3月になりますと、寒さもだいぶ緩んできて、春の到来を実感する事ができます。我が家でも甲州野梅が咲き始めて、馥郁とした香りが春の訪れを告げ始めてきて、気持ちも明るくなってきます。そろそろ河原歩きも出来るようにな陽気になってきましたので、探石を楽しみにしているのですが、なかなかまとまった時間が取れないのが大きな悩み(ストレス)になってはいますが、近くの河原にでも出かけて楽しみたいと思っています
今月は、写真のような笛吹川産の山型石を飾ってみました。軸はジョウビタキの図、添えには六角堂を添えた3点飾りです。主石は、柿泥の水盤に据え、平卓と取り合わせています
この石は、笛吹川産の梨地真黒石で、10年程前に拾った石です。笛吹川産の梨地真黒については、産出量も少なく良形も少ないため全国的にはそれほど有名ではなく、形のある物はほとんど拾えませんので、地元の人でもあまり探石をしていません
本来ならば、地元の人が拾って世に出さなければならないとは思っていても、数は少なく形のある物がほとんど見つかりませんので、世に出すどころか探石意欲すら湧かないような石種です(笑)。笛吹川梨地真黒の特徴は、質は硬質で良いのですが、茶色の線が入るのが特徴です。もちろん、茶色の線が入っていない物もあり、今回飾った石は、茶色の線が入っていないもので、他の河川(瀬田川・奈良井川等)と言っても誰もわからないのではないかと思います
この石は、笛吹川の梨地真黒としては、手持ちの中では一番マシな石で、右に主峰を持っている左流れの石で、裾がやや広がっている遠山形です。左の稜線がややボテッとしているのが残念なのですが、これくらいならまあまあと言ったところでしょう。この石を無施釉の焼き締め水盤に据えてみました。少し前に、無施釉の焼き締め水盤は使う事ができるのか?・・・という質問がありましたので、今回はこの水盤を使ってみました
卓は紫檀のシンプルな平卓です。短冊気味の卓ですので、奥行きがやや狭く感じてしまうかもしれませんが、まあ許容範囲内といったところでしょうか。シンプルな卓ですので、薄い外縁の水盤ともなかなか似合っていると思います
軸はジョウビタキの図です。膨らんだ猫柳の枝にジョウビタキが留まっている図で、ほんの少し遅めなのかもしれませんが、まあこれくらいでも充分でしょう
添えは六角堂(御堂)です。この時期使える草物はほとんどありませんので、最初は2点飾りでいこうかなと考えたのですが、石と軸の両方が右勝手になってしまっているため、どうしても止めの添えが必要になり、この添配を置く事にしました。軸の画題に猫柳がありますので、添えには、平地の水辺風景に合いそうな水車小屋・御堂・捨て小舟などが良さそうに思ったのですが、今回は御堂(六角堂)を使ってみましたが、水盤の色とややダブり気味ではありますが、まあ良いでしょう
今月の飾りは、焼き締め水盤を使っているのがポイントです。焼き締めの水盤自体数は少なく釉薬が掛かっていない分格下の水盤に見られ(実際にそうなのですが)ているため、あまりお目にかかることはできません。それでも、決して使えないということではなく、味が良くて落ち着いたものならば普通に使い事はできるのですが、水盤自体の色彩が地味目のものが多いため、青・赤・黄・緑系の石はあまり似合わず、黒系統の落ち着いた石が似合う水盤です。また、石の形状についても、激しくジャクレているような変化の多い石はあまり似合わず、大人しめの石が似合います
ちなみに、焼き締め水盤については、国産では萬留平や山秋が良く知られていて、その基本は中国の写しにあります。本場中国では、純粋な焼き締め水盤というのは意外と少なく、紫泥や荒紫泥で作られている事が多く、水盤の内側に海鼠釉や均釉などが掛けられている物を多く見かける事ができます。古い日本の鉢作家さんは、これらを真似て作る事が多かったため、東福寺や香山などには、内面だけに均釉が施された水盤が結構残っています。内面に釉薬が施された物であっても、その使い方は、焼き締め水盤と同じで、黒系統の石が一番似合います |