12月下期の部

床の間飾り

主石は富士川溜まり石
幅27×奥15×高4.5

水盤は陶翠黄瀬戸釉楕円水盤
幅50×奥36
欅玉杢平卓
軸は葦雁の図


2点飾り


 早いもので今年もあと半月ほどで終わろうとしています。すでに師走も半ばを過ぎているのに、暖冬の影響なのか、日中などはかなり暖かく、気候的には年末という感じではありませんが、確実に冬の足音は近づいてきているようです
 さて、12月も半ばになると、そろそろ正月飾りの時期になってしまうのですが、ここでは、あくまでも12月終盤ということでの飾りにしたいと考えています。とは申しましても、年末の風物詩であるところの大掃除やら餅つきなどを現わすことはできませんので、初冬の飾りになってしまいます

 今回の飾りも、初冬をイメージしながらの水石飾りです。そのために用意した軸は、葦に雁の軸で、この画題は晩秋から冬の画題ですので、ちょうど良い季節かなと思いこの軸を使用することと決め、それから主役の石を選定することにしました
 今回の飾りも、軸に合わせて主役の石を選んだわけですが、画題から考えると平溜まりしか選定の余地はなく、いとも簡単に石の選択にいたりました。今回の石は、写真のとおり富士川の平溜まり石なのですが、質的にはあまり良くなく展示会などへ出品はできそうもない石なのですが、家で個人的に楽しむ分には、まあ大丈夫だろうということで、この石を飾ることにしました
 薄い石なので、できるだけスッキリとした水盤に飾りたかったのですが、特に似合う水盤の持ち合わせもなかったことから、ちょっと縁が厚めなのですが、色目もちょっと暖かみがあって良いかなということもあり、この黄瀬戸の水盤を使うことにしました。卓については、平溜まりですので平卓か地板のどちらかを使うのですが、今回は欅の平卓を使ってみました
 平溜まり石(池沼)・葦・雁と、今回はかなり近景を意識した飾りになっていて、雄大な景色感を持つ飾りではなく、かなり狭小な景色を現わした飾りとなっています


 主役の石については、本来なら、もう少し勝手側の右を浮かせ、裾側の左を沈めたいところなのですが、底の状態もあり、この角度での据え込みになっていて、右からの押しがちょっとだけ弱めの状態になっています

 添えについては、冬場ということや画題からするとほとんどの草物は使えませんので、使うとすると『捨て小舟』とか『苫船』くらいになるのですが、冬場に船の添えはちょっと寒々しい感じもする(とは言っても使っていけないわけではありません)ことから、今回は主役と添えの2点飾りとなりました

 今回の飾りのポイントは、これといって特にないので、雁について書いてみます。雁をはじめ鴨などの水鳥は好んで描かれた画題で、使う機会も多い軸だと思いますが、使い方を知らない方がほとんどですので、使う時の注意点を少しだけ・・・・・
 雁というのは、実際の和名をマガンと言います。時にはヒシクイという鳥が描かれているものもありますが、基本的な生態は両者とも同じです。秋になると平地の池沼に渡ってきて、昼間は池沼で休んでいて、夜になると移動して水草や田んぼのこぼれ稲を拾って食べています。この軸のような『葦に雁』という画題は、昼間池沼で休息している姿であり、今回の軸も雁が休んでいる姿が描かれています。ですから、このような軸を使う場合は、平地の池沼に関係するものと取り合わせることになり、水石であれば平溜まりか茅舎、盆栽であれば柳・榎・胡桃などの水辺のものと取り合わせることになります。榎などは寒樹の姿でも鑑賞できそうなので、このような取り合わせも面白いかもしれません
 有名な『月に雁』のように雁が飛翔している姿については、夕方餌場(水田等)に向かう姿が描かれたものです。この場合は、飛翔している姿ですので、特に水辺にこだわることもなく、山型・土破型などの石と取り合わせても、景色的な違和感はなく使える物となりますので、使い方には十分留意してください



玄関飾り

主石は八海山島型石
幅13×奥6×高4
水盤は雷紋地紋銅盤
短冊は船の図


2点飾り


 玄関飾りについては、島型石に船の短冊を取り合わせた飾りをしてみました

 島型に船の取り合わせという、ありきたりの取り合わせなのですが、私の意図したところは、この船を入り船と見立てて、正月を控えた年末に、出漁していた船が港に戻ってくる、あるいは、物資を運んでいた船が正月用品を載せて港に帰ってくる、そんなイメージで、年末のこの時期に、この取り合わせをしてみました
 水盤は雷紋地紋の銅盤を使い、卓は真塗りの平卓です。塗りの卓と竹の短冊掛けに違和感を感じないこともないのですが、他の短冊掛けをまだ入手していないので、このあたりはご容赦ください

 肝心の季節感についてですが、「この船を入り船と見立てて、正月を控えた年末に・・・」というのは、あくまでも私のイメージだけであり、これだけで季節感を現わせているとは思えません。かといって添え物で季節感を表すことも、今回のような冬飾りでは難しく、このような場合は、水盤の色で季節感を表すことになり、暖色系統の蕎麦釉・鉄砂釉・辰砂釉・珊瑚釉・黄瀬戸釉等を使えば良いのですが、そうそうちょうど良いサイズのものを持ち合わせているはずもなく、今回の飾りとなりました
 結局、今回の飾りでは季節感を表すことができないまま、今回の飾りに到ってしまったのですが、あまりに狭いスペースの為、季節感のある掛け軸がまったく使えず、季節感のあるような主役や添え物も適当な大きさのものの手持ちが無く、このような飾りになってしまいましたが、しばらくの間、このような状態が続きそうですが、ご容赦くださいませ
 夏ならば、 このように 水盤を青磁に変えるだけで清涼感を現わすことができ、この2点飾りで十分なのですが、軸を使えない狭いスペースですので、冬場はちょっとつらいものがあります

 今回の飾りにおいては、真ん中に落款が押してある短冊を使ってみました。掛け軸でもこのように真ん中に落款の押してあるものがあり、このような物は左右どちらの勝手にでも使い分けることができます。もちろん、この絵も多少の勝手はあるものの、左右どちらから見ても良いように描いてあるからです。この短冊の場合本来は右勝手の絵ですが、左に流れる力がそれほど強いわけではなく、絵を左勝手に見ても、さほど違和感を感じることはありません。そのため、右側に島型石を配置して、今回見立てた『入り船』ではなく、『出船』と見立てて使うこともできる重宝な絵柄です。このような掛け軸を数本持っていると、かなり使い勝手が良く便利ですので、見かけたら入手しておいても損はないと思います





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