があり、この水盤と同じように、白釉の上に緑釉が掛け流されている水盤で、ひょっとしたら、同時期に作られた兄弟水盤かもしれません。緑釉の流し方がちょっと単調ではありますが、夏使い専門の変わった水盤です。上部にボリュームのあるこの石に対しては、少し弱めかもしれませんが、まあ、これくらいなら許容範囲内です。卓は花梨製の平卓を取り合わせてあります
 軸は、月に蝙蝠の図です。蝙蝠も夏使いの典型的な画題で、6月から9月上旬くらいまでなら使え、どのような景状の石にでも合う便利な画題です。蝙蝠というと、日本では不気味に思われているかもしれませんが、中国では福を呼ぶ動物として考えられていて、日本でも戦前くらいまでは、古くは根付けや釘隠し、服地・寝具・陶磁器等に蝙蝠が描かれるなど、そこそこ親しまれていたようですが、戦後になるとパッタリと使われなくなった意匠です。絵では、ほとんどが「月に蝙蝠」か「柳に蝙蝠」の画題で、どちらも夏使いには良い画題となっています

 添えについては、西洋シノブを使っています。普段は景色に合わせて添え草を選んでいますが、今回は、景色に合わせるのではなく、涼感を得るためにこの草を使っています。実際は、西洋シノブとはいえ、シダの仲間でしょうから、溜まりにシダで問題はないのですが、今回は涼感を優先させ、涼感を感じるこの根洗いを選び3点飾りとしました

 今回の飾りについては、卓に不満を感じています。花梨の卓とこの水盤の色のマッチングが、どうしてもイマイチな感じになってしまいます。本来なら紫檀の卓でも合わせれば、ちょうど良いとは思うのですが、このサイズの卓で紫檀の卓を持っていませんので、不満を感じつつもこの卓を使っています。紫檀や真塗りの卓であれば、まったく違った印象になると思うのですが、こればかりは仕方がありません
 ちなみに、花梨の良くないところは、少し赤っぽいところで、この赤っぽさと水盤の色調があまり良く調和しないことと、赤っぽいことにより、暖かみを感じさせてしまうことが、あまり良くありません



玄関飾り

主役はカリヤス
鉢幅18×高50(鉢含む)
スズ竹編み地板
添えは、木彫小舟

2点飾り


 玄関飾りは、カリヤスを主役に木彫の転配を添えた添えた2点飾りです。主役のカリヤスは、山野に普通に自生しているもので、草姿がスッキリとしていて、夏飾りに似合う草で、これを変形鉢に植え、スズ竹製の地板と取り合わせてみました。添えは、木彫の小舟を添え、2点飾りとしています

 カリヤスは、草原・崩壊地・林道脇などに多く、基本的には草原性の植物です。スッキリとした立ち姿は、涼しげな感じを受け、作っている人も少ないのではないかと思いますが、夏使いに良く合う草です。このカリヤスを、縁が波形に変形されている鉢に植え、少しでも涼しさ増すようにと、スズ竹編みの地板と合わせてあります。最初は、少しくだけた感じになるように、杉の地板と合わせてみたのですが、木彫の小舟と杉の地板がダブってしまうように感じたことも、スズ竹の地板を使った理由の一つです
 ここまで書くと、『なぜ、草原性のカリヤスに小舟?』と疑問に思う方もいらっしゃると思います。草原に小舟の取り合わせなど、ちょとありませんから、このように疑問に思われてもまったく不思議ではありません。では、なぜカリヤスに小舟を合わせたのか、少し触れてみることにします

 【見立て】という言葉が、飾りの用語としてあります。見立てるということは、実際はAというものを、似ているBという物の代わりに見立てることです。例えば盆栽においては、山柿やロウヤ柿などを普通の甘柿に見立てて飾ったりしますし、平地に生えている樹を、山にある樹のように仕立てたりするのも見立ての一種です。また、食器などの普通の陶磁器を、穴を開けて鉢にしたり、水盤代わりに使うのも見立ての一種です
 このように、【見立て】というのは、さまざまに使われ、違和感がなければ許される行為であり、また、席主や鑑賞者の楽しみ(遊び心)でもあります

 今回は、このカリヤスをススキに見立てたもので、私としては、河原や沼沢地に生えているススキと同様に考え、小舟を添配として合わせたのです。小舟を添える事により、水辺が連想され涼感が少しでも醸し出すことができれば成功だと思っていますが、いかがでしょうか? 違和感はあったでしょうか? 
 なかには、カリヤスという植物すら知らない人もいるであろうし、そのような人であれば、なおさら違和感無く鑑賞できるのではないでしょうか? 

 飾りとは、面白いものですね





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