例年より遅い桜が4月になって、少しずつつ咲き始めてきて、寒い日があったりしますが、身近に春を感じる季節になってきました。今回の飾りについても、春の訪れを身近に感じさせるような飾りにしようと意識し、飾ってみました。この石を選んだ理由は、ズバリ『残雪』です。春とはいえ、まだまだ山には残雪が沢山残っていますので、『春の息吹+残雪』で、早春の景色を現そうというイメージです
そのため、今回の主役は、富士川産の山型石を使ってみました。この石は山頂部に少し石灰分を噛んでいて、残雪らしい感じをうけるので、ちょうど良い感じかなと思いこの石を据えてみました
水盤はいろいろ悩みましたが、最終的には青磁の水盤を使う事にしました。時期的にはちょっと早めかなという感じもするのですが、まあ4月ですから青磁でも大丈夫でしょう。それを平卓に据えてみました
取り合わせた軸は、桜花にツバメの図です。山梨では、桜の花が咲く頃になると、ツバメが渡来してきますので、時期的にもちょうど使い頃という感じなので、今回はこの軸を合わせ、2点飾りとして、早春の山里の景色を創出してみました
実際のところは、絵を詳細に見てもここに描かれている花が、普通の桜なのか、山桜なのかはっきりしないのですが、このような場合は、桜と見ても山桜と見てもかまわないことになっていますので、今回は普通の桜と見て、使っています。もちろん、山桜と見立てて使う事も出来ますが、その場合は、使用時期を1ヶ月ほど遅らせる事になります、
今回の飾りのポイントは、しいて言うと、石の選定についてでしょうか。早春のこの時期によく飾られる石は、やはり残雪が時期的に良く似合います。残雪というのは、沢筋に見られるのが一般的ですが、この石のように山頂部の窪んだ部分(沢筋)に残雪があるのも、ちょっと変った感じで面白いものです
あとは、石色でしょうか。春になり、山も少しずつ新緑に覆われてきますので、新緑を想像させるような緑色系統の石を飾るのも、春らしくてなかなか良いものです。真黒石が良いからといって一年中真黒石ばかり飾っていては、あまりに芸が無さ過ぎますし、ただの「石の展示」で終わってしまう場合もあります。やはり、季節による石色の使い分けなどを楽しむ事も、繊細な趣を持つ水石飾りの楽しみの一つでもありますので、時には石色にこだわって水石を楽しむのも良いかと思います |