5月になりますと、暑くもなく寒くもなく、過ごすのには一番良い季節ですし、風薫る・・・という感じで、野山に出ますと、さわやかな風が木や草の新芽や花の薫りが心地良くさせてくれますし、陽も長くなって外出するのにも最高の季節となりました
今月は、写真のような水無川産の茅舎石を飾ってみました。軸は麦の図を添え2点飾りです。主石の茅舎石は、けっこう大型の茅舎石で、この石を紫檀の地板と合わせてあります
この石は、間口(幅)が cmもありますので、茅舎石としてはかなり大型の部類にはいると思います。昔から『茅舎三寸』と言われていて、間口が10cm前後くらいの茅舎石が喜ばれていました。これは、それくらいの大きさであれば、盆栽の添えとして使う事ができますし、常に手元で愛玩することができる大きさであることから、このような言葉が生まれたのではないかと想像しています
昔は、茅舎は盆栽の添えとしての利用が大半でしたが、現代の水石では、茅舎を添えではなく積極的に主役として使うようになってきましたので、三寸くらいの茅舎では、間口が最高でも三尺くらいの場所でしか使う事ができず、一席が五〜六尺くらいある展示会や床の間での展示(飾り)では、主役として使う事ができません。
そのようなこともあり、私が常に探し求めているのは、五〜六尺くらいの場所に飾る事ができる20〜30cmくらいの茅舎なのです。恐らく、大部分の人は、茅舎というと10cm前後の小型のものを探していると思うのですが、私は、河原でも常に大きな茅舎ばかり探していまして、このあたりは、普通の人と探し方が違うような感じがしています
ちょっと話が逸れてしまいましたが、この石は、岩型としても飾れる石ですが、大きさが手頃なので台座をつけて茅舎としています。屋根も軒の出もまあまあで、右側の軒がちょっと乱れているのと、少し右が重くなっていますが、全体としては石に流れもあり、まあまあという感じではないでしょうか
この石は、整形の茅舎ではなく右の軒が少し崩れていますが、これはこれで、朽ちかけていく茅舎とう感じの風情が感じられ、形状としては乱れていますが、風情は出ているように思っています。地板については、この石に単純に合わせられる地板は他にもあるのですが、あえて少し横長めの地板を合わせていますが、これは、石がかなりのボリュームがあるからです
石にボリュームがありますので、大きさだけで地板を合わせてしまいますと、ちょっと重くなってしまう嫌いがあり、このような石には、なるべく横長の地板を合わせて、少しでも重さを感じさせないようにしています。今回使っている地板は、少し大きめではありますが、石の左右に広がりがある事で、石の重さをややカバーできていると思っています
軸は『麦』を合わせてあります。今月の下旬くらいから6月にかけてが麦の刈り取りシーズンになり、いわゆる「麦秋」を迎える事になります。麦秋とは、ご承知のとおり、麦が黄金色に実った様を現しているのですが、この軸はまだ緑が残っていて黄金色になる一歩手前の感じですので、今の時期にはちょうど良い季節感となっています
朽ちかけている茅舎と色づき始めた麦畑で、郷愁を誘う田舎の風景を連想できるように、今回は取り合わせてみました。軸自体は、絵も少し大きめな横物で表装も良くなく、スッキリとした飾りにはなっていませんが、なんとなく雰囲気だけは出ているのかなというくらいですね |