5月下期の部

床の間飾り

主役は梓川溜まり石
幅26×奥17×高16
水盤は陶翠瑠璃釉楕円水盤
玉杢平卓
軸は睡蓮の図

2点飾り

 薫風が香る季節となり、朝晩の冷え込みもゆるやかになり、いよいよ過ごしやすい季節になってきました。この時期は、私の一番好きな時期でもあり、6月上旬くらいまでは、まだまだ忙しいのですが、気候の良さに救われる思いがしているところです
 今期の飾りは、溜まり石を使った飾りで楽しんでみようと、いろいろと苦労しながら飾ってみました。今月末に会の展示会があり、今回の展示会では、和室の床の間飾りを担当する事になっていて、普通に何でも飾って良いのであれば何の問題もないのですが、私に課された指令は、「右勝手の石・山型石以外のもの・軸や添えに鳥や動物を使ってはいけない」というちょっと過酷ものです(笑)。展示会場の和室は二間続きであり、一つは本床で、もう一つは琵琶床になっており、琵琶床で飾る方が、山型石とツバメの軸の取り合わせという事なので、私は本床に飾る事になり、上記の指令がきたという次第です。おまけに、「季節感も忘れず、できれば添えに草物は避けて、ちょっとお洒落なものを・・・」とまで釘を刺されたのですから、正直言って困りました(笑)
 制約が何もなければ、特に問題もないのですが、これだけ条件を付けられてしまうと、なかなか難しいものがあります。口で言うのは簡単なのですが、いざ、その条件に当てはまる飾りをしようとすると、それはそれは厳しいものがあり、無い知恵を働かす事になり、この飾りとなりました

 最初に主石についてですが、初夏ということもあり、滝石か溜まり石が良いだろうということになり、あとは、軸と添えの取り合わせです。いろいろと考えた結果、達した結論が、溜まり石+睡蓮の軸+苫屋船の組み合わせとなりました
 素材の組み合わせとしては、それほど悪くはなく、季節感も感じられて良いとは思うので、あとは、大きさや形のバランスを取れば良いのですが・・・・・
 最悪なのが、軸の大きさでしょうか。軸がちょっと大きめなのが一番の難点になってしまい。軸に合わせる為には、そこそこの大きさの主石を使わねばならず、主石が大きくなると、水盤も卓も大きくなってしまい、一間の床では、ちょっとボリュームが大きくなってしまうという感じになってしまいました。間の悪い事に、軸の勝手も右勝手になってしまっていますが、この絵の場合は、それほど強い勝手ではないので、これくらいの勝手違いなら、ギリギリ許容範囲という感じで、我慢するしかありません
 添えの苫屋船が横長という事もあり、主石には形的に同じ調子の石(平石系統)を使うことを避け、ちょっと変化と動きのある梓川の溜まり石を使ってみました。これに、苫屋船を添えに置いて一通りの飾りが完成なのですが、家の床の間では、添えを置くと窮屈過ぎになってしまいますので、家ではこの2点飾りとしましたが、正直言って、ちょっとしっくりしませんね(笑)。 ちなみに、 このような感じ です
 少しくらいの制約ならば大丈夫なのですが、これほどの制約があると、なかなか思ったような飾りはできないです。あまり見せたくない飾りではありますが、恥を忍んで公開しました



玄関飾り

主石は三陸海岸産山型石
幅5×奥10×高4
灰釉木瓜式水盤・竹網地板 
単飾り


 玄関関飾りは、三陸海岸の山型石を、木瓜式の水盤に据え、竹網の地板と取り合わせてみました

 この石のように極端に丈が高く、整形の山型石というのも珍しく、その風趣とあいまって夏向きの石ですので、この石を使いました。この石の特徴である「高さ」・「涼しさ」・「軽やかさ」を表現するために、ちょっと変った木瓜式の水盤と、少し明るめの竹の地板を取り合わせてあります

 今回は、この石のように丈のある山型石の事について、ちょっと書いてみます。このような丈のある石が水石として成り立つ条件がいくつかあり、このような条件を満たしていなければ、水石と呼ぶことができません。今回は、その条件について、ちょっと触れてみます

1 細身である事
 最初の条件は、なんといってもその細さが重要です。一般的な山型石では、主峰の高さ・厚み(奥行き)・裾の長さとのバランスが重要で、特にほどほどの厚み(奥行き)が求められる事がしばしばあります。ところが、この石のように単峰で、極端に丈の高い石については、厚みがあると野暮ったくなってしまい、ピラミッドのように厚みがあってしまうと、それほど丈のない石ならまだ許されるのですが、丈の高い石ですと極端に言えば水石になりません。この細さが重要になってきます

2 石の形
 単純な形ですので、ある程度までの欠点を許容していたら、かなりの石まで許容しなくてはなりません。形が単純なものほど、ちょっとした欠点がすぐに目についてしまいますので、主峰の位置・左右の稜線のバランスが取れている事、微妙な流れを持っている事、石全体が綺麗なカーブ(R)で構成されている事など、かなり厳しい条件が求められます。今回の石については、主峰のすぐ左側下のわずかな出っ張り部分が、やはり良くありません。ここが大きなマイナスになってしまっていますが、まあ、飾れる範囲内の欠点ではないかと考えています

3 石質・石色
 水石としては形が単純ですから、前記と同じように、石質・石色ともに厳しい条件が求められ、石質はあくまで緻密で硬度も高い事、石色としては、やはり真黒か黒系統の石ということになります

 こうして、条件をつけてみると、この条件すべてに合致する石は、なかなかみつからないのではないかと思います。この手の石にかぎらず、単純な形の石ほど、厳しい条件をクリアしなければ水石とは言えず、許容するレベルを低く設定してしまうと、なんでもかんでも水石になってしまいますので、それだけは避けた方が良いでしょう
 単純な石ほど、厳しい条件をクリアさせなければならないのは、この手の石に限ったものではありません。単純な形の石というのは、見所とか石の芸というのが少ないわけで、一つ欠点があると、そればかりが目立ってしまう結果になってしまい、ひどい場合は水石ではなくなってしまいます。それに対して、普通の水石ならば、いくつかは見所や石の芸がありますので、多少欠点はあっても、他の良い所で、それをカバーする事ができるのですが、単純形のものほど、欠点をカバーするほどの良い所がありませんので、欠点をカバーする事ができきれませんので、水石として飾る事ができなくなるのです。この感覚は、細幹で、時代感があり・最低限の枝で構成されている文人木と同じ感じでしょうか。余分な枝1本ついているだけで、文人木になれない木もありますので、同じ様な感じでしょうかね。ただ、盆栽の場合は、手を入れて文人にする事ができますが、水石の場合、手を入れる事ができないのが、水石と文人盆栽の違いというところでしょうか





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